ラッキーライフ

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)

投稿日 : 2010/08/01 00:57 投稿者 : ぷに丸

あの世の福引きで新しい人生を手に入れた俺。
てっきり男の人生が待ち受けていると思っていた俺は
産まれた瞬間に、とんでもないことが分かった。
俺に用意されていた体は女のもの。女の人生が賞品だったのだ。
絶望に暮れる俺に冷たい小鬼。
俺はいったいどうすればいいのか…

<女の子として成長してゆく様子も書きながらリレーしていきたいと思います。>

産まれてからしばらく経った。
双子ということでしばらくは新生児室に入らなければならなかった。
だんだんと目がよく見えるようになってくる。
隣には俺の妹がすやすやと眠っている。
寝顔はとってもかわいい。もちろん赤ちゃんとしてだが。

今日は俺の母が部屋にやってきた。
出産後でゆったりとした服を着ている。
お腹はまだまだしぼんでいない
「ママですよ~」
優しい声で俺ら2人に呼び掛ける。
反射的に俺は手をばたつかせ、声の主のほうを見る。
綺麗なお母さんだ。
しばらく俺らをあやした後、再び病室へと戻っていった。

俺ら2人が一般病室の母の横に移るのにそう長くはかからなかった。
お腹の中で大きく成長したおかげだろう。
俺の体はどんどんいろんなところが動くようになってきた。
そう言えば、しばらく妹と話していない。
話してみるか。
俺は、意識を集中し、妹に話しかけた。
「おーい。げんきかぁ?」
「な~に?おにいちゃん。元気だよ。」
「おお。よかったよかった。」
「おにいちゃん。女の子の体になっちゃったの?」
「う…うん。そうなんだよ…」
「そっかぁ…わからないことあったらいろいろ教えてあげるね。お兄ちゃん。」
「なんでだよー。俺が年上じゃないか」
「えー?女としては私が先輩じゃない。」
「う~ん。確かにそうだけど…。まあ、そのときはよろしく…」
「は~い。」
妹が元気そうでよかったよかった。
「あらあら、顔を見合わせて仲良しね。」
母が俺らを見てつぶやいた。

ヴェ~ンヴェ~ン!
俺は意識とは無関係に泣き始めた。
「う~ん。おっっぱいかなぁ?」
そう言うと母は寝ていた俺を抱き上げ、
ベッドの上で胡坐をかいていた足の上に俺を乗っけた
「おっぱいですよ~」
前の開く授乳用マタニティとブラジャーを着ていた母は
マタニティとブラジャーの前のボタンをはずし、乳房をあらわにさせた。
大きく膨らんだ乳房と黒ずんだ大きな乳輪、その先にはピンと立った乳首がある

俺を持つ手を少しずつ上にあげ、母は俺の顔をおっぱいに近づける。
生きているときはこんなおっぱいなど見たこともなかった。
いや、あったのかな?
俺は反射的に乳首にかぶりついた。
母乳をため込んだその乳房はパンパンに張っていた。
母のことなどお構いなしにチュウチュウと強い力で吸う。
喉を通り、腹に母乳が溜まってゆく。
とにかく、必死に吸い続ける。
「べびちゃんそんなに強く吸っちゃ、ママ痛いですよ~」
母は痛そうに俺に訴えた。
しかし、それも母は喜んでいるようだった。
自分の子が健康で成長するのはうれしいことである。



投稿日 : 2010 08/01 01:04 投稿者 : ゆうり

一週間してやっと退院みたいで、俺をお母さんが妹をお父さんが抱いて医者や看護しに挨拶をして家へ向かった。

「ここが新しいおうちですよ~。」

お母さんとお父さんはゆっくり俺たちをそれぞれのベビーベットに寝かせてくれた。

ベビーベットの上の壁に名前が書いてある紙が張ってあった。



投稿日 : 2010 08/01 01:14 投稿者 : ぷに丸

必死で顔を傾け、壁を見る。
俺の方には「ゆき」
妹の方には「あき」
と貼ってあった。

やっぱり、女の名前なのか…



投稿日 : 2010 08/01 01:30 投稿者 : ゆうり

「ゆきちゃん、お名前気に入りましたかぁ?」
デレデレのお父さん。
男親は娘に弱いって言うけどほんとだったんだな。

「ふふっ。ほんとは私は一人は男の子だと思ってたのに。」
お母さんは苦笑いをしながら言った。



投稿日 : 2010 08/02 00:25 投稿者 : ぷに丸

「どっちだってかわいいだろ~」
父親はデレデレしながら母に言う
「うん!どっちもかわいい!」
ほんとに2人とも幸せそうだ。

しばらくの間はまともに眠れやしなかった。
眠れないたびに無意識に泣き声をあげ、母親を呼ぶ。
本当に申し訳ない気持ちになりながらも、母があやしてくれることは、
とっても心地がよかった。
母乳もぐいぐいと乳首を吸いこみながらのみ、これまた母に迷惑をかけていた。
そんなでも、母はむしろ喜ぶかのように俺たちに優しくおっぱいを飲ませた。
妹、あきの方は、少しばかり優しく吸っているようだが…

そんなこんなで俺たちが体を手に入れて半年、2人の首もだんだんと座り始めていた。
ずいぶんといろんな方向をれるようになり、俺の目にもいろんな情報が入りこんでくる



投稿日 : 2010 08/02 00:44 投稿者 : にゃーコ

この家には大きい犬と猫がいるみたいだ。
よく大きい犬は俺たちのベビーベットに足をかけて俺たちをみてくる。
そしてここは二階で一番日当たりがいい部屋みたいだ。
最近は犬の散歩がてらベビーカーで散歩もするようになった。



投稿日 : 2010 08/02 18:50 投稿者 : 無明

(しかし……まだ意思疎通が出来ないというのも正直もどかしいな……)
早く親と意思疎通ができるぐらいにはなりたい。
何かを言おうとしても、口から出るのは言葉にならない声。
だが、こんな生活も悪くないものだ。
妹はすっかり寝付いている。
私も寝るとするかな?



投稿日 : 2010 08/02 23:22 投稿者 : ぷに丸

自分の時間を多く過ごすせいで最近はずいぶんと哲学的なことを考えるようになった。
もちろん魂の中でだが。第一、哲学的な赤ん坊などいたら怖くてしょうがない。
そんなことを考えながら俺は眠りについた…


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「もう…ちょっと!ほら!!頑張れ!」
「頑張れ!ゆき~!あき~!」
ベビーベッドにカメラを向け応援するのは俺らの両親だ。
だんだんと体に筋肉がついてきた俺たち。
昨日の晩、俺とあきは意識のなかで話し合って、今日、寝返りをうつことにしたのだ。
親というのはこの成長はなんでもうれしいもの。
俺たちに体をくれた2人に少しでも何かしようと喜ばせるようにしている。

「「ぉっ…おっ…おおおおおおお!!!!やったぁ!!」」
応援は歓喜の声に変わる。
俺たち2人はついに寝返りに成功したのだ。
「「だっ!だぁ!」」
声にならない声で何かを伝える。
それも、両親たちは大喜びだった。



投稿日 : 2010 08/02 23:30 投稿者 : 無明

(ここまで書いててなんですけど、ラッキーチャンスの時の主人公って、『私』でしたよね?あと急に進めてすいません)


一夜一夜に人見頃、とはよく言ったもので、数カ月と立たないうちに色々なことができるようになっていった。
這う、つかまり立ち、自立、歩く。
幼稚園ではぼーっとしてることの多い姉妹として過ごし(実際は二人で会議していた)、
友達もそれなりにつくって小学校へ上がろうという時だった。

母が、また妊娠した。
今度は三つ子らしく、当初は中絶を考えたものの運良く父が大出世し、問題はなくなったらしい。
「あなた達もお姉ちゃんだから、しっかりしなさいね?」



投稿日 : 2010 08/02 23:47 投稿者 : ぷに丸

< 男らしさが出たほうがよいかと思いまして、ラッキーチャンスのとき
使われていた人称を使わせていただきました。ボクっこ属性がちょこっと入れてみようかとおもっっていましたので…
滑らかに変更していきたいと思います。
成長に関しては"月経"描写を入れたいと考えていますので
そのあたりがあれば大丈夫かと… >


4か月となった母はやや小太り?といったお腹に成長していた。
幼稚園で俺を連発していたが、幼稚園の先生に再三指摘された揚句、母と父からも
注意されることになった。
俺も頭はちゃんと働くので、無意識にはボクが使えるまでになり、
先生の前や両親の前では私や"ゆき"といえるように訓練した。

まだまだ体型の崩れというものが全くない母は、本当に妊娠したのか疑うほどだった。
しかし、多くはワンピースやチュニックであり、TシャツにGパンの時は、
明らかに妊婦の体型であった。



投稿日 : 2010 08/02 23:59 投稿者 : にゃーコ

「ママ、ゆき、マキの散歩にいってくる~。」
ちなみにママ、パパと呼ばされている。
俺は母の代わりに姉妹のように育った大型犬のマキの散歩にいくことにした。
「ママ、あきもいってくる~。」



投稿日 : 2010 08/03 00:25 投稿者 : 無明

(対応ありがとうございます。TS一人称は難しい……)

妹も付いてきて、いつの間にか母まで付いてきた。
あいかわらずアクティブな人だ。
5ヶ月になったとたん、三つ子は急成長した。
母はもう、どこからどう見ても妊婦である。
「ほら、ここに赤ちゃんがいるのよ。触ってあげて。お姉ちゃんだよ、って。」
触ってみると、たしかに蠢きを感じる。
弟や妹がここにいるのだと思うと、感慨深かった。



投稿日 : 2010 08/03 00:38 投稿者 : ぷに丸

<とりあえずカオス化は防ぎたいと思います…自分でも…>


「うっうう…」
苦しむような声が聞こえてくる。
「おかあさん?どうかしたの?」
「ん?どうもしてないわよ。どうして?」
「なんだか、苦しそうな声がしてね…」
「気のせいよ。疲れてるのよ。」
ボクは気のせいかとおもったが、確かに聞き取れた。
はっきりと。
「なにか聞こえなかった?」
「聞こえた…」
あきにもその声は聞こえたらしい。
「でも、なんだか…耳から聞こえた感じじゃなかったよ…」
「う~ん…そうだね…もしかして…」
私たちは意識を体から飛ばし、お母さんのお腹にむかって呼びかけてみた。
「お~い!げんきかぁ~?」
「大丈夫~」

「う…うう…」
それはすすり泣く声だった。
「どうしたの?」
意識で話す。それはお母さんのお腹の中の子に宿る女の子の魂だった。
「あのね…あたし…しんじゃったの…」
「えっ?」



投稿日 : 2010 08/03 00:44 投稿者 : ぷに丸

「いったい何があったの?」
あきが聞く。
「それは今は言えない…言う元気がないの…でもね…ひどいことされた…」
俺たちはその言葉から悟った。
「つらかったね…でも新しい体を手に入れられたじゃないか」
「う…うん…でも…まだ本当に体が手に入れられるかわからない…わたし…こわい」
「大丈夫だよ!…ボクも一度はあの世へ行ったんだ。でもね、こうして新しい体を
手に入れることができた。ボクらのお母さんはきっと君を元気に産んでくれるさ!」
「そうよ!元気出して!」
「あなたたちも…このお母さんから体を?…」
「そうだよ」
「ありがとう!なんだか…元気がでてきた…お姉ちゃん!ありがとう!」
「うん!」
ボクはなんだか、お姉ちゃんと呼ばれることに違和感を覚えたが、一人を勇気づける
ことができたことは自分にとってもうれしいことだった



投稿日 : 2010 08/04 00:59 投稿者 : 無明

そして小学校に入り、二度目の人生初の「夏休み」を迎える頃になり、旅行へ行くことになった。
割と近いけど、父の実家のある辺りらしい。
海も近く、妹もボクもはしゃいでいた。
母はなんと、身重の体でありながらビキニを着て、惜しげもなく太陽にその身体を晒していた。



投稿日 : 2010 08/04 01:51 投稿者 : ぷに丸

「お母さん!すごくきれいだよ!!」
「きれいだよ!!」
ボクも妹も思わず言ってしまう。
それくらい母はきれいだった。
「ありがとう。ゆき。あき。あなたたちも"かわいい"わよ。」
「「うん!!」」
とは言ったもののなんだか"かわいい"には慣れそうもなかった。

身重の母はその大きなお腹からいろんな人に声を掛けられていた。
その多くが母のお腹を撫でていく。
意識の中でお腹の妹弟たちと会話すれば、どうやら、うれしいらしい。
お母さんから幸せを感じるホルモンでもでてるのかな?

浜辺には結構な数の妊婦さんがいるようだ。
そのほとんどは母のお腹を触りに来ていたが、やはり、母のお腹が一番おおきかった。
そして、母も妊婦さんのお腹を撫でる。
そんなお母さんはとっても楽しそうだった



投稿日 : 2010 08/04 02:06 投稿者 : 無明

「お母さんも泳いじゃおうかな~、なんて。」
ボクたちを見張る、というのを名目に、お母さんは海に入った。
お母さんは嘗て水泳で全国を目指していたらしく、
ゆっくりながらそれはもう見事なフォームで泳いでいた。
ボクは平泳ぎはなんとかできるが、妹は浮き輪がないと泳げない。
だからなのか、ちょっと不満そうだった。



投稿日 : 2010 08/06 00:26 投稿者 : 無明

やがて日も暮れ、帰路に着く。
「お母さん、楽しかったね!」
「ええ。泳いだのは結構久しぶりだけど、やっぱり地区大会3位は伊達じゃなかったわ。」
父も結構あちこちと泳ぎ回り、蟹なんかを捕まえていた。
ちょっと尊敬してしまう。
「海中出産か………そう言うのもいいわね……」
母はまた、病院に頼りたくないらしい。
さすがに三つ子では無理だと思うんだけどな……



投稿日 : 2010 08/06 00:51 投稿者 : ぷに丸

「いいんじゃないかな?でも海水って赤ちゃんにいいのか?」
なんだか父も乗り気になっている

とにかく今日は童心に帰って目いっぱい遊べたのでよかった。
大人になったら味わえない鮮やかな思い出をいくつもつくれたんだ
まあ…2度目なんだけど…

それにあんなにきれいな母の妊婦ビキニ姿を見れたっていうのは
もっといい思い出だった
男の時のようなエロさはまだまだ根強く残ってはいたが、
なんだかうらやましいという気持ちが芽生えていたのも事実だった

ボクもあんなに大きなおっぱいになるのかなぁ…
二次性徴が始まるのはまだまだ先だろう。
しかし、ボクは女の子の悩みというものの第一歩を踏み出した

しかし、そんな気持ちも乗り物の振動で揺れる母の大きなお腹を見ると忘れてしまうのだった



投稿日 : 2010 08/06 01:01 投稿者 : 無明

そして夏と言えばイベントはまだまだある。
花火大会だって、そのひとつだ。
着物好きの祖父母がわざわざ私たちのために、対になる模様の浴衣を買ってきてくれた。
父は自前の甚平姿。
そして母はというと、白地に赤い花が咲き、青で水面を表した綺麗な模様の浴衣。
だけども、明らかにお腹が収まりきらない。
「ん、どうしたものかしらね……お義父さん?」
「言うてもなぁ……帯の長さは足りんけどはだけるようなこともないし、そのまま行きゃあええだろ。」
やっぱり、ここまで大きいお腹は見たことがないらしい。
時間がなくなったので、結局そのまま会場に行くことになった。
前世の記憶でかすかに残る、きらびやかな露店。
やっぱり楽しみだ。
妹に至ってはスキップしている。



投稿日 : 2010 08/06 01:16 投稿者 : ぷに丸

「あき…本当に子供に戻っちゃった…?」
「そんなことないでしょっ。私、こういうの大好きなの!」
意識の中でこっそりと話す。

「私も…大好き…うれしい…」
微かに聞こえる声…それは、お腹の中の妹のものだった
「私の一番の思い出…すっごく楽しかった…」
いつもよりは楽しそうな声かもしれない。

今日はさらにもう一人の声が聞こえた。
「ヤッばぁ~い!早く体ほしぃ~!!たのしそぉ~!!」
すごく元気な声だ。ボクも意識を飛ばし、その子の意識に会ってみよう。
「ああっ!もしかして…おにいちゃん!?」
「ああ…うん…君はボクの妹?」
「そうだよ!!お兄ちゃん!!」
意識の姿はギャルっぽかった。前世はギャルなんだろう。
いったいどうやってあの世へ行ったのか…?
まあ、気にしてもしょうがない。
ボクはさらに会話を続けた。
「体って本当に手に入れられるのかなぁ…。ちょっと不安…かも」
「大丈夫だよ。ボクだって体を手に入れられたんだ。母さんは健康だしね。」
「そっかぁ!ありがとう!」
ギャル妹は再び胎児の中へ帰って行った。
ボクも早く帰らないと…ぼーっと突っ立ったままでいる。

「きゃぁっ!ったぁ…」
母が突然痛そうな声を出した。
見ればお腹がポコポコ動いている
「本当に元気な子たちね…お母さんのことをもうちょっと考えてくれないかしら。」
そう言いながらも母の顔はすごくうれしそうだ。
きっとお腹の中ではさっきのギャル妹がはしゃいでいるに違いない。
さぞ、おかあさんも辛いだろうと思った。



投稿日 : 2010 08/06 01:28 投稿者 : 無明

「お母さん、辛くない?」
思い切って聞いてみた。
「ふふ、変わったこと聞くのね……ゆき。
たしかに、動きづらいしいろんなことに気をつけなきゃいけないしできないことは多いし、疲れるししんどいわ。
でも、でもね。あなた達が産まれた時もそうなんだけど、可愛くてたまらないの。
だから、可愛い子供たちのことを思えば、この程度なんともないのよ。」
お母さんはやっぱり強い人だ。
出産の時の苦しみを知っていたら、とてもそうは思えない。
妹たちも、元気に生まれてくるといいな……
ボクは綿菓子、あきはリンゴ飴を片手に家族皆でベンチに座る。
花火の光が、パ、パッと照らしてくれていた。



投稿日 : 2010 08/10 00:44 投稿者 : 無明

そして夏休みの思い出をしっかりと作り、2学期を迎え友達も増やし、ぼくらが小学生の本分を満喫していた秋。
シルバーウィークに合わせて、母が沖縄旅行を手配した。
母はもう36週、臨月だ。
飛行機に乗ってる間に生まれやしないかとヒヤヒヤするが、母は笑って返した。
「人間って自然の一部でしょ?だから、自然の中で産んであげたいの。」
そういう母の表情は、聖母マリアのような慈愛に満ちていた。


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沖縄では伝統的な浜辺の民宿に泊まり、のどかな田舎暮らしを満喫する。
あきは海で泳げると聞いて完全に子供になっていた。
「あのさ。ボクたちの妹弟が生まれるんだよ?もうちょっとお姉さんらしくしなきゃ。」
「ゆき姉は冷めすぎだよ。せっかく沖縄に来たんだから遊ばなきゃ!!
それに、水着でそれいっても説得力ないよ?」
そういうとあきは僕の腕を引っ張って浜辺に連れていった。
母もあの時と同じ水着で浜辺に来ている。
ただひとつ違うのは、下着の股のあたりが外せるようになっていたこと。
浅瀬に座り込んでボクたちを見ている母が気になって、秋と一緒にそちらへむかった。



投稿日 : 2010 08/10 23:58 投稿者 : JBL

いやな予感がする。

なぜか胸がドキドキする。

青空がいつもより高く感じる。

母へ向かう二つの歩みは、やがて小走りに成りーー



投稿日 : 2010 08/11 00:07 投稿者 : 無明

「ゆき……お父さん呼んできて……産まれそう!」
母がそう呟いたのは、ボクが全力で母のもとにかけていったのと、ほぼ同時。
そしてボクは、出せる限りの大声を上げて、父を呼んだ。
流石にあきだって気づいたみたいで、父の手を引っ張って向かってくる。
ボクはそこに座り込んで、母を励ますことしか出来なかった。



投稿日 : 2010 08/16 22:47 投稿者 : ぷに丸

「(自分が産まれたときのことを…思い出そう…ダメだっ!)」
ボクは産まれたときのことを必死で思い出そうとした
でも、その記憶もとぎれとぎれで、胎児の目線でしか覚えていない。
母の身にそのときなにがおきていたのか…
そうだ、子宮がすごく震えていた…
でも、それが今なんの役に立つっていうんだ!?

「お母さん!!」
ボクはお母さんの手を握り締め、お母さんの顔を向いて励ました。
お母さんは苦しいだろうに、でも、ボクの方を見てニコっと笑った。
「お母さん、がんばるからね!…いたっ!…ゆき達の妹を元気に産むからね!」
お母さんの手がプルプル震えている…
痛いのか?怖いのか?
おそらく両方だろう。子を生む母の努力は計り知れない。
こんな大きなお腹で何カ月も過ごして、最後にはすごい痛みと戦う…
でも、そのおかげでボクは体を手に入れられたんだ!!
体…?から…そうだ!!意識を飛ばしてみよう!
お腹の中にいる妹たちと話して、少しでもお母さんを、そして妹たちを励まそう

ボクはお母さんの手を握り、意識を飛ばした



投稿日 : 2010 08/16 22:52 投稿者 : にゃーコ

「ねぇ、どうなってるのよ!」
ギャル風の妹は混乱しているみたいだ。
「大丈夫か?」
「あ、お兄ちゃん。どうなってるのよ!」



投稿日 : 2010 08/16 23:06 投稿者 : ぷに丸

「お父さん!こっちこっち!!」
泳場の端の浅瀬に座りこむ母のもとにお父さんがやっとたどり着いた
夏の日差しの中を全力で走ってきたためか、汗でびっしょりだった。
「お母さん!!大丈夫か!!」
「はい、あなた…っ!」
お母さんは微笑んだものの、お腹を押さえ再びその顔はゆがんだ。

「お母さん、赤ちゃんうむんだよね?」
何をいまさら…あきが聞く。
「そうよ…がんばるからね」
「がんばって…あき応援する!」
「ありがと…ったぁっ…」

浅瀬であろうと、砕けた波はボクらのもとへ、次々と打ち寄せてくる
幸い端のほうなので人が少ないのがよかった。
こんなお腹の大きな人が苦しそうにしていれば、周りはたちまち野次馬だらけ
母も精神的に苦しくなるにちがいない。

そんなことを考えている間も、父は一緒に持ってきていたセットの中から
聴診器を取り出し、母のお腹の中の赤ちゃんの様子を診ていた



投稿日 : 2010 08/16 23:43 投稿者 : 無明

「ん……よし、大丈夫だ。あとは自然に進むまで待つしかないかな?」
ボクらは父に頼まれて、母の背中をずっとさすっていた。
「ありがとうね……」
だんだんと、気づいたらしい人たちが集まってくる。
父はその人達に的確な指示をだして、遠ざけていた。



投稿日 : 2010 08/20 00:58 投稿者 : ぷに丸

母は苦しそうな顔をしながらも、時折、楽になったのか、笑顔をみせていた。
「いったいどんな子が生まれるのかしら…」
でも、そんなことを言う暇も、次第になくなってきていた。
だんだんと長くなる痛みの時間。ボクたちはただ、励ますことしかできなかった。
ママの来ているビキニはお腹をあらわにし、痛みのたびに固く張る様子をリアルにボクの目に
焼き付けていた。ママ…がんばれ…がんばれ…

あのとき、ボクとアキは体を手に入れることで頭がいっぱいだった。
でも、今は違う。ボクとアキ、そして父の前で痛みに耐える「母」の姿があった。
こんな、絶対的に良いとは言えない場所で、「お産」に挑む一人の女性の姿があった。
なにもできない自分、ただ過ぎるのを待つだけの時間はもどかしくてしょうがない存在だった。



投稿日 : 2010 08/23 19:51 投稿者 : JBL

その時だった。

「ふぐっ、ぐうぅ、うぐぅぐぐ!!!」
うなり声と共に、ドクンと何らかの塊の一部が母から吐き出された。
ぬぶぬぶしてて良く見分けることができないが、恐らく赤ちゃんだ。



投稿日 : 2010 08/23 22:41 投稿者 : 無明

頭、赤ちゃんの頭だ。
「ママ頑張って!赤ちゃん見えてきたよ!!」
母は無言でうなずき、また力を入れた。
一度ボクたちを産んでいるから慣れてるんだろう。
兄弟は、ゆっくりしっかり、この世への道を進んできている。
母はもう、脇目もふらずにいきんでいる。
そして、何度かのいきみのあと、最初の兄弟が産まれた。
女の子。
ギャルっぽいほうか、それとも泣いていたほうか。
ボクらにはわからないけれども、元気だった。
その小さな身体を優しく抱き上げて、母に手渡す。
浜の方から聞こえるサイレンの音。
誰かが気をきかせて救急車を呼んだみたい。



投稿日 : 2010 08/23 23:30 投稿者 : ぷに丸

母の顔は穏やかになった。
痛みを忘れ、産みの喜びを味わう時間。一人の子の母になった喜びをかみしめる時間だ。

ボクは意識を飛ばして、話してみようとする。
でも、産まれたときはぼんやりしててあんまり覚えていない。
産まれるのもものすごく体力を使うんだ。
今はやめておこう。

また大きな波がボクらの元に押し寄せてきたとき、
母は再びその大きなお腹を押さえ、顔を苦しそうにゆがめた。
「ぃいいたぁぃっ!…次の赤ちゃんが…出たがってるっ…」



投稿日 : 2010 08/27 10:20 投稿者 : JBL

「んっ、うぐんーー」
(もういや・・・だれか、たすけて・・・ここからだして!)
踏ん張る母の息みと共に、頭の中に声が流れて来た。
まだ母のお腹の中にいる、赤ちゃんの魂の声だ。
(いや、いや、いやいやいやいやーーーーーー)
「あっ、あああ、いたぁああああ!!!!」
「お母さん!?」
気が散っていたら、突然母がお腹を押さえて苦しみだした。
「蹴って…暴れてる…赤ちゃんが、ぁ、あああ!!」
よく見たら、母の膨らんでいるお腹のやや下の辺りに、
赤ちゃんの足形がハッキリと分かるほど、ボコボコと・・・
大分、パニックになっているみたいだ・・・無理もないか。
ボクだって、もう二度と通りたくないほど産道が辛かったんだ。

・・・とりあえず、放っておいたら出産がうまく進めないことが確実だ。
ボクは、危険を承知してもう一度意識を母の子宮の中に飛ばした。



投稿日 : 2010 09/15 23:30 投稿者 : ぷに丸

だが、すぐにそれがボクのなかでの妄想でしかないことに気付いた。

出産が始まったらもう胎児の中から意識が出ることはできない。
それほど、母も産まれる胎児も体力を使うのだ。

「…ゆき!!…ゆき!!」
妹の声だ。あきの声。
気が付けば、母の唸り声の横でボクは気絶し、横になっていた。
夏の暑さと母の苦しむ姿を見て、幼いボクの脳はパンクして気を失っていたのだ。

(お母さん、がんばってるのよ!!これだから男は…)
(関係ないだろう!)
お互いに目と目を合わせて妹と会話する。
(私たちに今できるのはお母さんを励ますことぐらいよ。)
(ボクたちには何にもできやしない…)
(励ますことも十分役に立つと思うわよ。さあ、お母さんの手を握って)
(うん。お腹や額の汗を拭わなきゃ)

「いったぁあああぃい!!!」
とうとう母の陣痛もピークに達してきたらしい。
お腹を押さえ、ボクやあきの手をより一層強くにぎった。



投稿日 : 2010 09/16 00:09 投稿者 : にゃーコ

「っ、ゆき・・・あき・・・!」

母は陣痛の合間に不安そうな俺たちに心配かけないようにいった。
「頑張って!」
「きっともうすぐだよ!」



投稿日 : 2010 10/14 18:42 投稿者 : 無明

次の赤ちゃんの頭が、ゆっくりと回転しながら出てこようとしている。
その様子を、ボクらはただ見ているだけなのだ。
もどかしいけど、自然の摂理には逆らえない。
今はただ、パパやあきと一緒に、ママを励ますだけ。
「ママ、頑張って、もうすぐ、もうすぐだから!!」



投稿日 : 2010 11/08 12:37 投稿者 : PARIS

いよいよ赤ちゃんが完全に出てきた。
しかし、その時だった。
俺は、いや、おそらく妹もそうだろう。
俺たちは、出てくる赤ちゃんに謎の違和感を感じた。
記憶が、フラッシュバックする...



投稿日 : 2010 11/11 22:25 投稿者 : 無明

(こわいよ……ここ、どこ?だれかいるの?)
声が聴こえる。
女の子の声だ。
(なにもわからない……こわいよ……)
ボクたちは、その声にゆっくりと語りかけた。
(心配ないよ………)



投稿日 : 2010 11/14 13:15 投稿者 : 致良

三つ子の中の最初の妹――恐らくギャル風の子が
図太いへその緒を引きずって海水の中に放り出された。
そして、さすがにボクとあきを産んだことがあって、
一人目と胎盤を共有する二人目の妹は広がれた産道を
スムーズににゅるにゅると通って、ポトリと生まれてきた。
二卵性のボクとあきと違って、一卵性の双子だ。

新生児の二人は、ボクと妹の名前にちなんで、
一人目「みき」二人目「さき」と名付けられた。
これでボクたちは晴れで、「冬秋夏春の四人姉妹」となった。

「あと一人だね、これで、最後・・・ん!」
最後の三人目は男の子であることは、検診のときで知っていた。
やっと男子だという事で、これにで出産から引退するつもりだ。
「ん、んんんーーーーーーーーーーーーー」
しばらく休み時間を挟んで、お母さんはまたいきみ始めた。
同じ子宮の中で別の胎盤を使う三人目も、降りてきたらしい。
ボクの末弟が一回のいきみで一気に肩まで出てきて、そして――

「「「「うまれた!」」」」
ボク、あき、お父さんとお母さんの四人が、同じ声を上げた。



『ラッキーライフ』 ~完~
『ラッキープレグ』へ 続く



前編:ラッキーチャンス            続編:ラッキープレグ

関連作品:ワケラレ(当作品の四姉妹が出ています)


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