ラッキーチャンス

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)

投稿日 : 2010/06/17 11:38 投稿者 : こ肉


―あの世―

「出た~! 一等賞、一等賞~~~~!!!」
あの世一丁目商店会のガラポン福引きを参加したら、
まさかの棚からボタモチの幸運に恵まれた。
「賞品は『新しい人生』で~す!はいはい、こちらへ~」
二匹の小鬼に連れられ、私は生者の世界へ帰って来た。

ココまでは良かった。ココまでは。本当にラッキーだと思った。

「こちらは副賞の『新しい肉体』で~す」
と、小鬼が流し台にへばりつく女子大生を指して言ってくれた。
水を出して嘔吐している、苦しんでいるように見える女だった。
「・・・・・・どういう意味だ?」
この人を乗っ取って代わって人生を過ごすのか?
と思った私に、まさかの答えが帰って来たのだ。
「最近妊娠を知った妊婦で~す。これから先災難続きの予定で~す」
「無事出産まで胎児を守りきったら、胎児の肉体を差し上げま~す」
当然、私の母親になる予定にこの女は生霊である私の姿が見えない。
この状態で守りきれと・・・?   

ラッキーチャンスからの、私の受難の日々が始まった。



投稿日 : 2010 06/17 23:53 投稿者 : 無明

「まずこの女性に出産を決意させること~!それじゃ!」
そういうと、小鬼は煙のように消えてしまった。
その一言で状況が理解できたが、どうしろと言うんだ。
まぁ、中絶されたら元も子もないので、呼びかけてみようか。



投稿日 : 2010 06/18 22:43 投稿者 : こ肉

まずは試しに、自分の口から声を出してみた。
「・・・・・・」
案の定、生身の人間は霊の話し声など聞けるわけ無い。

次に物音を立ててみた。いわばラップ現象ってやつだ。
「・・・!?」
怖がるだけで、それ以上の反応は期待できなかった。

一応、私は「未来の肉体」に何らかの影響を与えることが可能らしく、
強く念じれば動作リンクも可能みたいだ。まだ小さすぎて感じられないが、
これからは胎動を通じて私の「未来の母親」の行動を操ることに決めた。



投稿日 : 2010 06/20 16:45 投稿者 : こ肉

「あっ」
「どうしました? 手術の予約、入れておきます?」
「もう少し、考えさせて・・・」
中絶させないように、生む意識を強固させるように、
的確なタイミングで胎動を起こし、彼女の母性を激発する。


「どうしても逆らう気だな?」
「あたし、この子絶対産むから!」
「・・・分かった。では親子の縁を切るのだな」
かなりの精神力を要した作業だが、作戦は我ながら驚きの大成功だった。
そのせいで将来は大変になったけど、私の肉体が殺されるよりマシだ。

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「ひゃっ!?」
(ぱりーん)
「ちょっと、何やってんの! 皿の代金、給料から引いとくからな!」
「ご、ごめんなさい! 急に蹴ったから、ビックリしちゃって・・・」
最初は胎児が小さいがために、なかなか気付いてもらえないが、
安定期に入った今では、彼女を弄べるほどに感じられるようになった。


「楽しそうで何よりで~す」
「まぁな。で、また何の用があるのか?」
私の前にまた例の小鬼が現れる。これで何回目なのかもう忘れた。
事あるたびにアフターサービスとして来てくれるのはありがたいが。
「では、こほん。閻魔様のご勅命で~す」
と決まったセリフを言い、小鬼は巻物を紐解いて読み上げる。
その内容は――



投稿日 : 2010 06/20 20:54 投稿者 : 無明

「えと、あんまりやりすぎると戻ってきてもらうから、遊ばないように!
 あと、母体の精神安定にはこちらからも働きかけるのでよろしく。とのことです。そいじゃ!!」
やはり小鬼は煙のように消えてしまった。
それにしても、何とアバウトな巻物だ。気が抜ける。
だが、母をなにより落ち着かせてくれるのは大きい。
とりあえず母の姿を見守っていると、一人の男性が現れて指輪を差し出した。
会話の内容を聞くに、この男性が私の父親となるのだろう。
「ごめん、あの時は俺が悪かった……でも俺、やっぱりキミが好きなんだ!!結婚してくれ!!」」
おー、お若いなぁ。
母は無言のまま頷いた。
さらにおってみると、ごく一般的な中流階級と言わんばかりの住まいに、母の両親よりかかなり優しそうな祖父母。
普通の人、という感じだが、母子家庭の辛さは昨今すごいらしいので安心した。



投稿日 : 2010 06/26 23:37 投稿者 : とね

母は父の家に落ち着いてから2ヶ月ほどたち、優しい祖父母と父によくしてもらいすっかり家族の一員となっている。
未来の私の肉体も母胎で健やかにすくすくと成長して後は、月満ちるのを待つだけだったが…

「初めましてー」
「……はじめまして」
いつもならあの小鬼が来るはずだか、目の前にいるのは背中に純白の翼と頭上には光るわっかをつけており、思わず
「天使……?」
「正解ですー、じつは今日、閻魔様からのお達しで新しい魂を連れてきましたー」
目の前に差し出された鳥かごの中には2つの発光体が入っていたのだ。
「…どういうことだ」
「その理由はこれを読んでくださいー」
渡された巻物を開いて、読んだ。
読んだ瞬間、脱力しかけた。

『幸運青年へ

うまい具合に胎児を守っているようだね。
しかしこのまま行くと、あと数ヶ月後に無事出産されてしまう。
これでは、景品『新しい人生』の有り難味がなくなってしまう。
そこで、急きょ天国と話をつけ、転生したての魂2つをもらい、幸運青年の未来の母上に入れることにした。

ちなみに新しい魂と新しい肉体を奪おうとする悪霊もいるので気をつけてね(ハート)

                           閻魔大王より』



投稿日 : 2010 06/27 00:39 投稿者 : 無明

「 PS、この魂も上手いこと守りきったら弟か妹が増えるよ!」
やったねたえちゃん!
じゃない。
これ以上母に負担をかけさせてたまるか。
「もう決定事項なんで!それじゃ!!」
あ、天使が逃げやがった!!

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その後、何度か悪霊がやってきたが、実力行使ではなく話をつけて帰ってもらった。
ところがある日、私は大失態をやらかした。
それはまだ悪霊にもなっていない10代前半の少女の霊だった。
身の上話を聞くうちにすっかり感情移入してしまった私は、彼女に2つの魂のうち一つをあげてしまったのだ。
こうして母は双子を妊娠することになったわけで、その分負担も2倍というわけだ。
私も頑張らねばならない。



投稿日 : 2010 06/27 19:59 投稿者 : こ肉

6ヶ月検診で突然双子だったと知らされた時の母の表情は、実に見ものであった。
同じ霊体である例の少女霊に自分たちの肉体についての感想を聞いたが、
「あんたと兄妹になるのね」とわざとらしく可愛くかえしてくれた。
ああ、実に可愛い。肉体があれば今ここで押し倒そうとするぐらいだ。

決めた、このまま二人とも産まれて大人になったら、絶対襲ってやろう。
と、その前に、まずは母を無事産ませないとな。あと4ヶ月か、長いな。



投稿日 : 2010 07/02 23:22 投稿者 : こ肉

「ねえ、お兄ちゃん」
「はぁ!?」
8ヶ月に突入したある日、突然少女霊が私をお兄ちゃんと呼んだ。
もちろんビックリしたけど、これはこれでありかと思った。
「なに、可愛い妹よ?」
返しに私も、冗談半分で彼女を妹と呼んでいた。
すると、
「地獄へ、帰ってちょうだい」
悪霊であった少女霊は突然本性を表し、
自分の肉体を操り、私の肉体のへその緒を、
血が通らないように、強く握り締めた。



投稿日 : 2010 07/03 01:09 投稿者 : 無明

「な……」
やらかした。
一時とはいえ気を許したのが間違いだったか?
「私が無事に生まれるために、あんたには帰ってもらうしか……!!私は、もっとちゃんとした人生を……!!」
多少なりとも罪悪感は感じているようで、その顔には深い悲しみが見えた。
ああ、ほんとはいい子なんだな………
今回は譲ってあげようか。
出来れば次は兄弟として生まれたい……
覚悟を決めて、もう諦めようとした。
だがそのとき、奇跡は起こった。
「喧嘩しちゃ、ダメでしょ?仲良くしなきゃママもパパも、ホントに悲しいの。」
母が、ゆっくりと語りかけてくる。
「私たちだけじゃないわ。おじいちゃんもおばあちゃんも、お医者さんも。
 みんなあなた達が仲良く無事に生まれてくることを願ってるの。だから、喧嘩しちゃダメ。」
「お……か……あ……さん…………」
そう呟いた後、少女霊は泣き出した。
まるで涙のように、魂からどす黒い怨念が抜け消えていく。
「わたし……わたし……っ……」
ゆっくりと、握り締められた手が離されて、私の肉体に血液が戻る。
「お…にぃ……ちゃん……ごめん……いっしょに……一緒にいたい……」
妹の申し出を、断れる筈はなかった。

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そしてさらに2ヶ月たったある日のこと。
母は几帳面な人だったらしく、早産の危険を乗り越えて、ついに臨月まで持たせた。
相当小柄な体躯ではあるが、やはり母親とは強いものなのだろう。
私も妹も、魂が肉体に定着しつつあることを実感していた。
「もうすぐ、生まれ変われるんだね……」
「そうだな……生まれ変わったら、どんな世界が待っているのやら……」
最近は霊体の五感より、胎児の五感の方を使うことが多く、いよいよこの肉体になじんできたのだとわかる。
そのせいもあって母には迷惑をかけている。
不用意に動こうものなら、子宮越しになにかしらの臓器を圧迫してしまうのだ。
母と周りのやりとりは子宮内にもよく響いてくる。
それほど我々と外界を隔てる壁が薄くなっているのだ。
今日は健康診断のようだが……
「先生!私、赤ちゃんを自宅で迎えたいんです。家族みんなで、迎えてあげたいんです。」
「はぁ………今のあなたの体調なら別に問題もないですし、何かあったら連絡してください。なにより双子ですから。」
母の決断を、医師はあっさりOKしてしまった。



投稿日 : 2010 07/03 11:56 投稿者 : ゆうり

そしてすぐに自宅出産のための助産師まで見つけてきた。
「ねえ、お兄ちゃん、自宅出産で私たち大丈夫かなぁ?普通、帝王切開とか病院じゃないの?私たち無事に生まれれるかなぁ?」
妹は不安そうにいった。



投稿日 : 2010 07/03 14:15 投稿者 : 無明

「大丈夫だ、母を信じよう。」
そうだ。
母を信じなければ。

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そのころ外では……

「ふぅ……さすがに39週にもなると張りっぱなしね……」
母が、お風呂に入ろうとしていた。



投稿日 : 2010 07/04 16:32 投稿者 : こ肉

「あら?」
水道管が壊れたようで、途中から急に水が出なかった。
「困ったわ・・・」
石鹸で泡だらけの体で助けを呼ぶこともできないし、母は風呂場で立ち往生。

羊水の中で浮かぶ俺と少女は、同時にいやな予感がした。



投稿日 : 2010 07/04 21:25 投稿者 : 無明

なんとなく、母の焦りが伝わってくるのだ。
そう、心臓の鼓動に合わせるように、すこしづつ、規則的に…………
って、これは……

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「ふぅぅ~~……っ……」
間違いなく陣痛。
自宅で産む覚悟はできてたけれど、こればっかりは予想外。
「ぁ……ったたたた……」
石鹸を流さないと……



投稿日 : 2010 07/04 23:27 投稿者 : ぷに丸

真夏ということもあって、浴室はむしむしと湿気が高くなってきた
体は熱さから逃れるために、あるいは焦ってなのか。
痛みによるものか、じわじわと汗を出し始めた
汗の流れたところが泡の白さに道をつくる

「ぃっ…たたた…」
母親はついに立っていられずバスタブのふちに腰掛けた
ひんやりとした感覚が伝わってくる
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

驚いたのか陣痛のためか、
瞬間的な筋肉の収縮が私達を襲っていた
「うぉお、なんだかやばそうだな…」
「お兄ちゃん怖いよぉ…」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

母親は無意識のうちにお腹をさする
「ママ、どうしよう…」
汗と石鹸でお腹はテカテカと光沢をもっていた



投稿日 : 2010 07/04 23:42 投稿者 : ゆうり

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「どうしょう?ていわれてももう俺たちにはどうしようもないな。」
俺たちはもうすでに胎児の中でしか動けないしな。
「取り敢えず早く産まれるしかないよね。」
「そうだな・・・。」



投稿日 : 2010 07/05 00:16 投稿者 : 無明

とはいえ、体内から出産を進ませることなど不可能だ。
それに、ちょっと眠くなってきた。
妹もどうやら同じらしい。
胎児も体力を使うのかもしれない。
今のうちに寝ておこう。

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「やっと出た………」
しばらくしてシャワーが復旧した。
体中についた石鹸の泡をシャワーが洗い流す。
体を洗うとすぐにバスタブに入り、陣痛に耐える。
「大丈夫……ママがちゃんと産んであげるからね……」
そう、わが子に語りかけた。



投稿日 : 2010 07/11 22:18 投稿者 : JBL

「よく寝た・・・ってまた生まれてないのか!?」
何時間過ぎたのは知らないが、私は眠りから目覚めた。
そして、自分がまだ母の胎内にいることを気付く。
さらによく見ると妹もまだ傍にいた。天使のような顔で寝ている。
よくこんな環境で寝れるな、おい。
「出産は進んでいない・・・でもないようだな」
雷のような圧迫音がするし、子宮壁もブルンブルンと緊張してる。
母の様子が気になる。
私は一度、意識を外に出すことにした。



投稿日 : 2010 07/11 22:34 投稿者 : ゆうり

「っ!あなた・・・。」
「大丈夫か!?」
父親の声がする。
やっと気づいてもらえたみたいだ。



投稿日 : 2010 07/12 00:05 投稿者 : 無明

なんとかなればいいが………
おや?
体の方へ意識が引っ張られていく………
これは、いったい……?



投稿日 : 2010 07/12 00:22 投稿者 : ゆうり

「お久しぶりでーす。」
子鬼がやって来た。
「どういうことだ?」
「もうすぐ出産の本番です。出産をが本格的に始まると魂は外に出れません。それでは頑張って産まれてください。
 これで私の説明は以上です。さようなら。」



投稿日 : 2010 07/24 23:53 投稿者 : ぷに丸

「お兄ちゃん・・・・!こわいっ!」
「大丈夫だ。安心しろ。きっと体はもらえるさ。」
意識の中で会話する。
「きゃぁあっ!」
ブルゥウンッ!
子宮が痙攣している。陣痛が激しくなっているんだ。
俺たちの体も少しずつずれてゆく。
産む体制に入ろうとしているのだ。

「ふぅううんんんんんんっ!!!」
羊水でこもった声が子宮の外から響く。
そのたびに俺らのいる子宮は形を変える。
「ほら。お母さんになる人も頑張ってるんだ。
きっと俺らを元気にうんでくれるさ。」
「うん。」
半分べそをかいたように、妹はうなずいた。



投稿日 : 2010 07/24 23:58 投稿者 : にゃーコ

「泣くのは産まれてから泣けよ。」
「うん・・・ぐすん。」
やっと妹は泣き止んだ。
そしてブルルゥゥゥ
俺は子宮の締まりで出口がある子宮口の辺りに頭がいった。
「お兄ちゃん、あとで会おうね・・・。」



投稿日 : 2010 07/25 00:08 投稿者 : 無明

やばい、もう意識が・・・・・・・・・・・・・


「出てきた、出てきたぞ………もうすこしだ!!」


「はぁっ、くぅぅぅぅーーーーっ!!」


温かい……なんだか、すごく安心する……


声を、張り上げて泣いた。


「産まれた……やったぞ。とても元気な女の子だ。」
「ほんと……お医者さんのいってたとおりね……もう一人も女の子だろう、って。」
「なにせエコーに写ってくれなかったから不安だったよなぁ……」
「そうね、っ……またっ……!!」



投稿日 : 2010 07/25 00:17 投稿者 : ぷに丸

女性はすぐにお腹の痛みに襲われた。
「あ……な……たっ!」
「がんばれぇっっっ!」
2人は手を強く握りあい、2人目を生みだすために頑張っている。
かわいい女の子が生まれ、自信と勇気がついた女性は
どうやら、次の子もちゃんと産めそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっ!?女の子?嘘だろう?」
俺は朦朧とする意識の中でそう咄嗟に呟いた。
医者が保育器に入れられた俺の体を調べる。
双子なので慎重なのだ。
「女だな。完璧に。」
冷静な声でそう言った。すぐさま、看護婦がメモをとる。
俺の体は裸だが、産まれたばかりの子供は腹が大きく見えない。
しかしながら、ガラスにちらりと映る俺の下半身にはシンボルは確認できなかった…



投稿日 : 2010 07/25 01:07 投稿者 : 無明

「ああああっ!!」
数分後、妹も五体満足でこの世に生を受けた。
新しい人生か………
どうなることやら。



投稿日 : 2010 08/01 00:55 投稿者 : ぷに丸

俺はしばらくボーっとしていた。
自分の意識とは無関係に声をあげ泣く。
そうでもしないと呼吸ができないのだ。

まだ、微かにしか見えない目で横を見れば、
俺の母となる人が分娩台の上でまだ足を広げたまま唸っている。
苦しそうな顔だ。後産というものだろう。
股からはそのあとべろんとグロい血の塊が出てきた。
近くに置いてある保育器には産まれたばかりの赤ちゃんがいる。
多分、妹だろう。

「女の子だな。この子も。」
妹も女の体のようだ…
小児科の医師が緑の手術服を着て診察している。
俺は、力いっぱい泣きながらその様子を見ていた。


「お~めでと~ございま~す!」
小鬼だ。俺の前にふわふわと漂っている。
「無事に生まれることができましたねぇ~!いやぁよかったよかった。」
「なにがよかっただよ!俺の体は男じゃないじゃないか!」
新生児に言葉がしゃべれるはずもなく意識の中で小鬼に文句を言う。
「いやぁ、すいません…でも、体が手に入れられたからよかったでしょう?」
「とはいってもなぁ…」
「考えて見てくださ~い。元は福引きの商品ですよ~?
体がタダで手に入れられただけでも幸せじゃあないですか~?」
「うぅ~ん…確かにそうだが…」
「妹もできたんだから何とかやれますよ!がんばってくださいね~!」
「う、お、あ…ちょっと!」
ボンっ!
小鬼はあっという間にどっかへ行ってしまった…
こうして俺の「新たな人生」が始まった…


『ラッキーチャンス』―完― 『ラッキーライフ』へ続く


            続編:ラッキーライフ


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