姉妹の出産記~ハプニング3 電車編~

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)



投稿日 : 2010/06/09 01:35 投稿者 : 無明

とある町のとある住宅にて………

「姉さん、赤ちゃんの調子はどう?」
一人の女性が、もう一人、そっくりな見た目の女性に問いかける。
「とても順調で、入院しなくていいって。」
もう一人の女性が答え、さらに話が続く。
「お母さんも言ってたわ。やっぱり双子って双子を生むのね、って。」
彼女らは千佳(ちか)と千奈(ちな)。
尚美の産んだ、双子の姉妹である。
「お兄ちゃんに心配掛けたくないし、来月になったらお母さんとこに顔見せるついでに里帰り出産しようか。」
「そうね。来週お医者さんに相談しましょう。」
二人は共に双子を妊娠していて、今9ヶ月だ。
電車で帰れる距離の実家なので安心しきっていたが、まさか車内で産むとはこのとき、考えていなかったのである。
「じゃあ、私ちょっと出かけてくるね。公園まで散歩に。」
「ちょっと姉さん、私もついてく!」
それにしても仲の良い姉妹である。



投稿日 : 2010 06/09 01:47 投稿者 : ゆうり

「姉さん、疲れちゃった。」
「そうだね。休憩しようか。」
二人はベンチで休憩しようとした。
「それにしても双子が予定日一緒ってすごいよね。」
「それに双子が双子ってね。」



投稿日 : 2010 06/09 09:36 投稿者 : 無明

「大きくなったね、私のお腹も姉さんのお腹も。」
「ほんと、でもあなたの方がちょっと大きいわ。」
そう言って二人はお腹を触りあった。
そして1時間後。
「そろそろ帰りましょ。汗かいちゃった。」
「そうね千奈。帰ったらお風呂に入りましょ。」
こんな感じで、お風呂に入る時でさえ二人は一緒なのだ。

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「やぁん、姉さん。くすぐったいってば。」
身体を洗いっこしている最中に脇の下をくすぐられ。千奈は声を上げた。



投稿日 : 2010 06/09 09:53 投稿者 : ゆうり

「もうじっとしててよ。」
「だって~。」
二人はじゃれながら入っているため、中々でてこない。
「ただいま。」
そうこうしてるうちに兄が大学から帰ってきた。



投稿日 : 2010 06/09 19:54 投稿者 : 無明

「まだ風呂はいってんの?のぼせないうちに上がれよ。」
兄が優しく声をかけてくる。
実はこの兄こそが、姉妹の赤ん坊の父親なのである。
「はーい。ご飯は作っといてくれる?」
千佳は兄にそうつたえ、妹とのお風呂をさらに楽しむことにした。



投稿日 : 2010 06/09 20:38 投稿者 : ぷに丸

兄は千尋(ちひろ)は大学が遠く一人暮らしをしているのだが、
たまに妹達のようすを見に帰ってくるのだ
料理の腕もなかなかのもので、以前コンテストで優勝したこともある
多少クールな面もある千尋だが、妹たちがかわいくて仕方がないのだ



投稿日 : 2010 06/09 21:46 投稿者 : ゆうり

それから30分してお風呂から出てきた。 「わぁ~、美味しそう!」
「さすが、お兄ちゃん。」
今日はカレーライス。
お兄ちゃんのはルーから手作りなの。



投稿日 : 2010 06/09 22:28 投稿者 : ぷに丸

「「やんっ!」」
2人の双子が強くお腹を蹴った
「赤ちゃんもカレー食べたいのかしらね、いつもよりつよいわ」
「お兄ちゃんのカレーとってもおいしいもんね」
「やめろよ、照れるだろ」

「ぽこぽこ蹴ってるよ。あかちゃん。ほら、」
と千佳は千奈と千尋の手を引く
「元気でなによりだ。すごいな、胎動」
千尋にほめられ千佳は少し赤くなった
「すごいね。あかちゃんホントにお兄ちゃんの料理大好きなんだね
私のお腹もすごぃよお」
千奈も負けじとアピールする

なごやかな団欒は過ぎ
2人さすがに大きく膨れ上がった子宮に圧迫され、あまり食べられない
しかし、小ぶりなさらに盛られたカレーを2人は残さずたべた



投稿日 : 2010 06/09 22:41 投稿者 : にゃーコ

夜寝るときはキングベットで三人で寝るの。

もちろんお兄ちゃんが真ん中なのだ。

朝、二人はお腹に違和感を感じていた。
しかし気にしていない。
「あ、お兄ちゃん、今日家に一回帰っくるね。」



投稿日 : 2010 06/09 22:54 投稿者 : にゃーコ

「今日は・・・お腹張っててすごいね。」
「うん。今日は何しようね。ベビー服でも買いに行こう。」
「うん!」
二人は昼から買い物に行くことにした。



投稿日 : 2010 06/09 23:01 投稿者 : ぷに丸

ベビー服売り場は多くの妊婦さんでごった返していた
今日はセール中らしい
お腹とお腹がしょっちゅう触れ合うくらいの込み具合だ
お腹があたるたびに
「ごめんなさい」「何ヶ月ですか?」「何人ですか?」
と聞かれ、双子で双子妊娠と驚かれる

結局、ベビー服に加え、気に入ったマタニティを買ってしまい
家へと戻った



投稿日 : 2010 06/09 23:05 投稿者 : にゃーコ

「ふぅ?くたくたね。」
「ほんと夜は出前取ろうよ。」
「そうね。」
二人はベットに横になって言った。
「でももうそろそろ陣痛がきてもおかしくないのにね。」
「陣痛のタイミングも一緒だったりして。」
二人は笑いながら言った。



投稿日 : 2010 06/09 23:12 投稿者 : ぷに丸

「でも、まだ9ヶ月に入ったばっかりよ
赤ちゃんもお腹の中気に入っているみたいじゃない」
「そうね、今は妊婦生活を楽しまなくっちゃね!
赤ちゃんもそっちのほうがよろこぶわ!」
ベッドで2人は見つめあいながらはしゃいだ
お互いに見つめあうとお腹とお腹が触れ合う
ヘソの先が擦れ合うだけでも、胎動の振動は伝わってくる
2人は妊婦トークを続けた



投稿日 : 2010 06/09 23:24 投稿者 : 無明

「でも、先生に外泊許可をもらえたね。」
「なんで急に先週の話するの?」
「いや、お兄ちゃん今ママのとこにいるじゃん。だからさ、ついていけるなーと思って。」
そして医師に連絡して里帰りの日を39週ジャストの日に定めると、二人はお風呂にはいることにした。
当然風呂の中でも妊婦トークやジャレあいが続くのだ。



投稿日 : 2010 06/09 23:29 投稿者 : ゆうり

ピン~ポン
しばらくのんびりしていたが、出前がやってきた。
「ちわー!○×ラーメンです!」

「ラーメンがきたぁ!」
二人はここのラーメンが大好きなのだ。



投稿日 : 2010 06/09 23:35 投稿者 : ぷに丸

「ハコの中に置いといてくださ~い!」
グルメな2人は玄関に保温機能つきのボックスを設置しているのだ
お風呂の中からでも話せるインターホンで出前に指示を出すと
再び、お風呂で2人の時間。妊婦の時間を楽しみ始めた



投稿日 : 2010 06/09 23:46 投稿者 : 無明

広い湯船の中で身体を触りあったり、妊娠中のマイナートラブルについて話しあったり。
二人にとっては何よりもこの時間が楽しいのだ。
「そうそう。こんだけお腹大きいとドアとか通りにくいのよね。千奈は?」
「私も。あのショッピングモールのトイレのドアにお腹引っかかったときは焦っちゃった。
 ほんとにもう限界だったしさ~。」
ふたりとも130cmもある超巨大なお腹を抱えているのだ。
マイナートラブルも普通の妊婦の比ではない。
「トイレも一度行きたくなると5分くらいしか我慢きかないよね。」
「なのにここ2週間は便秘だものね。ホント妊婦って不思議……」



投稿日 : 2010 06/09 23:50 投稿者 : ぷに丸

「ただでさえお腹は大きくてきついのに、便秘でまたパンパンになっちゃうもんね」
「ひん尿に加えて赤ちゃんが蹴ってもれそうになるから困っちゃう」
「こんなに苦労しなきゃいけないって、女の子って大変だよね
 でも、こんな幸せ味わえるのも女の子だけだよね」

もはや自分で洗えるのは腕と胸までの千佳と千奈は
お互いに洗いっこすることで洗えない部分を洗っている
お腹の下は見えず足を洗うにもかがめるお腹の大きさではないので
2人であらうのは大変たすかるのだ

「千佳のお腹ってすっごく大きいのに、妊娠線一つなくってすべすべだね~」
千奈が千佳のお腹を洗いながらいう
千奈ももちろんお腹が大きいので
千佳が立って、千奈がバスタブに腰掛けて洗っていく
「そんなことないよ。千奈のお腹もすっごくきれいだよ」
もちろん部分も洗う。検診のため、元から、面倒にならないように、
さまざまな理由で部分は毛がない
「ここからだよね。こんなちっちゃいとこから出てくるなんてちょっと怖いな」
「大丈夫だよ。2人一緒にがんばれば乗り越えられるよ!それにしても、すごいよね、
 こんなに重い赤ちゃんをこんなに小さなところで止めてるんだからね」



投稿日 : 2010 06/10 00:02 投稿者 : ゆうり

「確かに。」
二人は笑いながら言った。
しばらくしてお風呂からでて出前を食べることにした。
「「いただきま~す!」」



投稿日 : 2010 06/10 01:33 投稿者 : 無明

たとえ一杯のラーメンでも、大きく膨らんだ子宮に圧迫された姉妹の胃はなかなか許容してくれず、
結局食べるのに1時間半もかかった。
「ふぅ、お腹いっぱい……」
そして歯を磨くと、二人揃ってベッドに飛び込んだ。
「お兄ちゃんがいないから寂しいなぁ……」
「千奈、後3週間の辛抱じゃない。それに、今は私がいればいいでしょ?」
その時、千奈の子どもが動いた。
「ほら、赤ちゃんもそうだよっていってるじゃない。」



投稿日 : 2010 06/10 07:31 投稿者 : ゆうり

「ほんとだ。お~ぃ、早く会おうね。」
千奈はお腹をさすりながらお腹の子供に話しかけた。
「さぁて、そろそろ寝ようか?寝る子は育つていうし。」
「うん!」



投稿日 : 2010 06/10 20:56 投稿者 : 無明

二人にとって、真ん中に千尋のいないベッドはちょっとだけ広かった。
そして、ベッドに横になってお風呂でしていた話の続きをするのだ。
お互いの息遣いが感じられるほどにぴったりと身体を寄せ合う。
お腹の双子も胎動が活発で、まるで二人のお腹越しに蹴り合っているようだった。
「千奈、元気な赤ちゃんね……」
「姉さんだって!」

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「ついにお兄ちゃんに会えるよ!やったー!」
「そうね。後はこんなに熱くなければ最高なのに…………でも嬉しい!!」
それから3週間。
今日は待ちに待った日だ。
千佳も千奈も、すぐにでも産気づきそうな妊婦だと言うのにはしゃいでいる。
サイズの合うマタニティもなかなか無いので、
シャツにスパッツ、それにサンバイザーと動きやすい服装を今日はしている。
伸びきったお腹の皮膚は光沢を持ち、汗で濡れてヌラヌラと光っている。
そのせいで道行く人からは注目の的だ。
たとえ子宮が収縮を始めていても、張り詰めた皮袋のようにパンパンな二人のお腹では、気づくはずがなかった。



投稿日 : 2010 06/10 21:11 投稿者 : にゃーコ

最初に異変に気づいたのは千奈だった。

「今日やけにお腹が緩い感じがする。」
「確かに・・・。でも大丈夫じゃない?それより、駅までタクシーでいく?」

二人は気にしないことなした。



投稿日 : 2010 06/10 21:19 投稿者 : ぷに丸

住宅街から市街地を抜けてゆく
普通の通行人はもちろん
妊婦さんまでもが、
自分のお腹と2人のお腹を交互に見比べ、目をまるくする

初夏の暑さはひどいものであった
汗でシャツは透け、流れ落ちる汗でテカテカのお腹の色が見える
無論、Gカップの胸を包むブラも透けて見える
「おねぇちゃん、ちょっと恥ずかしいね…」
「妊婦さんならしょうがないことよ。こんなきれいなお腹見られたって恥ずかしくないわ」
歩くたびに上下にゆっさゆっさとゆれるお腹はやはり2人の体力を消耗させた
2人はちょっとしたカフェでやすむことにした



投稿日 : 2010 06/10 21:23 投稿者 : ゆうり

「ふぅ~どっこいしょ。」
「疲れたわね。」
二人はお腹を撫でながら言った。
「そうだね。皆、私たちのお腹を見てたね。」

「まぁ、これだけ大きいと目立つしね。」



投稿日 : 2010 06/10 21:39 投稿者 : 無明

クーラーの効いている店内は流石に身体が冷えると考え、テラス席を選んだ。
このカフェは二人のお気に入りで、なによりレモンティーがおいしい。
二人は椅子にどっしりと座り、すぐに来た店員さんにレモンティーを頼んだ。
人気があるぶん作っている量も多いのか、割とすぐにレモンティーが来た。
サービスでクッキーを二枚つけてくれるのが、ここの人気の秘密なのだ。
「ふぅ~…喉が潤うわ……」
「これだけの距離を歩くとお腹が重いね……でもこの重みも幸せな重みなんだよね。」
椅子に座っていても、店員さんや他のお客さんがびっくりしたような顔でこちらを見たりしている。
別に嫌な気分ではなかったが、汗でシャツがぴっちりと身体に張り付いてちょっと気持ち悪かった。
「ご馳走様でした!」
そして水分と糖分を補給した二人は、再び駅に向かって歩いた。
自販機でミネラルウォーターを買って、水分補給対策もバッチリだ。
家からは案外遠い駅へと、二人は汗ビッショリで歩いた。
タオルやハンカチで汗を拭いていたが、白いシャツから下の肌がくっきり見えるほど透けてしまった。



投稿日 : 2010 06/10 22:35 投稿者 : にゃーコ

駅に着き、千奈が切符を買ってる間、千佳は売店で千尋や両親に買っていくお土産を選んでいた。
「買ってきたよ。お土産選んでるの?」
千奈は切符を渡して言った。



投稿日 : 2010 06/10 23:14 投稿者 : 無明

「うん。お兄ちゃんには別にいらないかもしれないけど、お母さんにはこれね。」
そう言って千佳はお菓子を2つ買っていった。

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電車は冷房がきついことが多いので鈍行の弱冷車に乗ることにした。
電車で行ける範囲と言っても実家まで5時間はかかる。着くのは夕方頃だ。
その間、しばし電車の旅を楽しむことにした。
よっこらしょ、と声を上げて座った千奈の腰に痛みが走った。
「いった~……腰が痛い………」
「これだけ大きくて重いお腹だもの。私だって痛いわよ。」
様々なマイナートラブルが、まだまだ二人を悩ませるようだ。



投稿日 : 2010 06/10 23:28 投稿者 : にゃーコ

「電車の中で出産とか面白そうだよね。」

「たしかに。お母さんはお兄ちゃんをトイレで私たちを車の中でしょ。ハプニングばかりだもんね。」
「確か千咲の時は掃除中でしょ。帰ったらビックリだったね。」
千咲は末っ子の妹だ。
まだ四歳の可愛い妹である。



投稿日 : 2010 06/11 00:15 投稿者 : 無明

そんなふうにのんきに話していたが、まさか本当にそうなるとは思っていなかった。
「まぁ、安全に家か病院で産むに越したことはないわ。」
「それもそうだよね。……っ……」
「どうしたの千奈?」
「電車乗るまで歩きすぎちゃったから……ちょっと張ってきちゃった……」
「私はさっきから赤ちゃんが元気で、そのせいで張ってる気がするわ……」



投稿日 : 2010 06/11 00:31 投稿者 : にゃーコ

「ふぅぅぅぅ?。でも大丈夫だよね?ここ個室だし。横になれるから少し横になろう?」
千奈は座席に横になった。
「私も横になろう。」
千佳も横になり、たまに来る張りに耐えていた。



投稿日 : 2010 06/11 00:52 投稿者 : 無明

だんだんと張りが強くなってきて、横になりながら二人は鼠径部の圧迫や、マッサージなどを試している。
「うー……千奈、これ陣痛かも……」
「え……でも、言われてみれば……」
普通ならば出産までに駅に辿りつけたはずだが、今回は違う。
鈍行の観光列車だった上に、ポイント切り替えや順番待ちでいつもの2倍以上の時間がかかっていたのだ。
そして個室座席が防音だったのを良い事に、いきみを逃すために二人は声を上げ始めた。
「ああああ~~~~~~~~!!」
「うぅ~~~~ん………」



投稿日 : 2010 06/11 01:03 投稿者 : ゆうり

「せっかく、二人だから、子宮口確認しあいましょ・・・。」
千佳が提案して二人で交互に子宮口を確認した。
「三センチってとこかも。」
「千奈も・・・っ!」
だいたい二人は同じ間隔で同じ時間帯に陣痛がくる。



投稿日 : 2010 06/11 01:31 投稿者 : 無明

「3センチって………この調子じゃ家に付く前に産んじゃう……」
だがそんなことを考えるひまもなく、子宮は胎児を押し出そうと収縮する。
二人は体を寄せ合って耐える。
子宮口が開ききるまでは少なくとも後4時間はかかる。
それまで二人はこの鈍く、努責感を伴う痛みに耐え続けなければならないのだ。
「お姉ちゃんも私も……お腹がカチカチ………」
千奈はそういって姉の腹部をマッサージしている。
逆に千佳は妹の腹部をマッサージしているのだ。
そんな時、不意に千佳が呟いた。
「……おしっこしたい………」
その思いは千奈も同様だった。



投稿日 : 2010 06/11 01:50 投稿者 : にゃーコ

「確か隣だったわよね?」
千佳が思い出して言った。
「じゃあ、なにかあるといけないから二人で行きましょ。」
二人は壁に寄りかかりながらトイレに向かった。



投稿日 : 2010 06/11 02:04 投稿者 : 無明

列車内備え付けのトイレは狭く、二人のお腹がぶつかってしまう。
だが、心細いこの状況下でお互いが隣りにいると言うのは、二人にとって大きく安心できることだった。
便座に座り込み、用を足す。
尿が溜まっていると赤ちゃんがおりてくる妨げになると知っていたが、それよりも今は生理現象が優っていた。



投稿日 : 2010 06/11 02:11 投稿者 : にゃーコ

一人づつ用を足し終わり、席に戻った。

席に戻り、取りあえず千佳が千尋に陣痛が始まったことをメールし、千奈が母親にメールを打った。
母親からは二人で出産で大丈夫か?とか出産のコツが送られてきた。



投稿日 : 2010 06/11 02:29 投稿者 : 無明

「流石お母さん……マトモな出産した事ない人だ………」
事細かに書かれた母からのメールを見て二人は苦笑した。
最初に書かれていたことの一つ、
「破水するまで絶対にいきまない。マッサージと呼吸で耐えること」
を守るためにふたりとも横になって深呼吸とマッサージを続けた。
「お母さんのとこにつくまで持てばいいけど……」
ますます強くなる陣痛に耐えながら、千佳が呟いた。



投稿日 : 2010 06/12 01:20 投稿者 : 無明

やがて深呼吸をするのも辛くなってきて、千奈はメールに目をやった。
「痛かったら叫んでもいい。とにかく破水するまではいきみをのがして」
そして千奈はたまらず声を上げた。
お腹をさすっていきみをのがしていた千佳もそれにつられるように、二人で獣のような絶叫を続けた。
この姉妹にとって誤算だったのは、この列車に医者が一人もいなかったことだ。
そのため二人で出産するしかないのだ。



投稿日 : 2010 06/12 08:19 投稿者 : ゆうり

「はぁはぁ、千奈、今、なんセンチ?」
千佳が聞くと
「え~っとぉ~・・・いたあぁぁぁあ!・・・はぁはぁ、5センチくらい・・・。わたしは?」
「一緒。5センチくらいよ。」



投稿日 : 2010 06/12 15:16 投稿者 : 無明

「まだまだね……っく……」
そろそろ飲み物の売り子がやってくる時間だと千佳は気づき、一縷の望みをかけることにした。
それまではただひたすら耐えるのだ。
叫ぼうが何しようが、それは本能に則った行動なのだ。
人間の理性で止められようはずがない。
個室内で四つん這いになって二人は、獣のごとき咆哮をあげた。



投稿日 : 2010 06/12 17:32 投稿者 : ゆうり

「ジュースにお弁当は・・・・大丈夫ですか!」
売店の売り子がやってきた。
「たすけでぇぇぇぇぇぇ??!」
千佳が売り子に頼む。



投稿日 : 2010 06/12 18:10 投稿者 : 無明

すぐにトランシーバーで売り子は車掌に連絡する。
何度も車掌が呼びかけるが、誰ひとりとして名乗りをあげるものはいない。
おまけに次の駅までは何時間もかかる。
さらに運の悪いことに、姉妹揃っていきみだしたのだ。
二人の子宮口は9.5cmまで拡大していたのだ。
売り子である加奈子は、どうしたものかと考えを巡らせた。
そして決心し、二人に声をかけた。



投稿日 : 2010 06/12 18:12 投稿者 : ゆうり

「私に何か手伝うことはありませんか?」
加奈子は手伝うことにしたのだ。
「あ、ありがとうございます・・・。」



投稿日 : 2010 06/12 19:14 投稿者 : 無明

「私も子どもがいてね……あなたたちの気持ちはわかるわ。死ぬかと思ったもの。」
やさしい言葉が、パニックになっていた二人を落ち着かせる。
「こういう時は、慌てた方が負けなのよね……運で上げられるのはあなたたちだけよ。医者もいないみたいだし……」
そして、加奈子は代わりの売り子に荷台を持っていってもらった。



投稿日 : 2010 06/12 19:49 投稿者 : ゆうり

「取り敢えず破水するまでは息むのは我慢してね。」
二人にとって心強い。
「はぁ、ひぃひぃ、あ゛あぁぁぁ!」
二人は必死に陣痛に耐えていた。



投稿日 : 2010 06/12 21:55 投稿者 : 無明

そして30分ほどたち、陣痛の間隔がわからなくなってきた頃、二人は破水した。
「よく頑張ったね。さぁ、あとはいきんでいいはずだから。」
教えられることは全て教えた。
だが、加奈子はそれでも二人を励ますためにそこにとどまることを選んだ。



投稿日 : 2010 06/12 22:01 投稿者 : ゆうり


「んぐぅ~~~~~!」

「んぅ~~~~~~!」
二人は息んでいた。
「その調子だよ。もうすぐ赤ちゃんの頭がみえそう!」



投稿日 : 2010 06/12 22:41 投稿者 : 無明

「見えてきた見えてきた……あと少しの辛抱よ!」
加奈子は笑みを浮かべて二人に話しかけた。
だが、姉妹は揃って返した。
「違うんです……双子、なんです。……んんぐっ!!」
「え、双子?」
加奈子は戸惑った。
彼女も難産の末に赤ん坊を産んだが、一人なのだ。
双子の時の励まし方なんて、わかるわけがなかった。



投稿日 : 2010 06/12 23:01 投稿者 : ゆうり

「・・・頑張って。一人を産めば二人目は慣れてるから気が楽よ。」
加奈子は取りあえず一番よいと思ったアドバイスをした。
「「はいぃぃぃぃ!」」
二人は答えるとまた息んだ。



投稿日 : 2010 06/13 00:25 投稿者 : 無明

しかしまだ破水しておらず、羊膜のまま降りてきた二人の赤ん坊を見て加奈子はさらに戸惑った。
だがとりあえず励ましの言葉をかけるしか無い。
「がんばって、きっとそのうち破水するからね!」



投稿日 : 2010 06/13 00:31 投稿者 : ゆうり

「はぁはぁ、はいぃぃぃぃぃぃ!」
「ったあぁぁぁぁい!」
二人は痛みに我をも忘れそうだった。



投稿日 : 2010 06/13 00:47 投稿者 : 無明

ところがそこから何分たっても、破水しない。
なのに羊膜はどんどんせり出してくる。
彼女は出産の際に人工破膜をしてもらっているので、破水しないことの辛さを知っていた。
(何かつつくものがあれば…………)
そして、胸元につけているバッジに目がいった。
バッジの留め具を外し、赤ちゃんを傷つけないようにそっと、さした。
ぷち、という小さな音の後、溢れ出してきた羊水で座席はベトベトになった。



投稿日 : 2010 06/13 00:53 投稿者 : ゆうり

「千佳さんは破水させたからもういきんでもいいわよ。」
そういうと今度は千奈さんの羊膜を割った。
「千奈さんのも破水させたからあとはひたすら息むだけよ。」



投稿日 : 2010 06/13 01:07 投稿者 : 無明

「ありがとうございますぅぅうううううううう!!」
そして二人は同時にいきみだした。
いろんなところのの似通っている姉妹だ。
身体のタイミングも近いのだろう。
そして下がってきた赤ん坊を見て、加奈子はついにかける言葉が思いつかなかった。
逆子だったのだ。



投稿日 : 2010 06/13 01:11 投稿者 : ゆうり

「どうしたんですか?」
「えっ、なに?」
二人は不安そうだった。
「逆子みたい…。」
取りあえず加奈子は状態を知らせた。



投稿日 : 2010 06/13 01:59 投稿者 : 無明

「逆子……?」
「大丈夫。私たちもそうだったから………」
半分ほどワケの分からないことを言いながら、姉妹はまたいきんでいる。
もう加奈子には、姉妹の手を握って励ますしかなかった。



投稿日 : 2010 06/13 02:04 投稿者 : にゃーコ

「足が出たわ。」
「ひっぱってぇぇぇぇ!」
加奈子は千佳と千奈の赤ちゃんの足を引っ張ることにした。
「「んぐぐぐぐぐぐううううう!」」
息むタイミングに加奈子は赤ちゃんをひっぱていく。



投稿日 : 2010 06/13 18:52 投稿者 : 無明

「ぐううううううううう!!」
「んんんんんんんんっ!!!」
姉妹の渾身のいきみに合わせて、赤ん坊の足を引っ張る。
引っ掛かりが強かったが、それでもなんとか腰まで出てきた。



投稿日 : 2010 06/13 20:29 投稿者 : ゆうり

「腰まで出ましたよ。あともう少しで一人目が生まれますよ。」
加奈子は興奮気味で行った。
「「んぐぅぅぅぅぅぅ??!」」
二人は懸命に息んだ。



投稿日 : 2010 06/13 20:48 投稿者 : 無明

そしてそのいきみに合わせて加奈子が引っ張った。
ズボボッ、っと大きな音を立てて羊水が噴出し、二人の第一子が産まれた。
「大きな女の子ねぇ………」
二人は肩で息をしながら、自らの産んだ子供を抱き上げた。
だが、もう一人残っているのだ。



投稿日 : 2010 06/13 20:51 投稿者 : ゆうり

「っ!」
「えっ、もう・・・。」
もうすこし時間がかかると思っていたが意外にも早く陣痛が来たと思った二人。



投稿日 : 2010 06/13 21:03 投稿者 : 無明

「そう、きっとその調子よ……」
加奈子の励ましに一瞬顔を緩めて、再び姉妹はいきんだ。
顔は真っ赤になり、太ももをつかんでいる手には渾身の力が込められていて、太ももに真っ赤な跡を残している。
そしてその甲斐あってか、まだ見えはしないものの胎児は順調に下降していた。



投稿日 : 2010 06/13 21:06 投稿者 : ゆうり

「いい調子よ。この調子。」
加奈子は二人を励ましていた。
「「んぐぅ~~~~!」」
二人は必死で息んでいる。



投稿日 : 2010 06/13 22:04 投稿者 : 無明

やがて、膣からは頭が見え隠れした。
だがそのサイズの大きさに、加奈子は驚くしかなかった。
二人だって疲れきっているのだ。
次の駅まであと1時間はかかる。
そこが彼女たちの目的地なのだから、そこに間に合わせればあるいは……
加奈子はそう考えた。



投稿日 : 2010 06/13 22:08 投稿者 : ゆうり

「ひっひっ、んぅぅぅぅぅ~!」
「あぁん、んぐぅぅぅぅぅ~!」
二人とも必死に息んでいた。
「頑張って。あと一時間もすれば電車も着きますよ。」



投稿日 : 2010 06/17 11:05 投稿者 : こ肉

そのとき、電車は予告もなく急カープした。
「「「きゃあ」」」
突然の出来事で、三人はそれぞれ体勢を崩して転ぶ。
「「うぅぁあ!」」
千奈は壁に、千佳は床に、ほぼ同時にお腹を強打した。
どぶっと鈍い音を立て、二人から羊水が噴出する。



投稿日 : 2010 06/18 00:02 投稿者 : 無明

だが、その勢いで一気に頭が飛び出した。
なんとか体勢を立て直して、加奈子は呼びかける。
「もうちょっと!もうちょっとだからね!!」
姉妹もなんとか反応を返せる。
目的地の駅までは、あと少しだ。



投稿日 : 2010 06/18 00:07 投稿者 : ゆうり

「「ンぐぅぅぅぅぅ!!」」
ズルッ
キキッキー
「「ふぎゃぁ!ふぎゃあ!」」
「「はぁはぁ・・・。」」
「ご利用ありがとうございました。到着です。」
産まれた直後に駅に着いた。



投稿日 : 2010 06/18 00:24 投稿者 : 無明

案の定、駅では家族が皆で待っていた。
そして駅の外で待っていた救急車で病院に行き、処置を受けた。

「こんな出産はもう懲り懲り……でもお兄ちゃんとの赤ちゃんはもっと欲しい…」

だがこの姉妹は、後にこれ以上の難産を経験することになるのだった……





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