とある母親の出産記録(アクティブバース)

読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂きました。(熊猫)


投稿日 : 2010/08/27 11:43 投稿者 : JBL

妊娠記録が長くなってきた+出産は長くなりそうだ=別スレでやろうか
という発想で、思いきって新スレを立った。 ←今ここ

以下、元スレからの簡単な登場人物紹介(脳内補完込み)

空木涼子 主人公。妊娠しているが、母になる自覚があるかないかぐらいうっかりさん。
         トラブルあり感動ありの妊娠期間を経て、これから初産へ挑む。
         一人称は私。妊娠前は高三になったばかりの普通の女子高生。

拓海 涼子を妊娠させた男。一人称は俺。少々乱暴だが涼子のことを愛している。
   好青年で責任も取りつもりで、涼子との婚約は両方の家族に公認されている。
   危なっかしい涼子の出産を案じて、参考書とかいろいろ本の知識を勉強した。

文ちゃん 涼子の女子高生友達。ソフトボール部の部員。軽い性格でお調子者。
     学園祭のチケットなどを取っといて、ぜひとも涼子に来て欲しがっている。
     妊娠と無縁な現役女子高生で、妊娠してる涼子の大きなお腹に興味津々。

先輩ママ 海で出会った、妊娠をきっかけで女子ソフトボールから引退した元選手。
     出会ったときは二人目妊娠中だが、涼子より一ヶ月ほど先男児を出産。
     涼子の女子高のOBであることもあり、学祭には毎年必ず行っている。

現段階はこれぐらいか。
検診の医者と拓海の母親もいたが、出番があるかどうか。
・・・とりあえず、記録を始めてみようか。
空木涼子の、人生でもっとも長いであろう一日を。

――とある母親の出産記録(アクティブバース)――




投稿日 : 2010 08/27 11:44 投稿者 : JBL

妊娠35週6日 夜23時頃 夫婦部屋

「うーん、うーん」
ダブルベッドで何度も何度も姿勢を変え、涼子はお腹を撫で続けた。
「やれやれ、ママを寝かせてくれないとか、やんちゃな子だな」
「ほんとね・・・きっと、とても元気な子が生まれてくるね」
優しく微笑みながら、もうすぐ両親となる二人は赤ちゃんに愛を注いだ。
これが功を奏したのか、少し経ったら胎児がすやすやと安らいだ。
「さぁ、今のうちに寝ようぜ、明日学園祭行くんだろう?」
「そうね・・・じゃ、おやすみね、拓海」
「ああ、おやすみ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

妊娠36週0日 朝8時頃 トイレ外の廊下

「はぁ・・・」
トイレから出て、涼子は大きくため息をついた。
「おかしいな・・・お腹壊したわけでもないのに・・・」
なぜかうすうすと疼くお腹を軽くポンポンと叩いて、廊下を渡り居間へ。
「おはよう、涼子。お腹の調子はどう?」
「んー、張っていて重かったけれど、それ以外は特に」
「・・・涼子は今日から臨月だからな、いろいろ気をつけないと」
「もー、分かってるから。拓海って心配性ね」

拓海と会話を交わしつつ、涼子は心の中で胎児に話しかけていた。
(『臨月』、かぁ・・・もうすぐ会えるよね、私の赤ちゃん)

その後、少し早めの朝食を済ませ、二人は自宅を後にして、
駅前のバスに乗って、涼子の学校の学園祭へと出発した。



投稿日 : 2010 08/28 15:55 投稿者 : JBL

(※出産記録なので、従来通りの時間表記に出産の進行状態を加えてみた)

朝8時半頃 バスの中  陣痛間隔約20分、子宮口1cm

『次は××三丁目、××三丁目~○○高校前でございます~』

「ほら、ついたぞ」
車内アナウンスを聞いてから、拓海はベルを鳴らして涼子に合図を送った。
「うん……った」
「涼子?」
楽しみにしていた学園祭なのに、学校を前に涼子の表情は芳しくなかった。
「もしかして、お腹痛いのか?」
急にお腹に手を当てる涼子。心配する拓海。
「ううん…蹴られただけみたい…この子もウキウキしてるかな?」
「無理しちゃだめだぞ、病院の先生も言っただろう、いつ産まれても・・・」
「はいはい、気をつけるから~。ささ、はやく降りましょう」
これ以上突っかかってくる前に拓海の口を押さえ、二人はバスから降りる。

(予定日あと一ヶ月だし、そんなに痛くないし、こんなの陣痛なわけないもん)
嘘みたいに静まりまった重たいお腹を持ち上げ、涼子は学校へと足を踏み出した。



投稿日 : 2010 11/06 09:43 投稿者 : 致良

朝9時~10時 ソフトボール部部室 

文ちゃんに会うため、女子ソフトボール部の部室に来た涼子。
もはや懐かしいとも言える、男子とはまた別の運動部の香り。
文ちゃんとおしゃべりしたり、他の部員にお腹を見せたりと、
マネージャー時代の思い出と母になる喜びに浸る涼子だった。

鈍感か、それとも初産のせいか、涼子は全然気付かなかった。
朝から続いてた腹の不快感の正体は、実は陣痛であった事を。
子宮口は緩やかに開かれ、間隔も痛みも徐々に本番に近づく。

そして遂に、文ちゃんにも陣痛だと判る程デカイ一発が来た…   つづく



投稿日 : 2010 11/07 13:42 投稿者 : 致良

朝10時ごろ ソフトボール部部室

「でね、あの時はね、あぐっ! い、痛ぁっ・・・」
「涼子ちゃん!? どどど、どうしたの!?」
話の途中で声を上げてお腹に手を当たる、と極めて不自然な仕草をする涼子。
経験無くても文ちゃんだって女の子だ。勘でなんとなく分かってしまう。
「ま、まさか・・・赤ちゃん?」
「・・・・・・」
おそるおそる口を開く文ちゃんに、涼子は無言でうなづく。
かなり痛そうで、しわを寄せてぶるぶるとお腹を力一杯抱えた。
「は、はは早く病院に! 救急車を!」
予定日前の陣痛到来に、出産をする涼子本人より取り乱した文ちゃん。
しかし、涼子は――                   つづく



投稿日 : 2010 11/07 18:22 投稿者 : 無明

「まだ大丈夫だって。この程度じゃ生まれないよ。」
少し間をおいて返事。

午前11時ごろ 陣痛間隔約15分

「ふぅ~……で、どこ見に行く?」
「いや、陣痛来てる妊婦さんを連れまわすのはちょっと……」



投稿日 : 2010 11/08 09:16 投稿者 : 致良

結局、本人が大丈夫だと強引にいった事もあり、
文ちゃんは涼子を連れていろんな場所を巡った。
定番の喫茶店、軽食屋台、お化け屋敷などなど、
涼子は「陣痛の真っ最中の学園祭」を楽しんだ。

午後1時ごろ 女子トイレ前 陣痛間隔は約10分

「また来た・・・ごめん、休ませて」
「だんだん間隔短くなってるよ? 本当に救急車呼ばなくて良いの?」
「大丈夫、大丈夫・・・って、あれ?」
運が良いのか悪いのか、涼子はちょうどトイレの前で破水した。
破水といっても、ドバッと出るわけでもなく、お漏らし感覚だ。



投稿日 : 2010 11/08 12:47 投稿者 : PARIS

「うっ、ぐぅぅ・・・っ!」
やっと実感が湧いてきたか、それとも本当に強まってきたか、
今まで肝っ玉の据わっている涼子は、壁にもたれて苦しい息を繰り返した。
痛みを逃すのも、だんだん難しくなってきたそうだ。
この時だった。
文ちゃんから連絡を受けた拓海は、現場にたどり着いた。



投稿日 : 2010 11/09 00:00 投稿者 : 無明

「蔵真、涼子は?」
「ん~、よくわからないけど、破水したっぽいかも?救急車とっとと読んだほうがいいと思うよ?」
慌てて駆けつけた拓海は、文から様子を聞くと大急ぎで救急に電話をかけた。
「事故、じゃなくて救急です、あ、はい、えっと、○○高校です。はい、わかりました。はい。」
緊迫した状況だが、いつになく慌てる拓海の様子に吹き出しそうになる文。
だがトイレの奥から聴こえるうめき声で再び表情を引き締める。
「とにかく、ここから涼子を連れださなきゃ。」



投稿日 : 2010 11/09 11:04 投稿者 : 致良

午後1時半ごろ 女子トイレ内 陣痛間隔5分

「はぁ、はぁ、もう少し、我慢してね、救急車、もうすぐ、来るから」
小刻みに呼吸と言葉を繰り返し、涼子は必死にお腹をなだめた。
赤ちゃんが降りてきている。そう子宮口が教えてくれた。
お腹が痛い、お腹が痛い、お腹が痛い、痛い、痛い、痛い。
「う、っあ、はぁぐんっーー!」
ドクンっと涼子の体を反らさせ、次の収縮もまた羊水を絞り出した。



投稿日 : 2010 11/11 22:23 投稿者 : 無明

「痛い!!!!」
女子トイレゆえ中に入れない拓海は、時たま聞こえてくる悲鳴もあって全く落ち着きがなかった。
さっきからなんども時計を気にするわ、そこら中を歩きまわるわ、まるでドラマの1シーンのようだ。
数分すると、校門の方からサイレン音が聞こえてきた。
やっと救急車が到着したようだ。
文は、すぐさま救急車の方に向かった。



投稿日 : 2010 11/13 01:54 投稿者 : 致良

午後2時ごろ 救急車の中

「また来た、あっ、たっ、拓海ぃぃぃーーー!!」
「俺ならここにいる!ここにいるから!」
痛くて激しくもがく涼子。
その涼子の手を握る拓海。
「やれやれ、初めての産婦はみんなこうだから困るわ」
「・・・ごめん、救急車呼んだのは私です・・・」
なんとなく付いてきたけど、二人の中に入り辛い文ちゃんは
ひたすら救急車に乗っている緊急出勤のナースさんに謝った。
「とりあえず、陣痛室でしばらく頑張ってくださいね~」
涼子の陣痛はそれなりに強くなってきてるけれど、
肝心の子宮口はまだまだ開いきっていないようだ。



投稿日 : 2010 11/15 10:17 投稿者 : まきお

ドカーン。
突然、救急車は追突事故に巻き込まれた。
車体が大きく吹き飛ばされ、道端の電柱に激突。
奇跡的に全員軽症だが、みんな少なからず怪我を負った。
次の救急車が来る前に、涼子の出産はこのまま
破損した車内で進まされる形となった。



投稿日 : 2010 11/15 13:44 投稿者 : 無明

むろん、その程度の軽い事故で動かなくなるはずはなく、なんとか病院にたどり着く救急車。
涼子はすぐに陣痛室にはこばれた。



投稿日 : 2010 11/16 07:48 投稿者 : 致良

午後3時ごろ 陣痛室の一角 間隔5分

「まだ7センチぐらいですね、全開までもう少しかかりそうです」
そう告げて、内診して来たナースさんは他の産婦の所へ行った。
「そんなぁ・・・」
体力温存をほとんどしていない涼子は、すでにへばっていた。
本当の地獄は、ここからなのである。



投稿日 : 2010 11/16 18:33 投稿者 : 無明

午後4時半 陣痛室

「痛い~……うぅ~~~……ふぅー……」
すっかり疲れきった涼子は、陣痛室で拓海や母、そしてホイホイついてきてしまった文ちゃんの見守る中、なんとか陣痛に耐えていた。
そして、やっと、ついに。
待ちに待った時が来たのだ。
「んー。そろそろですね。分娩室にいきましょうか?」



投稿日 : 2010 11/17 09:16 投稿者 : 致良

午後4時44分 分娩室への道のりにで

「ひっ!?」
拓海に支えられて一歩また一歩と緩く廊下を歩む涼子は、
突然攣ったような声を発し、目を見開いてうずくまった。
今までとは違い、ドバッと羊水が湧き水のように噴出する。
分娩室に入る前なのに、なんと既に発露が始まったのだ――



投稿日 : 2010 11/17 15:29 投稿者 : マツリ

「もう発露してますね。動けますか?」
看護師さんが聞くがもう歩けそうにないため、涼子は首を振った。
「しょうがないのでここで産みましょう。」
看護師さんは蹲った涼子を和式で用を足すような格好で足を開かせ、赤ん坊が落ちないように支えている。
「もういきんでもいいですよ。」



投稿日 : 2010 11/17 15:53 投稿者 : 致良

『もういきんでいい』
この一言をどれだけ待ったのか。

「い、いい、いぃんんんーーーーー」
涼子は全身の力を振り絞って、お腹に力を入れて腰を沈ませた。



投稿日 : 2010 11/17 15:59 投稿者 : マツリ

「その調子ですよ!」
赤ん坊の頭とともに滴り落ちる羊水が水溜まりになり、
足元を濡らしていくが今の涼子には早く出したいと言うことしか頭になかった。



投稿日 : 2010 11/17 16:35 投稿者 : 無明

「もう一回!もうちょっとですよ!」
看護師さんの指示に従っていきむ。
すると、何かが挟まった。
「頭が出ましたよ!!もう少し!」
その言葉を聴き、涼子は恐る恐る手を伸ばした。



投稿日 : 2010 11/17 17:29 投稿者 : ゆうり

「か、髪の毛・・・。」
涼子は驚いているみたいだ。



投稿日 : 2010 11/17 18:30 投稿者 : 無明

「もうすぐ……なんですか……?」
「そう!だからあと一息!頑張って!!」
「は、はぃいいいいいいいいいっ!!」
答えるやいなや、涼子は力を振り絞っていきむ。
やがて肩が抜け始め、腕が抜け、そして―――



投稿日 : 2010 11/18 08:13 投稿者 : 致良

「産まれた!」
午後5時5分、早産ながらも確かな重みをもって、
涼子の赤ちゃんはへその緒を引いて母体から分離した。
「泣いて無い?」
なぜか産声を上げていない。すぐに医者が処置した。
「・・・おぎゃ・・・」
かなり微弱だったが、赤ちゃんの命は保ったようだ。
学校のトイレじゃなく病院で良かったと、涼子は思った。

こうして、涼子の初めでの出産が終わった。
この後はどうなっていたのか、それはここで書くべきものではないようだ。
――とある母親の育児記録(仮)に続く?



前編:とある母親の妊娠記録(プレママカルテ)         


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