海賊

投稿日 : 2009/03/03 18:03 投稿者 : ルート

俺はラト。17才。
そして今俺がいるのは、海のド真ん中!
小さい時から親父を見て育って、俺もいつかなりたいと思っていた船乗り。
想像していたよりずっと地道で大変だけど、毎日新鮮でなってよかったって思ってる。
「おーい、ラト!! このタル、物置に突っこんどけぇ!」
「あ、はいっ!」
楽しいのは楽しいけど、下っ端の俺はまだまだ雑用ばっか。
「っわ…重…」
タルは意外に重くて、かなりキツかった。
「はぁ…やっとついたぁ…」
しかも物置もそこから離れていて、マジでキツかった。
<ガタタッ>

そのとき、あまり入ったことのない奥のほうから物音がした。
「誰ですか…?」
見ようとしても、真っ暗で全然見えない
…しゃーねぇなぁ…
俺は懐中電灯を片手に、奥へと進んだ
…………ん…?
今なんかいた?
ボロ布の山の所になんかいた…?
俺は恐る恐る懐中電灯を戻していく。
そこにいたのは、海賊の少女だった。



投稿日 : 2009/03/03 18:03 投稿者 : ルート

「見るなッ!!
ア、アタシを見るな!」
「え、…え?」
ヤバい、俺、動揺しすぎ。
だって海賊がいて…女の子で…足、怪我してて…

腹が…デカい…!?
「見んなっつってんだろ!?」
ゴフッ……
蹴りがストライクで腹にきた。
「ちょっと、落ち着いて…
俺別にまだアンタが悪いとかなんも言ってねぇし」
「アタシは海賊だ! 船の金品盗んで暮らしてんだ! 悪いにきまってんだろ? 好きにしろよ…」
「でもアンタは好きでこんなことしてるんじゃないんだろ?なんか理由があるんじゃないか?」
…………
ヤバい……?
なんか言ったっけ……?
「ぅう…っぅ…」
えぇえ! 泣く!?
どうしよ、俺、地雷踏んじゃった系?
うっわ、どうすれば…
「そうだ、アタシ…こんなこと…したくないんだ。
 こんな…こんな腹に、なってなかったら…ア、アタシ…もう、独りで死んでたよ…」
「そん…」
「でも…! でも…こんな…こ、ここには…アタシだけじゃ…ないから…見殺しにはできないんだ…」
「………」
「…早く…好きしろよ…」
…ど、どうしよう……
明らかにおやっさんに報告しないと、俺はクビだ。
だけど、あんな話聞いたら…

俺は次の瞬間、彼女を抱き抱えて物置のもっと奥へと進んだ。



投稿日 : 2009/03/03 18:24 投稿者 : ルート

「ちょッ、アタシを警察に連れてくんじゃないのッ?!」
「大丈夫。そんなことしないし、海のド真ん中に警察署も牢屋もねえよ。まぁ牢屋みたいなところなんだけど…」
「……?」
そして俺は壁をつたって、暗闇の中をどんどん進んでいった。
彼女はもう黙って俺にしがみついていた。
なんだ、けっこうかわいいじゃん。
「はい、到着~!」
手探りでランタンをつけた。
「…ここ…何?」
「何って…物置の奥の奥」
多分この船の中で、俺が1番この物置に詳しいと思う。
ここはこの船の上で、唯一俺だけの場所。
部屋は共同で、でもどうしても一人になりたいと思っていたら、仕事中に偶然見つけた場所。
別名…物置迷宮。それぐらいここは迷う。
「ここなら静かにしてれば見つかんないし、食べ物とか毛布とかは俺がどっかからパクッてくるし…どう?」
「…どう?…ったって…アタシは…」
「そんな腹で船に忍びこんだりするのは危ないし、盗みも俺的にはそんなに賛成じゃないし。な?いいだろ?はい、決定!」
「な…」
「だってそっちに拒否権はないだろ…?」
意地悪く笑ってみると、彼女はバツが悪そうに、薄汚い袋の上に座った。
「名前は?」
「アタシは…リリ」
「よっしゃ、リリ。じゃあさっそくなんか持ってくる。いろいろ。もう無理すんなよな!」
そういって俺はランタンの灯りを弱めて、外へと向かった。



投稿日 : 2009/03/05 18:50 投稿者 : ルート

それから一週間ほど。俺はバリバリ仕事をした。
朝一で起きて、リリに食べ物を届けて、仕事をする。っていうループができていた。
そして今、朝4:25。真っ暗な物置の中を移動中。
はじめはそっけなかったリリも、本当にちょっとずつだけど打ち解けてきてて、例えたら…頑固な猫をてなづけてる感じ。リリ猫顔だし。
「リリ、リリー!!」
小声で呼ぶ。

…あれ…?
いつもなら何?って冷たく帰ってくるのに…
「リリ…?」
「ん…何?」
「なんだよ、脅かすなよな~。いないかと思っ…」
「………なんなの…?」
いや、ほら、うん…
リリ、腹おさえて、そんな縮こまって…
「もしかしなくても……腹痛系?」
「…………うん」
「え、っと…産まれる…感じ?」
「………さぁ」
………ダメだ。
会話のキャッチボールが成立しなくて状況が理解できねぇッ!!
「あ…」
「何!?」
「治ったっぽい…かも。…うん、治った。ゴメン、ゴメン」
なんだよ…一瞬マジ焦ったぁ…
「じゃあ俺行くな。また夜来るから」
「うん…じゃあね」


「おぅ、ラト。最近早いなぁ」
「あ、はい、ありがとうございます!」
物置から出てきてすぐに話しかけられると、めちゃくちゃドキっとする…
「んじゃまぁ、今日も頑張れ!」
「は、はい!」
でもまぁ、人使いと言葉使いは悪いけど、おやっさんはいい人なんだよなぁ…
それからこの日、俺はリリのことがずっと気になっていた。
後々考えたら、すぐ治ったっつったって妊婦が腹痛ってヤバいんじゃ…とか。
やっと物置に行く時間になると、俺は走っていた。
嫌な予感がして仕方ない。
「リリ!!」
「ーーッ?」
やっぱり……
「やっぱ腹痛いんだろ? いつからだ?」
「ラトが出てってから…何回も治ったり、痛くなったり…する」
ちょっと待てよ、すっごい昔、聞いたことある…かも。
たしかその痛み方って…何ていうのか覚えてないけど…
…う、産まれる…合図…じゃなかったか?
「え、と……なんかされたのは…いつ?」
「じゅ…11ヶ月…前だと…思うーーッ!!」
「わ、分かった、もう喋んな」
「ん……」
11ヶ月……11?
10が正しいんじゃなかったか?
え、じゃあこれは…えと…


ヤバい……系…?



投稿日 : 2009/03/10 23:15 投稿者 : ルート

でも…産まれるってことは、モチ…
俺が手伝う訳だろ?
で、産まれてくる所、が……!!!
…ッヤベェ!
考えただけで鼻血ふくし!
そりゃ、まぁ、俺も年頃だし?
ヤったかヤってないかっつったら…アレだけど。
そんなじっくりソコ見たことなんかねぇし!
しかもヤるとかの次元じゃねぇし!!
………………
………………
ここはいっちょ、腹くくって紳士的に…
「産むのは、まあ、アソコからだし?
俺も手伝う訳だからとりあえずその短パンを…」
全部言い終える前に、リリの蹴りが俺の発動ギリギリの息子にストライクした。
「っざけんな!!」
「す…いません…」
それから、リリは治ったり痛くなったりをまた繰り返した。
何時間も俺はうっつらうっつらしながら、ずっとリリの背中をさすっていた。
朝方になって、そろそろ出ないといけない時間。
「おい、大丈夫かよ…。俺やっぱここに…」
「ダメ…バレたら……ヤバいし…。大丈夫…そこまで…ヤワでもない…から…!」
それでも昨日よりは確実にキツそうだ。
だけど変にバレてリリが見つかることを考えると、行かない訳にはいかない。
「じゃあ…ちょくちょく来るから!」
俺はそう言って物置を出た。
不安で不安で、たまらなかった。



投稿日 : 2009/03/12 20:09 投稿者 : ルート

俺はその数分後、書庫にいた。
起きる時間ったって最近は早起きしまくってたからちょっとくらい…な。
勿論、探してるのは「出産」に関する本。
1時間かけて(俺的にむちゃくちゃ)頑張ったけど、見つかったのは2冊だけだった。
しかも、1冊は載っているのがほんの2、3ページ。
もう1冊は、クジラの本。
…まぁ、船の上の書庫なんだから、仕方ないだろ。
とりあえずこの2冊を部屋に隠し、出来るだけ今日の仕事は早く終わらせた。
早く…早くリリん所に……
「リリ、大丈夫かっ? 本持ってきたぞ!」
「ん…ぁッ…。……ラトぉ…?」
ヤバい、ヤバい、マジ。
え…と、何ページだっけ…
………そう、コレ!
「…っと、リリ…。多分俺には見せてくれねぇから自分でやってほしいんだけど…
 アソコ…の、穴? の、サイズ…計ってくんね?」
「ぅ…ん…」
お、素直にいうこと聞いた…
感激……とか言ってる場合じゃねぇな。
「ご、5cm…くらい? ってか…出したい、ん…だけど…ッぅ」
「あ、えっとな、それは確か…。…コレコレ。
 なんか、10cmになるまで…何?…いきむ? それをしたらダメだって…」
「なんで…?」
「さぁ…。まぁとにかくさ、俺、明日仕事サボるし。ちゃんと出産、手伝う。フザけてねぇよ」
「…分かった」
俺にできる事なら…




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