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一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)

投稿日 : 2009/08/08 21:58 投稿者 : HUG

人類の誰もが憧れる「若返り」。 先人達の何人もがそれの研究に日夜を費やし、老い、死んでいった。
しかし今日、日本の「マツオプロジェクトチーム」が、とうとう「若返りの薬」を開発してしまった。
極秘で行われていた研究だが、一人、また一人とその事実は伝わり、いわゆる裏の世界の人間は、皆それを知り、そして狙っているーー



投稿日 : 2009 08/08 22:57 投稿者 : HUG

「はぁ…ダルい…まったく…やっぱ妊娠っていい事ないじゃん…」
平日の昼下がり、16歳の女子高生が、ソファに寝転がってお腹をさすりながらテレビを見ていた。
吉野彩、休学中の、妊娠8ヶ月。
妊娠に気づいた時にはもう病院では堕ろせないと言われ、ある薬を注文し、それが来るのを待っていた。
時代は進み、今や、妊娠9ヶ月までなら薬で子供を堕ろせるようになっていた。
普通に病院で堕胎手術するよりは高いが、副作用もなく飲みやすい、とよく売れていた。
彩が寝返りをうったとき、ピンポーンと部屋に明るい音が響いた。
「え、もう来たの?!」
ソファから飛び起き、早足で玄関へと向かう。
「はい、待ってましたー!」
笑顔で答えた彩の顔が、瞬時に固まった。
「松尾様のお宅ですか?」
立っていたのは、黒いスーツにサングラス、手には小さな箱を持った、見るからに怪しい男だった。
「あ、いえ…あの…松尾は…いとこです。」
「…いとこ…なるほど、そういう事ですね。
あ、これが「例の薬」です。どうぞ。」
「…はぁ」
男はそう言い、彩に持っていた小箱を渡した。
そしてさっと礼をし、高級そうな真っ黒な車に乗って行ってしまった。
彩は戸惑ったが、すぐに答えを見つけた。
(薬、薬…そうか! 修ちゃんが取りよせてくれたのかも!)
松尾修平、彩のいとこで、薬剤師兼薬の研究者。
研究の方は、叔父である教授の助手をしている。と、彩は聞いていた。
彩は鼻歌を口ずさみながら箱を開けた。
スポンジに厳重に守られ小さな袋に入っていたのは青と白のカプセル。
よく見ると、袋にはC-7と手書きの文字が書いてあった。
彩はそれを見たがまったく気にせず、袋を破き、薬を手にとった。
「赤ちゃん、あたしに本命ができたら、また来てよね」
最後にお腹を2、3度撫で、カプセルを飲みこんだ。
「…なんか…熱…」
すると突然、彩の体中が燃えるように熱を帯び出した。
(副作用…あるじゃん…)
最後にそんな事を頭に浮かべ、彩は気を失った。



投稿日 : 2009 08/12 17:58 投稿者 : HUG

「…ってて…」
どれくらい寝ていたのだろうか、体中が変に痛む。
「えっと…お腹はどれぐらい縮んだ……あれ?」
腹部に手を持っていく。
触れているのは、いつもと変わらない大きなお腹。
もしかすると、いつもよりも大きいような感じもする。
「何コレ…薬、全然きいてないじゃん!」
ぱっと、たまたま、近くにあった全身鏡に自分が写る。
「ッ!!!」
彩の口から、声にならない悲鳴があがった。
まるで子供が大人の服を着たように、着ていたワンピースがぶかぶかになっている。
背丈も2、30cmは縮んでしまっている。
「あ、あたし…小さくなった…の?」
自分の体を舐めまわすように見つめ、呟いた。
しかし唯一、その腹部は以前と同じ大きさを保ち、彩の体が縮んだ事でより大きく見えた。
彩が呆然と立ち尽くしていると、ガチャっとドアの開く音と共に、「勝手におじゃましまーす」と叫ぶ声が聞こえた。
声色からして、焦っているか急いでいるように感じる。
ドンドン走る音を響かせ、最後にリビングのドアを開けその人物は彩の前に現れた。
そして彩を見た瞬間、「あちゃー」と声をもらし、片手で顔を覆った。
茶色く痛んだ髪に、少し強面だが悪くはなく、むしろ良い方の整った顔。
黒いTシャツとジーンズに、白衣をだらしなく羽織っている。
「修…ちゃん」
修平は、一度大きく深呼吸をしてから口を開いた。
「若返りの薬…ってったら分かる?」
彩は頷いた。
「実は俺と教授達で、それの研究をしてたんだよ」
彩は何も言わなかった。
修平は続けた。
「それでまぁ、こないだ試作品ができて、動物実験も成功したんだ。
極秘だったんだけど、世の中の悪いやつらはそれをすぐ嗅ぎつけてきて、盗もうとしたんだ。盗まれなかったけど。
んでひとまず一人一つ薬を持って、それぞれの家に隠す事になってな。でもほら、俺って家ないじゃん?
それでお前ん家に送らせてもらったわけよ。」
いっきにいろいろ聞かされ、彩の頭の中はパニックしていた。
しかしとりあえず分かったフリをして、頷いていた。
「それで事情も事情で説明できないし、玄関で待ち伏せしようとしてたんだけど、来る途中に小泉の車とすれ違って…」
小泉とは、さっきのサングラス男だろう、と、それは彩にも理解できた。
「それで俺も一応薬の業者のヒトだし、お前が薬頼んでたのも知ってたわけよ。」
彩は、今更ながら顔が赤くなるのが分かった。
「それで間違えて飲んでるかも、と思って、急いだんだ。そしたら…」
修平は彩の体を下から上へと一度見てから、「もう遅かったな」と、答えた。
彩は知らなかったからとはいえ、少し申し訳なくなった。
そして次に、縮んだことに対してものすごい不安が胸に溢れた。




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