戦場

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)

投稿日 : 2007/02/04 21:09 投稿者 : 河童

ここはとある戦場。戦線は膠着状態に陥り、もう何ヶ月も両軍の睨み合いが続いていた。
「兵士達の様子はどうだ?副官」
「はい、隊長。緊張状態が長いこと続いて、特に下級兵士を中心に士気が低下しています。特に問題なのが睡眠不足、食欲不振、それと・・・」
「何だ?言ってみろ」
「はい、実はこれが一番の問題なのですが、兵士達は皆、性的欲求不満に陥っております」
「う~む、こればかりはどうしようもないなぁ・・・」
その時、その会話を傍らで聞いていた若い女性士官がこう言った。
「あの、もしよろしければ私が・・・」
「何だって?」
「ですから、私が兵士達の性欲の処理を・・・」
「バカを言うんじゃない。そんな許可が出せるか。だいたい、何千人もの兵士達の相手を君一人で・・・」
副官は反対した。その女性士官は彼の部下でもあった。
「私から他の女性士官や女性兵士達に呼びかけてみます。この戦況を打開出来るとあれば、皆喜んで協力してくれるでしょう」
「・・・うむ、考慮に値する考えと思う」
「隊長、正気ですか!?」



投稿日 : 2007/02/04 21:11 投稿者 : 河童

かくして戦線には『特設慰安所』が設置され、兵士達が長蛇の列を作った。
女性達は一日で一人当たり数十人の相手をせねばならなかったが、皆文句一つ言わずに励み、兵士達の間には日に日に活気が戻っていった。



投稿日 : 2007/02/04 21:18 投稿者 : 河童

ある夜の事、一人の兵士が隊長の元にやって来た。彼はなんと敵兵を連れていた。
「君が捕まえたのか?」
「いえ、隊長。彼は投降して来たんですよ。女性が恋しいと言ってね」
「コチラ オンナ イル キイタ」
「そういう事か。では彼を特設慰安所へ御案内しろ」
「しかし敵ですよ」
「事が済んだらそいつを一旦敵陣に返すんだ。そうすれば今度は仲間を沢山連れてくる」
「なるほど!」
この作戦は大成功で、敵兵は次々に降ってきた。
もっとも、彼らが女性にありつける事は無く、後方へ送られて強制労働を強いられるのであった。
「ダマサレタ!オンナ イナイ!」
「オマエラ ウソ ツイタ!」
「黙れ!色欲に負けたお前達が悪いんだ」



投稿日 : 2007/02/04 22:50 投稿者 : 河童

ある時、提案者である女性士官の部屋に、一人の青年士官がやって来て言った。
「君とは士官学校で首席の座を争った仲だったが、君がこんな真似をするとはね・・・」
「『こんな真似』とは聞き捨てならないわね?私は軍人として、
 この状況下で自分が最も役に立てる形で貢献しているつもりだけど?」
「軍人として・・・か」
「何が言いたいの?」
「僕はこの慰安所の存在に疑問をもってるんだよ。ちなみに副官もあまりよくは思っていないようだ。
 君達はこれでいいのかい?」
「あなた、私達の事を心配してくれてるの?」
「隊長がどういう考えかは知らないけどね。僕は軍人として・・・
 いや、その前に一人の人として、女性が物の様に扱われているこの状況が嫌だ」
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。『物の様に扱われてる』なんてあなたの思い過ごしよ。
 あの子達とっても優しいの」
女性士官は兵士達の方を見て言った。
「『あの子達』って・・・。いや、僕が言いたいのはそういう問題じゃなくてだな・・・」
「ひょっとして、あなたも欲求不満なんじゃないの?」
「何を言う。僕は・・・」
「いいから、いいから。たっぷりサービスしてあげるわよ」
「・・・・・・」
もう彼女には何を言っても無駄だな・・・と思いつつ、彼女の為すがままに任せる青年士官であった。



投稿日 : 2007/02/05 00:28 投稿者 : 河童

そんな事もあって、特設慰安所が開設されてから数ヶ月が過ぎた頃。
「敵陣の状況はどうなっている?」
「はい。脱走者が相次ぎ、士気の低下は著しく、軍紀は乱れに乱れています」
「ついにその時が来たようだな・・・」
「すると・・・隊長」
「敵陣に総攻撃をかける。全軍、突撃だ!」
号令一下、兵士達は果敢に敵陣に突入し、鬼神の如く奮戦した。一方、不意打ちを喰らった敵軍は、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
大勝利を収めた彼らは、国境を越えて敵国の領内へ進撃していった。



投稿日 : 2007/02/05 00:29 投稿者 : 河童

青年士官は戦功を挙げ、昇進した。彼は戦闘となるといつも命も惜しまずに先頭に立って突撃して行くのであった。
彼は半ばヤケクソになっていた。なぜなのかは彼自身分からなかった。
「昇進したそうね、おめでとう。あなた、いつも真っ先に突っ込んで行くものね。怖くないの?」
「君には関係無いだろう」
「それがね、あるのよ」
「・・・?」
「実はね、子供が出来たの。軍医に診てもらったんだけど、3ヶ月だそうよ」
「そりゃそうだよな。ほぼ毎日、とっかえひっかえ男とやってれば当然だよ。どうするんだ?どうせ父親は判らないんだろ」
「それがね、どうもあなたが父親らしいのよ」
「えっ?何でそんな事が・・・」
「だって私、あなたとした時だけは避妊してなかったんだもの。ちょうど三ヶ月前よね、あなたが私の部屋を訪ねて来たのは。
 ほんとはあの日は危なかったんだけど・・・」
「・・・・・・」
「・・・で、父親であるあなたにも一応報告に来たのよ。どうする?この子。私は生んでもいいと思ってるんだけど・・・」
「・・・どうして妊娠の可能性があると分かっていて僕と・・・?」
「分からない?」
「あぁ・・・」
「鈍いのね」
「それは君に言われたくはないな」
「どうして?」
「・・・いや、いい。とりあえず、少し考える時間をくれないかな?突然の事で僕も混乱してるんだよ」
「わかったわ」



投稿日 : 2007/02/05 00:31 投稿者 : 河童

女性士官が部屋を出て行った後、彼はしばらく思い悩んでいた様子だったが、やがてある考えに思い至った。
そうだ。僕は彼女が好きだったんだ。士官学校時代からずっと・・・。
慰安所の存在に疑問があるような事を言っていたが、それは個人的に彼女が他の男に抱かれるのが許せなかったから。
だから戦いに没頭する事でそれを忘れようとしていたんだ。だが、彼女は僕の子を孕み、しかも生んでもいいと言ってくれた。
僕を受け入れてくれたのだ。よし、そうと分かれば僕からもこの気持ちを伝えようじゃないか。



投稿日 : 2007/02/05 00:31 投稿者 : 河童

・・・しかし、それから二人がゆっくり会う機会は無かった。
敵軍は敗残兵を再び終結させ、体制を整えると反撃を開始。
単独で敵国の奥深くまで進撃していた彼らの部隊は、補給線を絶たれ、孤立。
物資・弾薬は欠乏し、今度は彼らが逃げる番になってしまった。
何とか国境付近の古城を改造した要塞に逃げ込んだものの、敵に包囲され、篭城戦となった。
この頃になると彼女のお腹は、もう誰が見ても妊娠していると分かる程に膨らんでいた。



投稿日 : 2007/04/02 00:05 投稿者 : 河童

篭城7ヶ月目。要塞を包囲した敵軍は連日に渡って砲撃を加え、部隊は既に半数近くの兵力を失っていた。
彼女のお腹の子供は、もういつ産まれてもおかしくない状況である。
女性士官の中には彼女の他にも妊娠している者は大勢いたが、中には流産してしまう者もいた。
ある月の無い暗い夜、包囲網をかい潜って一人の味方の兵士が要塞にやって来た。
「皆さんを救うための援軍がすぐそこまで来ています。
 明日の夜、この要塞を包囲している敵軍に総攻撃をかけますから、それを合図に打って出てください」
隊長が言った。
「それは有り難い!・・・で、包囲軍のどこに攻撃を仕掛けるんだね?」
「一番守りが薄い北側です。ですから皆さんは北門から打って出て、援軍と共に敵を挟み撃ちにします。
 北側の敵を倒したら、後はもう脇目も振らず一目散に走って戦線を離脱してください。
 恐らく国境を越えれば敵はもう追って来ないでしょうから、何とか頑張ってください」
「了解した。ここから国境までは数キロだ。無理な事はない」
これを聞いた副官が言った。
「しかし隊長、我が軍の中には少なくとも十数人の妊婦がいるのですよ。彼女達は走れないでしょう・・・?」
「その時はその時で考えれば良い」
(まさか・・・この人は彼女達を見捨てるつもりなのか・・・?)
副官は嫌な予感がした。



投稿日 : 2007/04/03 19:34 投稿者 : 河童

隊長は青年士官を呼び、作戦の概要を説明して言った。
「・・・という訳で君は一個小隊を率いて北門から打って出てもらいたいのだ。非常に危険な任務だがよろしく頼む」
「はぁ・・・」
青年士官は気が進まなかった。自分は一児の父なのだ。出来ればもう無茶はしたくない。
しかし、軍人たるもの命令を受けたからには絶対服従。わがままは許されないのだ。
各々が個人的な理由から命令拒否したら、軍隊は成り立たなくなる。
「・・・分かりました。明晩、味方の攻撃を合図に突撃します」
そう言うしかなかった。



投稿日 : 2007/04/04 00:27 投稿者 : 河童

翌日、城内の将兵全員にこの作戦が伝えられた。青年士官は久しぶりに女性士官のもとを訪れた。
「来てくれたの?」
「あぁ、君に会うのはこれで最後になるかもしれないからね」
「そんな事を言わないで、二人で生きて国に帰りましょう?」
「いや、そう言いたいところだが無理だ。僕は今夜の作戦で先陣を任された。恐らく生きては戻れないだろう。
 赤ん坊の顔が見られないのは残念だが、君だけでも無事に国に帰って子供を産んでくれ。それが僕の望みだ」
「・・・そう、わかったわ。私も軍人です。手足を失ってでも必ず国に帰ってこの子を無事、産んで見せる」
彼女は大きくなったお腹を撫でながら言った。
「そして毎晩子供に語って聞かせるわ。あなたのお父さんはとても勇敢で、少し鈍い所があるけど優しい人だったってね・・・」
「そいつは厳しいな。どうぞお手やわらかに・・・」
そう言って二人は笑い合った。内心では胸が張り裂けるような思いなのだが・・・。



投稿日 : 2007/04/04 01:24 投稿者 : 河童

その夜、将兵達は要塞の北門の前で突撃の時を今か今かと待っていた。
異様なまでの静けさの中、突如爆発音が響いた。味方の援軍が敵の包囲陣を砲撃したのだろう。
それを合図にガラガラと音を立てて重い城門が開かれた。青年士官は剣を抜いて振りかざし、叫んだ。
「突撃ー!」
「おぉー!!」
青年士官を先頭に、一隊は敵陣めがけてまっしぐらにかけて行った。



投稿日 : 2007/04/04 01:25 投稿者 : 河童

青年士官率いる一隊は敵の砲火をかいくぐり、敵陣に到達した。敵兵は戦う事も無く逃走した。兵士たちは大喜び。
しかし、青年士官は何とも言えない不気味な感覚を感じていた。
(おかしい・・・。敵の抵抗が少なすぎる)
さらに気になった事は、味方の援軍の姿が何処にも見えない事であった。
「もしや・・・これは・・・」
これは我々を要塞からおびき出す作戦だったのではなかろうか?
先陣が突撃してきたら分散してやり過ごし、その後で再び集結して本陣がのこのこ出てきたところを一気に・・・。
だとすれば本隊が危ない。妊婦も大勢いるのだ。彼女達は戦う事が出来ない。
「全員、引き返すぞ!」
兵士達は訳が分からないといった様子だったが、後方から銃撃の音が聞こえてくるのを聞き、ようやく状況を理解した。
そして彼らは反転し、来た道を戻っていった。



投稿日 : 2007/04/04 02:10 投稿者 : 河童

一方、本隊は敵の猛攻撃を受けていた。
「隊長、敵は我軍の倍はいます!」
「隊長、既に兵力の10%を失いました!」
「どういう事だ!北方は手薄なんじゃなかったのか!?」
隊長は昨日やって来た兵士に聞いた。
「まんまと騙されたな?隊長殿」
「何だと!?まさか、お前は・・・」
「そうだ。俺はお前達をおびき出すために送られたスパイだ。援軍など来てはいない」
・・・と彼が言い終わるや否や、隊長はスパイを射殺して言った。
「全軍、ただちに戦場を離脱しろ!援軍は来ない!逃げるんだ!」
「隊長、妊婦達はどうするのですか!?」
と副官。
「妊娠将兵については、自分で生存の道を探す事。以上!」
「あ・・・あんたは彼女達を見捨てるのか!?軍のために身体を開いてくれた彼女達を!!」
「ならばこの場合においても軍のため、足手まといになる妊婦達は一般将兵と行動を共にするべきではない!」
「なら私はあんたとは行かないぞ。妊婦達を守るためにここに残る!」
「勝手にしろ!」
本隊は隊長と逃げていった。そして副官と彼のわずかな手兵と妊婦達だけが戦場の只中に取り残されたのである。



投稿日 : 2007/04/19 12:53 投稿者 : 河童

敵陣から引き返してきた青年士官達は逃走してきた本隊と出会った。
「隊長!意外と早く戦場を抜けられたんですね。敵の猛攻を受けているんじゃないかと心配しましたよ。妊婦達は無事ですか?」
「さあな。副官が付いているが、どうなったかは分からん」
「あ・・・あなたは彼女達を見捨てて来たのか!?」
「うるさい、副官と同じような事を言うな!まさか君も妊婦を助けに行くなどと言うのではあるまいな?」
「当然だ!」
「我々はこれから国境を目指すが、どうだ?一緒に来ないか?
 国に戻ったら軍内で重要なポストにつけてやるぞ?君は優秀な人材だ。ここで死ぬ事は無い」
「バカヤロー!!」
青年士官は隊長を思い切り殴りつけた。そして隊長と共に逃げてきた兵士達に向かって言った。
「我々は戦場に取り残された味方を救出に行く!お前達も今まで散々世話になった女性達だ!
 男ならここで彼女達を見捨てて逃げる事が出来るか!?」
「おぉー!!!」
「そうだ!」
「助けよう!」
多くの兵士達がこれに賛同し、青年士官は彼らを率いて再び戦場を目指したのである。



投稿日 : 2007/04/19 12:58 投稿者 : 河童

副官と妊婦達のいる部隊は依然として戦場の中、敵の猛攻にさらされていた。副官は肩を撃ち抜かれていた。
「もはやこれまでか・・・こうなったら・・・」
彼は妊婦達に向かって言った。
「我々が囮になって敵に突っ込むから、その間に君達は安全な場所まで逃げてくれ!」
「そんな!」
「私達はもう動けません!」
「行かないでください!」
「皆、弱気になっては駄目よ!私達の身体は一人だけの命ではないのよ!」
と言ったのは、あの女性士官だった。副官は痛む肩を押さえながら彼女に言った。
「君が皆を率いてくれ。とりあえずこの戦場を脱出して、その後は山の中に逃げ込むんだ。それから山づたいに国境を目指せ」
「はい」
「武器は使えるな?銃と弾を少しだが渡しておく」
「副官殿、ありがとうございます。私達のために・・・本当に感謝しています」
「気にするな・・・さぁ、諸君。行こう!」
「おぉー!!」
副官はわずかな手兵を引き連れて戦塵の彼方へ消えていった。
「さぁ、私達も行きましょう!」
それに続いて妊婦達も移動を始めた。



投稿日 : 2007/11/25 00:08 投稿者 : 河童

妊婦達は一刻も早く戦場を抜けるべく国境の山を目指した。ふと、目の前の戦塵の中に十数程の人影が見えた・・・。
「敵!?」
「オ・・・オンナ、シカモ ニンプ・・・!?」
彼女達も驚いたが敵も驚いた。戦場のド真中にいきなり妊婦十数人が現れたのだから。一瞬の沈黙の後、激しい銃撃戦が始まった。
「コロスナ!アシ ヲ ネラエ!!」
妊婦達はあっと言う間に征圧され、飢えた敵兵は彼女達に襲い掛かった。
「いや―――!!」
「オトナシクシロ!!」
「お願い、止めて――!!」
「ダマレ!」
女性士官も足を撃たれ、敵の隊長格とおぼしき男に襲われていた。服を脱がされ押し倒される。
「コンナ オオキナ ハラ デ ワレワレ ト タタカオウ ト イウノガ ソモソモ ノ マチガイ!!」
男は自分の息子を取り出し、彼女の膣口にあてがい・・・。
「タップリ カワイガッテ ヤル」
「や・・・止めて!!」
男が彼女に挿入しようとした正にその瞬間、男の頭を銃弾が貫いた。男はゆっくりと倒れる。
「大丈夫か!?」
「助けに来たぞ!!」
声の方を見ると、そこにいたのはあの青年士官、それに先に逃げたはずの本隊だった。




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