一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)
投稿日 : 2008/12/26 14:58 投稿者 : 産太 俺はとある動物産科の助産士、渡部直。 助産士っつっても、まだ見習い。 24で、未婚で、彼女ナシ。 ここの病院に入ってから、やっと半年が経った。 しかもここの病院はすぐそこに動物園や水族館やペットショップ、更には牧場まで。 そんな施設がいろいろあるので、出張サービスもよくあることだ。 なんだかんだ大変だけど、動物好きだし、今の仕事は気にいっている。 「おーい、渡部!初仕事やで! 広田牧場の牛が産気づいたらしい 双子やから来てくれやって! 行くでー!!」 え…マジ!? 「あ、はい!」 や、やった!初仕事! ちなみに今呼ばれたのは、上司の神田さん。 っていっても、院内じゃほとんどの人が俺の上司。 っていっても、働いてるのは6人だけだけど… 関西弁で普段は面白いけど、仕事になると真面目になるいい人。 唯一の後輩は…… 「渡部さん、今日はよろしくお願いしますね!」 この子、小野澪。まだ20。 こないだ来たばっかりなのに、もう助産できるなんて… 状況からして分かる通り、めちゃくちゃ優秀。 それで…ちょっと…気になってる…みたいな? 「渡部ー! 何してんのや? 置いてくで!」 「あ、すいません、今行きます!!」 今日のメンバーは、今説明した2人と俺の3人。 ドキドキする…! 小型バスに乗り、すぐそこの牧場に急いだ。 投稿日 : 2008/12/26 15:01 投稿者 : 産太 小型バスにゆられること、5分。 広田牧場、到着。 やっぱり近いなぁ… 「牛の名前はメイ、まだ生後1年弱で妊娠してしてもて、難産が予想されるかもしれへんらしい。 そんで双子。 うーん…お前らにはちょっとハードル高かったか…?」 「いいえ、大丈夫です!」 「私も頑張ります!」 「そやそや、その意気や!」 そうこうしているうちに、牛の所に辿りついた。 「このこがメイちゃん? ホント…まだ大人の大きさにまで育ちきってないですね 神田さん、子宮口の方法はどうですか?」 「おぉ、順調やで あともう一踏ん張りやな 頑張れや、メイちゃん」 神田さんはメイのお腹を撫でた。 それに続いて、小野もメイの頭を撫でた。 でも…え…ぇえ!? 「…あの…えと…神田さん、このこが、メイちゃん…ですよね?」 「はぁ?何言っとんねや? 当たり前やんけ。 そんな場を和ますようなことせんでええからはよ準備せぇや~」 え、いや、だって… 俺が見ているのは藁の上に寝転がった一頭の妊娠したメスウではなく、 藁の上に寝転がって大きな腹をした、頭から小さな角を、そして、牛の耳と尻尾を生やし、牛柄のミニワンピを着た、16、7歳のーー女の子だった。 < う…ぁ…痛…も…出る、で、出るよ、ぉ…ん、ん″ん…ーーー!!> 「神田さん!渡部さん! 急にメイちゃんがいきんで破水しました! まだ全開していません!!」 「んー…じゃあ…しゃーない、保進剤うつわ。 そのあいだ、小野は子宮口広げながら子供引っ張れ。 渡部は腹押すんや。 メイちゃんのいきみに合わせるんやで。 じゃあ俺ちょっと病院戻って保進剤とってくるわ よろしくな~」 え、ちょ、神田さん… 小野は「はい」といい返事をして、子宮口にまわった。 いや、女の子ヤバいだろ。 …いや、ちょっとまて… 小野は明らかに、牛の出産方法をしている。 普通はあんな引っ張んねぇし。 てことは…この「女の子」の姿や声は… …俺にしか見えないし、聞こえないって訳か。 俺はハっとして、牧場をぐるりと見回した。 …あれ?普通だ… あ、でも…すぐそこの広場っぽい所に、お腹が微妙に出たもこもこの服を着た女の人が普通の羊と一緒に寝転がっていた。 んー…つまり… …妊娠した動物だけが人間に見えるってことか? てことは…俺の仕事…天職じゃん! 俺は喜々としてもう一度メイに目をやった。 < ん″…や…嫌ぁッ!! 痛い、痛いぃッ!> 俺は見ていられず、メイの耳元で囁いた。 「無理にいきむから痛いんだ。 もっと痛みの波に合わせて、ゆっくりだ」 < …分かっ…たぁ…ん、ぅうッーー!!> メイがいきみだしたのに合わせて、俺も腹を押した。 「うわぁ、渡部さん、メイちゃんに何したんですか? 急にお産進みましたよ! 「へへっ、秘密~」 ちょうどその時、神田さんが帰ってきた。 「あぁー、なんや? せっかく持ってきたのに、いらんやん!コレ… まぁええわ、小野、手伝うわ!」 「あ、ありがとうございます!」 小野と神田さんは、強く、でも極力痛みが少なくなるように、子供を引っ張っている。 牧場の人は、その周りをオロオロと行き来している。 「おい、渡部、俺と代われ!」 「え、オ、俺っスか!?」 「あ? あぁ あかんのか…?」 「え、い、いえ… はい、分かりました」 いや、ど、どうしよ… 上の方は服着てるから大丈夫だけど、 下は…丸出し…だし? 「何してるんですか?渡部さん こっちです、ここ持ってくた引っ張るんです」 も、行く、行くぞ! 投稿日 :2008/12/28 18:22 投稿者 : 学生 う…わぁ… そこはやっぱり人で、でも出てこようとしている子供は牛で。 興奮と混乱で頭がおかしくなりそうだ。 「渡部!ほら、引っ張れ!」 その声ではっと我に返り、俺は牛の出てきている部分を力いっぱい引っ張った。 <やめて…ぇえッ!!! やン…ぁあッ…裂ける…ぅッ!!!> あ、マジだ… 裂けるか…? しかしギリギリの所で裂けずに、メイの子宮口はいっぱいいっぱいまで開いて、一頭目の子供を吐き出した。 <よかった…アタシ…産めた…赤ちゃ…痛ぅーッ!!> ありゃー…生まれたこのケアをしようと思った瞬間、またすぐにメイの陣痛がきた。 <痛…なんで…アタシ…もう産んだのに…はぁ… 痛い…ん、ぅうんーーッッ!!> 「神田さん! メイちゃん、もう2頭目が出かかってます!」 「おお!じゃあ俺もそっち行くわ! 小野はこの子のケアせえ!」 「「はい!」」 まるで戦場のように忙しい… <んん゛~……ッッッ!!!!! 痛…ふぅ、んんッーーーー!> 一頭目(ゆきと名づけられた)はもうケアが終わり、小野もこっちの手伝いにきていた。 「あとちょっとや! メイちゃんの体力とかも考えて、次のいきみには出すで!」 <き、たぁ…ぁンんッッッーーーーーーー!!!!!> ズポッ!! 二頭目も生まれた。 <赤ちゃん…赤ちゃん… よかった…ありがと…助産士さん…> 「こちらこそ…」 俺はメイの耳元でこそっと囁いた。 するとみるみるうちにメイは人間の姿から牛の姿になっていった。 「お前ら、お疲れさんやったな 二人とも、初めてにしてはなかなかやったで! じゃあ俺ちょっと今から取引あるから行ってくるわ! 残業よろしくなぁ~」 そう言って神田さんは嵐のように去っていった。 「残業…」 神田さん…こんだけ俺ら疲れてんのに… 鬼ですか? 「…じゃあ帰って頑張りますか、渡部さん」 「あ…そうだな! 頑張ろうぜ!」 そうだ、今はもう夜だから、院内で小野と二人っきり… 神田さん、やっぱ最高! 俺は足取り軽く小野と病院へと帰った。 投稿日 : 2008/12/28 18:32 投稿者 : 学生 プルルル… プルルル… 「あ、俺出るよ」 あれから1時間くらい。 院内ではもちろん俺と小野の二人っきり。 結局仕事はそんなにしてなくて、厳しい上司の愚痴や今日の話など、いろんな世間話に花が咲いた。 ーーもちろん、あのことはふせておいたけど。 でも超イイ感じだったのは確かだ。 「はい、○×動物産科です…」 「あ、あの、スイマセン、こんな夜中に…」 「いえ、どうかされましたか?」 「あの…うちのウサギなんですけど…一昨日に陣痛が始まったんですよ それからずっと様子見てるんですけど、痛いのは痛そうなんですが、なかなか子宮口が開かなくて…」 ーー微弱陣痛か… 「はい、ではすぐに来ていただけますか?」 「はい、もちろんです! すぐ行きますね」 ガチャ… 「小野、急患! ヤバい、微弱陣痛のウサギだってさ!」 「ホントですか?! それじゃあとりあえず器具をそろえないと…」 今夜も騒がしそうだ。 投稿日 : 2008/12/28 21:05 投稿者 : 短・短・のわりに長ーい 「すいません… ほんと… …ミルク、頑張るのよ」 < ぅ…い、痛ぁ… ふ…ぅぁ> ミルクは、これまた生後1年足らずだ。 まだ人間でいう14歳ほどだろう。 なんせ、俺が見ているのは14歳くらいのうさ耳をつけた女の子だし。 中にいる子供は、6匹とかなり多め。 俺ら2人で大丈夫なのか…? 「渡部さん、ミルクちゃん入りますね」 「あ、あぁ…」 ここは分娩室。 でも、治療はほとんどしない。 自然の力に任せてーー麻酔も使わない。 ここの医院長が決めたことだから、当然変える気もない。 飼い主には待合室で待つか、帰って家で待ってもらう。 さて、と… 「じゃあとりあえず保進剤うって、様子見よう 飼い主さんに言われた通り、ゆっくりやる」 「はい」 あぁ…なんかちょっといい気分 ちなみに飼い主さんに言われた事とは、どれだけ時間がかかってもいいから、手荒なことはせずに、産ませてやってほしい。だ。 「ミルクちゃん、ちょっとゴメンね…」 小野がミルクのほとんど開いていない子宮口の中に、薬を入れた。 < ん…っぅ> 今入れたのは、院内で一番強力な薬。 これで効いてくれればいいんだけど… …しばらくして薬の効果は出始めた。 < ん…はぁッ…くぅ…ん…ッ!!> 投稿日 : 2009/01/04 11:24 投稿者 : イマジン そして、奥の方から子供の頭が覗きはじめる。 「うーん…、ちょっと保進剤強かったかもですね…」 「まぁ…大丈夫なんじゃない?」 そうだよな、うん。 基本的に小動物はほとんどが安産だから大丈夫だと思うけど…年齢と子供の数が…なぁ。 俺ビジョンのミルクの腹は、もんのすごい膨れていた。 < ぅ…はぁ…んッ はぁッ…ぃ、いいーッ> 腹が固く張り詰め、頭がヒクヒク上下する。 < や…ん…痛っ 切れる…ぅ…ぁンッ はぁ…はぁ…ーーッ!!> 「小野、ガーゼ!ガーゼ!」 「あ、はいっ!」 ズルルッ ふ、ふぅ… 間一髪で、滑り落ちてくる子供を受け止めた。 小野にまだ産声もあげていない子ウサギを任せ、再びミルクに目を落とす。 < い…んん″ぅ…ッッ!! お母さ…痛…よぉ…ぅーッ!!> お母さんねぇ…一緒に暮らしてるのか。 < ぁ、痛ッ…痛ぁ″ッ で、るぅ…ッーーーーー!!!> ズルンッ 「小野ー、また出た! こっちも頼む!」 「はーい」 さっき生まれた子供は、すでに保育器の中で、小さく鳴いている。 さすが… さて、俺もあと4匹頑張らないと。 投稿日 : 2009/01/20 18:14 投稿者 : 露 それから1匹2匹と順調に産まれ、とうとう最後の1匹となった。 「ミルクちゃん、あと1匹だ!頑張れ!」 < うぅ…はぁッ、はぁッ…ーッ ん、んんァッ、あ…痛ッ、痛ぁッ!!> あれ、痛がり方がおかしい…って…逆子じゃん! 俺は急いでその子供を引っ張った。 < ぅあああッ!!!> 「小野!ほら!」 「あ、はい!」 そして寝転がったミルクが微笑んだと同時に、すーっとうさぎに戻っていった。 「よし、飼い主に電話しないと…」 ーーー こうしてミルクとその子供たちは、帰っていった。 それとほぼ入れ違いくらいで、神田さんも入ってきた。 「おい、さっきの人に聞いたで! よぉやったなぁ、徹夜ご苦労さん!」 そういって俺達の肩にポンッと手を置いた。 嬉しくて、顔が緩んでいく… 「よっしゃ、小野は帰ってゆっくり休みぃ また寝てから来たらええから」 …え?…小野は…? 「ほんでいきなりで悪いんやけど、お前は俺と2人で水族館や!」 ええぇぇ~、そんなぁ… 投稿日 : 2009/01/20 18:31 投稿者 : 露 「…え、コレに着替えるんですか…?」 「えぇ、イルカは水中で出産するもので… お願いします」 今回の以来は、「双子を出産するイルカ」だ。 俺ビジョンだと、ワンピースを着た青い髪の足先だけ人魚だ。 つまり、子宮口の下からが人魚ってこと。 そして今四苦八苦しながら着ているものが、イルカのインストラクターなどが着ているウエットスーツだ。 締め付けられるようでいい気はしないが、仕事だから仕方ない。と、深いプールへと飛び込んだ。 「お前かぁ、マリンは。 今日はよろしゅうな!」 神田さんがマリンににこやかに挨拶をする。 しかしマリンは、ふいっと向こうへと行ってしまった。 神田さんはすっかりへコんでいる。 「マ、マリンちゃん、俺、あの、今日マリンちゃんの出産を手伝いにきたんだけど…」 < フン、あんたもどうせあたしを適当に扱って、赤ちゃんだけをちやほやしにきたんでしょ!> 俺はチラッとまだ神田さんがへコんでいることを確認してから言った。 「違うって。 マリンちゃんのお腹には赤ちゃんが2匹いて、出産のリスクが高いから今日は…」 < え…あ、あんたなんで、あたしの言ってること…ーーッ!!> 「それはいいから。ほら、陣痛きた。 内診するから上向いて」 マリンはまだバツが悪そうだけど、言葉の分かる俺には従った。 さて、頑張らないと… 投稿日 : 2009/03/27 19:05 投稿者 : しらす 「どうせ俺はしょぼい中年親父だよ…」 「ちょっとぉ、神田さん… 仕事ですよ!仕事!」 …ダメだ…神田さん、普段ポジティブだけど、1回落ち込んだらとことん落ち込むからなぁ。 もういいや。 「マリンちゃん、えと…痛くない?」 「全っ然」 …んー… 全然って訳じゃないだろうけど、ちょっと俺ら、早く来すぎたかなぁ… 「神田さん、まだマリンちゃん大丈夫みたいなんで、俺ちょっと館内ウロウロしてきますね。 急変したら連絡してください」 そう言って、俺は着替えて館内を散策した。 …はぁー…… やっぱり俺、動物とか好きだわー… そして白クマを見ていたとたん、携帯が鳴った。 「おい、急に変に痛がりだしたで! はよ来い!」 「あ、はい!」 さすが神田さん。 仕事になったら変わるなぁ。 俺は大急ぎでプールへと向かった。 投稿日 : 2009/03/27 19:19 投稿者 : しらす < ぁ、あぅ″……んッ… …あ…さ、っきの…ッッ!!> 「そう、渡部直! ホラ、俺がいてよかった!」 < それより…ッ早く…診てッッ! ヤバ…いぃ> 「あ、うん…」 見るのも、だいぶ慣れてきた…と思う。 ん……いつの間にか8cm! 「神田さん!来てください! だいぶ開いてます!」 「おぉ、じゃあ代わるわ お前は…マリンちゃんと仲ええみたいやから、話でもしとけ」 < ーッぁあ…ぃ、いぃ″ッッ!! なんか…入って来た…ッッ!?> 「大丈夫、神田さんは信頼できるから 心配しないで」 「おい、破水したで!」 「はい、了解です! マリンちゃん、ほら、いきんで!」 < ん、んぅぅ… 駄目…力入んないぃ…> 「力が入る体制でいいよ」 < …じゃあ…ワ、タベ…ちょっと…掴ませてぇ…ーーッんん!!」 「え、ぅわ、ちょっと…」 「おい、渡部!ちょ待てや!」 マリンちゃんは、いきなり俺を掴んで泳ぎ始めた。 もんのすごいスピードで。 てか…神田さんが…… |