二人の産婦

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)


ここはとある山の中腹。二人の妊婦が、ここで出産を迎えるためにバスを降りてから30分程歩いてここまで来ていた。
未婚の母という共通点を持つ二人はこれから強く子供を育てていく決意として、自然の中で二人の力だけで出産することに決めたのだ。
杏奈「あそこの洞窟でいいんじゃない?割と広いみたいだし、小川も近いし。」
早紀「そうね、そう長くはいないんだから、雨風さえ凌げれば…」
この二人はともに臨月だが、早紀のお腹は特にはち切れんばかりに大きくせり出している。





その日の夜。二人は持って来た食料で夕飯を済ませ、シートを敷いて横になっていた。
早紀「んっ...ふぅー...」
杏奈「早紀、どうしたの?大丈夫?」
早紀「うん、なんでもないよ。ちょっとお腹が張っただけ...」
杏奈「早紀のお腹大きいもんね。これで中身は一人なんでしょ?大きい赤ちゃんなんだろうな。」
早紀「そうなの。ちゃんと産めるかしら...」
杏奈「大丈夫!私がついてるからね。ちゃんと勉強してきたんだから。」
早紀「杏奈、頼りにしてるね。私あんまり出産のことわからなくて」
杏奈「任せといて!ちゃんと早紀の赤ちゃん取り上げてあげるから。さ、もう寝よう。いつ陣痛が始まるかわからないんだから、眠れる時に寝とかなくちゃ。」
早紀「そうね、おやすみ」




次の日の朝、杏奈は早紀の唸り声で目を覚ました。
早紀「うーー......ふぅ...ふぅ...」
杏奈「早紀!?大丈夫?お腹痛いの?」
早紀「うん...んっ...うぅ~~...明け方から痛くなってきて...」
杏奈「破水はした?痛みに間隔ある?」
早紀「破水はしてないけど...今三分間隔くらいだと思うの...んんっうぅ~~~」
杏奈「だいぶ進んでるのね。早紀、一人でよくここまで頑張ったね。でもまだいきんじゃダメだよ。赤ちゃんが苦しい思いするんだから。」




早紀「うん...んんっ痛い~~」
杏奈は早紀の腰を強くさすってやる。
杏奈「早紀、頑張って!ちょっと子宮口見せてね」
そう言うと杏奈は早紀の子宮口の開き具合を調べた。
杏奈「今9センチ。もうちょっとだよ、早紀。もう少しでいきめるから...んっ...」
杏奈は少し困ったように自分のお腹をさすった。




早紀「はぁ...はぁ...杏奈、どうしたの?」
杏奈「ううん、なんでもない、ちょっとお腹が張って痛かっただけ...」
早紀「そう...んっうぅ~~~~...あぁぁぁ!!...はぁっ...はぁっ...」
早紀は洞窟の天井からぶら下がっている木のつるにつかまろうと体を起こした。
杏奈「あのつるにつかまるの?さあ、...んっ...うぅっ」
早紀「杏奈?まさかあなたも...んんっ、あぁぁ!!?」
早紀を助け起こそうとして杏奈はまた腹痛に襲われ、早紀は起きた拍子に破水した。
杏奈「ふぅ...ふぅ...私は大丈夫、お腹が張ってるだけよ。それより早紀、破水したよ。よく頑張ったね。次の陣痛で思い切りいきんで。」
早紀「うん...きたぁ...」
杏奈「よし、じゃあいくよ。せーの、うーーん」
早紀「んぐぅ~~~~~」
杏奈「上手よ、その調子!」




早紀は木のつるにつかまっていきみ、杏奈はその前で励ましながらタイミングとって一緒にいきんだ。
杏奈「さぁ、もう一度いきむよ。せーの、うーーん」
早紀「んぐぅ~~~~~~」
バシャッ。早紀が思わず杏奈のほうを見ると、杏奈の足元がビショビショに濡れていた。
杏奈「んん!!うぅ...早紀にあわせていきんでたら破水しちゃった...」
早紀「杏奈!?杏奈の赤ちゃんも生まれるの?んっ...うぅ~~~~~ん」
杏奈「大丈夫...先に破水しただけよ...うぅっ...まだ生まれやしないわ。早紀の赤ちゃんを取り上げてからよ。」
杏奈は早紀を安心させるためにこう言ったが、赤ちゃんがしっかりと産道に降りてきているのを感じた。一緒にいきんでいたから進みが早いのだろう。


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