一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
投稿日 : 2007/09/24(Mon) 19:51 投稿者 : メープル 私はリエコ。タクシー運転手をしています。年齢は28歳。意外と若いタクシー運転手でしょ? 実は色々あってこの仕事をしてるって訳。 (あ、お客さん!) 歩道に手を上げる女性を見つけて車を止める。 (あ、妊婦さん?大きいお腹!今にも生まれそう!) 腹を庇うようにして女性が乗り込む。 「どちらまで?」 「………」 (ん?返事が…?) 「どちらまで行かれますか~?」今度は振り返り、聞いた。 「う゛っ……」 女性は体を丸めて低く呻いていた。 「お、お客さん?大丈夫ですか!!!」 「ちょっ…と…待って…。ふぅ、ふぅ、はぁ…治まった…」 女性はケロッとした表情で言った。 「あ、ごめんなさい!また陣痛来ちゃって。○×助産院までお願い。」 「は、はぁ。」 (え~!陣痛中!?大丈夫なの~?) 私は恐る恐る聞いた。 「あの…その…」 「あ、赤ちゃん?大丈夫、多分間に合うわよ…これでも3人産んでるから!勘よ、勘!」 「は、はぁ。」 (勘て…) 「もう慣れてはいるんだけど、やっぱり陣痛は痛いわ~。あ、来た来た!ふぅ~痛たたた…」 (本当に大丈夫なのかな?) その後も妊婦さんはお喋り、陣痛の繰り返し。 投稿日 : 2007/09/24(Mon) 20:40 投稿者 : メープル あと10分ほどで着きそうになった頃、先の道で事故があったらしく、渋滞し始めた。 (マズいなぁ…歩いた方が早いかもしれないけど無理だし…急いで走れば早めに着けるはず!) 「お客さん、ちょっと道混んでるみたいで、迂回路探します。大丈夫ですか?」 「……」返事がない。 (陣痛中かな?) (またかと気に留めず走り出す) その時、苦しそうな声で後ろから声がした。 「…ねえ?ごめっんなさ…いっつ!急に…陣痛…がっ、強く…う゛う゛っなってきちゃったみたい…」 「え゛え゛~!」 「い…急いで…」 「分かりましたぁ!」 (私は気が動転してきたが冷静に細い路地を進む) 焦っていたのか普段よりスピードを出してしまったと思う。 「わ~待ってよ~」 見通しの悪い十字路で子供が飛び出してきた! キキィッ! 急ブレーキを掛けてしまった。人間の慣性で二人共前に押し付けられ、後ろへ放される。 投稿日 : 2007/09/27(Thu) 19:56 投稿者 : メープル 「う゛っ…はぁ…痛たたた…」先に言葉を発したのは客の妊婦だった。 前を見てみると子供はおらず、どうやら走り去ったようだ。 「あ破水しちゃった…」客の妊婦は自分のそこからチョロチョロと水が流れているのを確認した。 「ねぇ、運転手さん大丈夫…?」 「はぁはぁはぁ…痛っ」(どうしよう…) 「ど…うしたのっ?どっか怪我でもっ…」 「お腹がっ…ん゛っ痛い…んです…もっ…破水しちゃって…あ゛あ゛っ」 「え゛!?あなたも妊娠してたの…!?」 「すっみません~しゅ、出産費用がっ、う゛っ必要で…初産っ…だから大丈夫だと思っ…はぁぁぁん!今っ、運転っ…します…」 痛む下腹部を押さえながら再び運転を始める。 投稿日 : 2007/10/01(Mon) 20:36 投稿者 : メープル ヨロヨロ動きだした車は舗装されていない砂利道に入る… ガタンガタン! 「はあ゛あ゛っ~」 妊婦二人共叫ぶ。振動が子宮口に直に響き、陣痛を促進させてしまう。 (あ゛あ゛~だめぇ) 「わ…私…もうっ…息みたいぃ~」 リエコはタクシーを止めてしまう。 「私も、も…頭がぁ…」もうここで産むしかないようだ。 客の妊婦は後ろ座席で思いっきり足を広げ、息み始める。 「ふぅぅ~ん…っはぁはぁ」リエコは思いっきり息んむ。 「んっハッハッハッハッ~」客の妊婦は胎児の頭が出掛かっていたので短い呼吸で耐える。 「ん゛ん゛ん゛~ハッハッハッ!いやぁぁぁ~」ズルズル… 「ホギャー!」 先に客の妊婦が出産した。 投稿日 : 2007/10/01(Mon) 20:58 投稿者 : メープル 「はぁはぁ…運転手さん、大丈夫…?」 産まれたばかりの赤ちゃんを抱え、客の妊婦がリエコを覗き込む。 「はっ初めて…っだから…分からないんですぅん゛」 「落ち着いて、赤ちゃんは?降りてきてる感じがする?いきみたい?」 「さっき…より…はぁはぁ、腰にグッって…もう…息み…ふぅ…たい」 「腰?じゃあいいわ、息んでみて…」 「ふぅぅぅ~!!」 リエコが息みだすと客は救急車を呼ぶ。 「救急車をお願い!場所は…本当ですか!?」 出動している救急車が近くにいるらしく、10分程で到着できるらしい。 「運転手さん、もう少しよ!」 「はぁ…はい。ん゛~」 投稿日 : 2007/10/01(Mon) 20:59 投稿者 : メープル ピーポーピーポー! 救急車が到着し、リエコを担架に乗せる事になった。 「ふぅふぅふぅ」 リエコは息みを我慢する 「持ち上げますよ」 救急隊員はリエコの体を車から出そうと背中から持ち上げる。 「あっ、来たぁ!出る、出ちゃうよぉ!」 急に陣痛の波が襲い、足に力が入り、息んでしまった。 「あぁっ…何か…挟まった… 「あ!頭です!そっと、そっと…息まないで下さいね。」 「う゛う゛っ…はい…」 リエコは軽くアソコに手を当て、ようやく担架に 乗せられた。そして… 「も…もう出ちゃう~!う゛う゛う゛っ、あ゛あ゛あ゛~」 担架に横になるや否や赤ちゃんを産み落とした。 こうしてリエコと客はそれぞれ病院へ運ばれた。 この1件はニュースとなりリエコは一躍、人気のタクシー運転手となるが、リエコのタクシーに妊婦は乗りたがらなかったそうな…。 (完) |