ハプニングウエディング

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)


あたしは美音(みね)、 16才。東京うまれ。
大和(やまと)っていう大阪の18才の彼と、付き合ってます。
付き合いだしてからにハワイに引っ越し、妊娠!
そしてちょうどいいので、お腹の子と一緒に式をあげることにした!
異国ということもあり、手続きや式の準備などの時間がかかり、いつの間にか9ヶ月になっていた。
お腹のせいもあり少し長引きそうだが、休憩をたくさん入れてもらって、なんとか普通どおりいくことにした。
そして式当日ーーー




「美音さんっ 綺麗ですよ!」
あたしたちはまだ英語に慣れていないので、神父さん以外はみんな日本人だ。
「ありがとうございますっ」
大きなお腹に合うように、お腹だけ大きなウエディングドレスを作ってもらったのだ。
「じゃあ私は化粧品とってきますんで、少し待ってて下さいね」
「はいっ」
そして、あたしは待合室に1人ぼっちになった。
(緊張する~#・・・・あたたっ)
一瞬だけお腹に痛みが走った。




しかし、こんなことはよくあるので、全く気にとめなかった。
そして本番直前、スタンバイしているときに、またお腹がはった。
さっきよりも微妙に長かった・・・かな?
(式中はおとなしくしててね)
お腹を優しくなでながら、心で赤ちゃんに話かける。
そして、式の幕があがった。




お父さんとバージンロードを歩く。
みんなが大きな拍手をくれる。
お父さんはガチガチに緊張していて、右手と右足が一緒に出たりしていた。
そして大和の所に。
・・・・やばい!かっこよすぎ!
とかなんとか思っていると、大和があたしの耳元で
「めちゃ似合ってる。綺麗やで」
と、ささやいた。
神父に誓いの言葉を伝え、指輪の交換・・・
このきに、またお腹がはりだした。
さっきよりも痛いし、長い。
眉間にしわがよる。
「どしたんや?」
指輪をはめながら、大和がまた耳元でささやく。
「なんでもないよ。ちよっとお腹がはったの」
あたしもささやきかえした。
そして、大和がお腹をなでながら、
「大好きやで・・・」
キスをした。




そこからまたプログラムは進んでいく。
次はケーキ入刀!
大きなナイフが渡された。
そしていよいよ切ろうというとき、またお腹が痛くなってきた。
さっきはお客さんが遠かったからよかったけど、今はすぐそこにいる。
机に隠れる方の手でお腹をさすり、もう片方の手でナイフを持つ。
顔は笑顔だったものの、その手は痛みのあまり震えていた。




どうしたんや? やっぱ腹痛いんちゃうんか?」
「うん・・・でも次のプログラムから座れるし、我慢するよ」
「あぁ 分かった。無理すんなよ?」
そして、お花のいっぱい飾ってある、大きな机の前に座った。
それからも、お腹が痛くなるのは、何度も続いた。
そのたびに、大和に手を握ってもらって、お腹をさする。
定期的・・・どんどん痛くなる・・・
もしかして、陣・・・痛??!




そう思ったとたん、不安が込み上げてくる。
そこで、1時休憩になった。
急いで大和と控え室に戻り、報告。
「やまとぉっ これ・・・陣痛かもっ」
「えっ!?まじで?でもまだ予定日って1ヶ月も先だろ?」
「でもお腹、こんなにおっきいし・・・」
「・・・分かった。俺が話つけてきたるわ」
そう言ってすぐそこにいた司会者の人に、何か話かけだした。
なんて言ってるのかは分からなかったけど、最後に司会者の
「かしこまりました」
っていうのだけが聞こえた。
しばらくして、アナウンスがなった。
「えーお集まりの皆様へ連絡します。
只今、予定が大幅に遅れております。
よって、式を今日と明日の2回に分けることにいたしました。
ここにいらっしゃる方々で、明日も出席できる方は、我々の方でホテルを用意しますので、そこにお泊まりになってください。
たいへんご迷惑をおかけします」」
大和はすごいお金持ちだったので、ホテルをこの人数分予約する、なんてことはたやすいことだった。
しばらくして、大和が戻ってきた。
「どやっ?これでいいやろ?
ここのスタッフには、産まれそうとかそういうんはなんも言ってないから大丈夫や!とりあいず休みー」
空にはもう月がのぼりはじめていた。




ほとんどの人は、帰らずにホテルに泊まってくれた。
スタッフの人たちも、あたしたちが今夜はここを貸し切ってほしい。と言うと、快く帰ってくれた。
大和は、ずっとついててくれる。と言ってくれたのたが、目がトロントロンだった。
あたしがこんは体だからって準備を全部引き受けて、ここ2、3日まともに寝ていなかったのだ。
あたしは、とんでもない激痛を抑えつつも
「まだ産まれそうにないから、寝ておいて」
と、精一杯の笑顔で言った。
やっと納得してくれて、自室に戻っていった。
ドアが閉まってとたん、あたしはベッド(用意してもらった)に、倒れこんだ。




実は式中にも、洋水がチョロチョロと漏れだしていたのだ。
おかげでせっかくのオーダードレスが・・・
まぁ予備が3着くらいあるんだけど。
とか考えてる場合じゃない!
はやくドレス脱がなきゃ!
そう思い、お腹を抱えた状態でやっとのことで背中のファスナーを外した。
そして、脱ごうとしたのだが、パンッパンにはったお腹のせいでドレスが脱げない!
・・・・このまま産むしかない。




とりあいずアクセサリー類を全部とり、パンツなどをどうにかして脱ぎ、ドレスをできるだけまくりあげて激痛に耐える。
できるだけ声を漏らさないように・・・
「ぁ・・・・・くふぅぅっっ・・・」
ベッドのシーツを破れるほど握りしめる。
握った所はあたしの汗と涙で濡れていた。
それからどれくらいたったのだろう。
股のあたりから、シーツがサーッと薄い赤の混じったような色に変わっていった。
そこはネトっとしている。
破水したの?!




もう夜中だった。
「あ・・・んんッ ん″んんっ ああぅんんっッッ」
とにかくいきんだ。
もう声の事なんか気にならない。
ただただいきむ。
「ふ・・・んんんんんんっっっ あ・・・んん」
どんどん赤ちゃんがおりてくる。
あたしの産道を、これでもかってほど広げながら。
ズズッ ズズッ ズルルッ
頭が半分出てきた。
そのとき、前に大和が呟いていたことをフッと思い出した。
「産まれるときはそばにおりたいなぁ」
あたしはゆっくりと動き出した。




あたしが動くと、産道にいる赤ちゃんも動く。
そのたびに、ものすごい激痛が走った。
「あ・・・かちゃんッ 動かないでぇぇッ あんんんっっ」
どうしても体が勝手にいきんでしまう。
そこであたしは、赤ちゃんの頭に手をあててこれ以上出ないようにした。
そしてやっとのことでドアまでたどり着いた。
ドアを開くと、大きな十字架のある講堂に出る。
あたしと大和が、結婚を誓った場所だ。
この部屋の反対側に大和の部屋がある。
なんとか手で抑えながら進む。
思わず力が入る。
すると、激痛と共に真紅の血が流れてきた。
そのせいで、ちょうど十字架の真ん前で動けなくなってしまった。
あたしは、ありったけの力を振り絞って叫んだ。
「やまとぉッ! ハァっ 出てっ き・・・てぇッ!」
すると、ドアが開いた。 




もちろんのこと、大和はそうとう驚いていた。
「美音ッ!」
「や・・・まとぉッ 今ッ 産むか・・・
ああああーーッ」
赤ちゃんはあたしの産道から、いきなり滑るように出てきた。
男の子だった。
十字架~あたしたちが愛を誓ったところ~の前で。
「やまとぉッ ごめんねっ 赤ちゃん・・・」
あのとき、ずっと居てもらえばよかったのかな・・・
でも大和は、あたしの服などから、すべてを悟ってくれた。
「ううん。全然きにせーへん! 産まれるところはみたしなっ! それに・・・」
あたしが抱いていた赤ちゃんを愛おしげに優しく抱き上げ、
「無事でよかった」
そういって微笑んだ。
涙が出るほど幸せだった。
「この子の名前・・・」
また大和が喋り出す。
「誓(ちか)ってどや?」
そしてまた陽はのぼりはじめた。




式2日目!
赤ちゃんは昨日病院で産まれたってことにして、とりあえずずっとあたしか大和が抱いていた。
さっき産んだばかりだから、まだ体中が痛いんだけど笑顔笑顔!
大和も、誓と一緒に式ができて、ものすごく嬉しそうだった。
赤ちゃんが加わった事を配慮し、式はゆっくりと進んだ。
そして1時間ほどたったとき。
山のようなお祝いの言葉が、司会者によって読まれている時だった。
急にお腹がとんでもなくはりだし、じわじわとアソコが濡れてくる。
それはまるで陣痛のように・・・
・・・・・・・・・・
  !!?!




どうしよう・・・
もう1人居るのかなぁ・・・
そんなことを考えているうちに、また痛み出す。
やっぱり陣痛なんだ・・・!
でもまだ式があがって1時間くらいしかたっていない。
それなのに洋水は漏れてきている。
やばい・・・




「大和っ!まだ居たのッ
どうしよう ぅぅんッ
さっき赤ちゃん出てきてェッ子宮口閉じきってないからッ破水・・・とかもッしちゃったっぽいぃッ はぅっ」
小声で大和と話す。
「ホンマかっ!? どうする?」
「まだッ 我慢できるしッ はぁッ 頑張るぅッ」
「なんかあったらすぐ言いや」
「うん・・・」
 !?!?!!
突然の激痛と一緒に頭が出てきた。
あまりに突然のことで声も出ない。
そのおかげで、大和には気付かれなかった。
今、<頭出てきた>って言ったらまた中断しちゃう!
とにかく我慢あるのみ!
唇が切れるほど歯を噛み締め、叫びを飲みこみ頭を子宮に戻す。
しかしそれにはとんでもない激痛を伴う。
とにかく必死に耐えた。




あたしは、涙や洋水のせいで何度もお色直しをしなければならなかった。
控え室までの道のりか地獄だった。
しかし立つとつらい分、頭は引っ込んだので、できるだけ立っていた。
飲み物をこぼした。
いきなり生理がはじまった。
などと、どれもありえないような理由なのに、嫌な顔ひとつせずに聞いてくれた。
なんて優しいスタッフさんたちなんだろう。
そんなこんなで、夕方になった。
最後のプログラム、ブーケトスだ。
教会の外に出なければ、と立ち上がったとき。
ズズッ
少し赤ちゃんがおりてきた。
引っ込まない。
やばい。
歩けない。
あたしは、痛みがきつくなった。と言って、大和の肩を借りてその場所まで行った。
そして、来てくれた人から後ろを向き、ブーケを構える。握り締める。
あたしは泣いていた。
痛すぎた。
ズズッ ズズッ
また出てくる。
もう・・・・だめぇっ!!
夕日の中、綺麗な花でいっぱいのブーケを投げる。
「ンギャ ンギャッ」
同時に、泣き声が響きわたった。
夕花(ゆうか)・・・
拍手が鳴り響いた。
おしまい




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