国の未来

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)

投稿日 : 2008/09/06 21:57 投稿者 : どざえもん

数十年後の未来である。
かつては産婦人科や助産師が数多くいたが、激務や医療裁判などで産科医の数は激減、
また、若手の産科医の希望者や助産師も激減し、とうとう、ゼロになってしまった。
産まれた子供を取り上げる医師もいないため、国は無謀な政策をとった。
それは、子供を産む女性に対し、産む場所は提供するが、あとは勝手に産んでくれというような政策だ。
勿論、産んだ後のへその緒の処理なども全部自分で行わなければならず、家族や知り合いの手助けは良いことになっている。
自分で産むから勿論出産費用は一切かからない。
ここに、臨月を迎えた理恵という19歳の女の子がいる。理恵は高校卒業後、風俗に近い生活を送っていた。
避妊には細心の注意を払っていたが、ところが、できてしまった。中絶したくても医者がいない。
そのため、産むしか選択肢がなく、とうとう臨月を迎えることになってしまった。
理恵は出産の本を読みあさり、陣痛のことなども頭の中に叩き入れておいた。
そんなある日、とうとう陣痛が起きてしまった。痛みが酷くならないうちに、一人で産む場所まで行き、本格的に痛みが強くなるまでやり過ごしていた。



投稿日 : 2008/09/09 19:55 投稿者 : どざえもん

理恵は痛みが比較的軽いうちに、鋏や赤ちゃんが産まれたときの物を準備していた。
そこへ陣痛のかなり激しくなってきた春香が入ってきた。春香はまだ15歳。義務教育を終えていない身である。
春香は望んで妊娠したわけではない。春香は中学に入って間もなく、両親が交通事故で他界した。
そして、身寄りのない春香は施設に預けられた。
しかし、そこで待っていたのは、職員からの性的虐待だった。男性経験などない春香はあっという間に処女を奪われ、激痛に泣いていたが堅く口止めされた。
そして、その職員は春香を何度も性の対象にし、昨年妊娠、
しかし、妊娠が発覚し、お腹が膨らみ始めると、その職員は春香が誘ってきたと春香を悪者にし、施設に居辛くなった春香は、施設を脱走し、
年齢をごまかし、あちこちでアルバイトしながら、今日の出産に至ったのだ。



投稿日 : 2008/09/09 20:02 投稿者 : どざえもん

春香は自分の人生がイヤだった。
なぜ、自分だけがこのように辛い思いをしなければならないのか納得できなかった。お腹の赤ちゃんが流産してくれることをずっと願っていた。
しかし、残酷なことにお腹の赤ちゃんは育ってしまった。
しかも、今、産まれようとしている。
アルバイト先で突然破水してしまった。具合が悪いからと早退させてもらい、出産場に直行した。
そのため、何も用意していない。何とか電車の中で痛みに耐えながら、ここにたどりついた。
着いた時にはいきみたかった。でも、何とかこらえながら、分娩台まで上がった。丁度そんな時、理恵に会った。



投稿日 : 2008/09/09 20:12 投稿者 : どざえもん

恥ずかしいが、春香は下着を全てとり分娩台に跨ぐ。
そして、少しずつではあるがいきみはじめた。そんな時、理恵が声をかけてきた。
「随分と若いけど、いくつなの?」
春香「15歳です。本当は義務教育が終わってないんだけど、できちゃった。いたたたた、あああああん」
理恵と会話し始めたことで、春香は少し安心した。
春香が理恵に聞く。
「理恵さんはなぜ、赤ちゃんができたの?うううう」
理恵が自分の過去を答える。望まない妊娠は私だけじゃなかったんだ。春香はそう思った。
しかし、それにしても痛い。骨盤が割れそうだ。
赤ちゃんの頭が挟まっていて、一体いつまでこの状態が続くのか不安になる。



投稿日 : 2008/09/09 20:21 投稿者 : どざえもん

しばらく、理恵と会話していたが、春香は段々、答えるのも辛くなっていた。
この辺りで思いっきりいきみたい。激しい陣痛に合わせ、声が自然と大きくなる。
「いたあああああああああああああい、いたあああああああああああい」
少しずつではあるが、赤ちゃんは下りてきていた。
「うううううううううううううううん、ああああああああああああああん」
何十回いきんだんだろう。股間が裂けてもいいから、思いっきり赤ちゃんを産み落としたかった。早くこの陣痛の地獄から抜け出したかった。
そこで、大切なところが裂けるのを覚悟で、次の陣痛で思いっきりいきむ。
「ううううううん、バリッ、ブチィ、ヌルッ」
赤ちゃんの頭だけが出た。
あまりの激痛に思わず「痛い!」と足をばたつかせた。
でも、あと少し。産まれた赤ちゃんが落ちないように、慌てて赤ちゃんを受ける受け皿を股間の下に置く。
そして、また、激しい痛みと戦い続ける。



投稿日 : 2008/09/09 20:33 投稿者 : どざえもん

それから、何度かいきみ続け、力の限りいきんだ。
すると赤ちゃんがズルッと股間から滑り出てきた。股間からは血が流れている。
しかし、赤ちゃんのへその緒を切らなければと思い、分娩台にあった鋏で赤ちゃんのへその緒を切った。
すると血が飛び散る。また、お腹が痛くなり、思わず「ウッ」と声が出る。
春香は何とかフラフラの身体で起き上がり、赤ちゃんをバスタオルでくるみ、鼻や口などを吸った。
そして、赤ちゃんの産声が聞こえる。
春香は貧血でフラフラになりながらも、赤ちゃんをしっかりと抱きとめ、保育器の中に入れた。
そして、春香は何とか動いてる体で、飛び散った血液などを掃除した。赤ちゃんを産んだばかりであり、股間の痛みは治まっていなかった。



投稿日 : 2008/09/09 20:41 投稿者 : どざえもん

春香が何とか自分の出産場を掃除している間、とうとう、理恵の陣痛も激しくなっていた。
しかし、理恵は、春香のように無謀にも無理矢理赤ちゃんを押し出そうとは思わなかった。
確かに理恵も腰の骨が砕けそうな痛みだったが、理恵は前もって読んでおいた本に書いてあったように、
赤ちゃんの出たいと言う意思に沿って産むと決断していた。
このため、多少時間がかかっても我慢しようと思っていた。
ゆっくりと痛みに合わせいきむ。
「ううううん、うううううううん、あああああああああああん、はあああああああん」
どのくらい時間がたったのだろう。いよいよ赤ちゃんの頭が出そうだ。理恵は思いっきりいきむ。
「うーん、プツン、ヌルッ」
赤ちゃんの頭が出た。そして、更に何回かいきむ。すると赤ちゃんがヌルッと滑り出た。
理恵は赤ちゃんを先に泣かし、バスタオルなどでくるんでから、血が飛び散らないように、へその緒を止め、鋏で切った。
さほど痛くはなかった。そして、赤ちゃんにおっぱいをあげた。



投稿日 : 2008/09/09 20:48 投稿者 : どざえもん

春香はフラフラの体で何とか掃除を終えたが、赤ちゃんの面倒を見る余力はなかった。
春香は疲れてベッドに倒れこみ、眠ってしまった。
どのくらい時間がたったのだろう。ふと起き上がり、急いで我に返り、保育器の赤ちゃんを見る。
だいぶ弱ってはいるが、まだ生きている。春香は急いでおっぱいをあげた。
しかし、現実問題として、春香は自分の生活もままならない状態であり、赤ちゃんを育てられる余力など全くなかった。
しかも施設を脱走中の身。そこで春香は産み終えて帰ろうとしていた理恵に相談した。
理恵も困惑していたが、放っておくわけにもいかないので、とりあえず、知り合いの風俗の人に春香を紹介するしかなかった。



投稿日 : 2008/09/09 20:55 投稿者 : どざえもん

こうして、望まない妊娠により、中絶ができない人達の出産率は上昇した。
しかし、それと同時に、風俗などへ流出する人は増え、治安も悪くなった。
また、低所得や出産の低年齢化が進み、
春香のように、低年齢で出産の知識もない女児の出産が増大してしまったため、国は方針転換を迫られることになってしまった。
産科医の育成の急務、このため、産科に関する医学部や助産師の無料での奨学金提供、
ただし、卒業後の産科医の勤務が条件など、国が産科医を復活させるきっかけとなった。


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