FAIRY

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)


ある狩人が森で狩りをしていました。
今日はなにも取れなくて、不満気です。
そんな狩人が歩いていると、ガサガサと草影で物音がしました。
狩人は苛立っていたこともあり、瞬時にそこに発砲しました。
乾いた音が静かな森に響き渡ります。
そのとき、鳥達の羽ばたきと共に「ぁっ」という音が狩人の耳に入ってきました。
(動物の鳴き声か?)
そう思った狩人でしたが、これまでに聞いたこともない声だったのでいつもよりも慎重でした。
そっと草をかき分けると、その声の主が判明しました。
同時に狩人は戦慄しました。
それは、気絶している手のひらほどの大きさの妖精だったのです。
薄い茶色の髪に、深い緑の瞳。
尖った耳に薔薇色の唇。
植物の繊維で作られたと思われる黄緑色の服と靴と帽子を身につけています。
黄色のかかった羽が少し破れていて、細い腕からは真っ赤な血が流れています。
その他に傷はなく、弾はかすっただけのようです。
狩人は少しの間、その妖精を見つめて考えました。
そして少ししてから、思いついたように妖精を掴み、小走りで森を去っていました。
「へへっ
儲かるぞ…」
そんな独り言が森の中に吸い込まれていきます。
その顔は不気味に口を釣り上げていました。




その数日後、街の市場の外れのある屋台が男達で賑わっていました。
その小さな屋台の奥にいるのが、あの狩人です。
そして屋台にくくりつけられているのが、片方の羽が破れ、腕に包帯の巻かれたあの妖精でした。
声が出ないよう口が塞がれていて、静かに涙を流すばかりでした。
その横に置かれた看板には、
「性欲処理用妖精、$50000」
と書かれていました。
屋台の周りの男はそんな妖精をただ眺めて面白がるばかりです。
誰もが欲しいと思っているのですが、値段の高さに手も足も出ません。
そんな中、1人の太った男が軽い足取りで屋台に向かっていました。
それは街一番のお金持ちの男爵でした。
他の男を押しのけて屋台の前まで来ると、大きな鞄をドスンと屋台に置き、笑顔で言いました。
「私が買おう。
これは$50000だ」
それに狩人は大喜びで妖精を屋台から引き剥がし、男爵にうやうやしく渡しました。
「ふふ、ありがとう」
「いえいえ、こちらこありがとうございます
お目にかかれて光栄です」
男爵は軽快に屋台から去っていきました。
その男爵の油ぎった手の中で、やっと自由になった手で口の布を取って荒い息をしていた妖精ーエルフは、
これからどうなってしまうのだろう。と、故郷の森を恋しがっていました。




エルフの意識がはっきりと戻ったのは、その日の夜の事でした。
いつの間にか柔らかい小さなクッションに、裸でくくりつけられていました。
エルフは恥ずかしくて、悲しくて、怖くて。
泣いてしまいました。
ちょうどその時にあの男爵が帰ってきました。
男爵も裸で、エルフは思わずパっと目を隠してしまいました。
「おいおい…泣かなくても大丈夫だって。
別にただ…「気持ちいいコト」するだけだよ」
さっきの気品さはひとかけらもありません。
「おい!」
エルフは乱暴に手をのけられました。
それでもエルフは目をきゅっと瞑っています。
エルフはまだ人間でいう10歳くらいで、なんの知識もありません。
「…まぁいいさ。
やるか」
そんなエルフを男爵はクッションごと持ち上げると、自分のモノの先にエルフのとても、とても小さな腟にこすりつけました。
「あッッ!
いぃ…やぁ…ッ!!
ん…痛ッいぃ…ッ!」
エルフは気持ちよさの欠片も見せません。
エルフにとっては、ただ怖くて痛いだけでした。
しかし男爵はそんなことも気にせず、気持ちよさそうにこすりつけ続けます。
「きた…ぞ…」
おもむろに男爵がつぶやいた瞬間、ブシュッと音がして、エルフの腟から腹部にかけて焼けるような激痛が走りました。
「んぁああッッ!!!」
エルフの腹部が少しのあいだ膨れ、少し血の滲む腟から精液がドロッと出てきました。
「あッ…はぁ…助けて…下さ…いぃ…」
エルフは息も絶え絶えに男爵に訴えます。
しかし男爵は見向きもせず、そのまま鉄のかごの中にエルフをほうり投げました。
ガチャンと南京錠のかかかる音がします。
「食事は朝晩2回!
これからは毎日ヤるからな!」
そう言って男爵は去っていきました。
エルフは絶望感に飲み込まれ、ただただそこにペタンと座りこんでいました。




それから数ヶ月間、エルフは男爵のおもちゃでした。
好きなときに好きにされ、ろくに食事もあたえられません。
出たとしても、果物のカスや鶏の骨などばかり。
おかげでエルフは心も体もボロボロでした。
泣くことも喋ることもせず、されるがまま。
しかしそんなエルフも、とうとう体の変化に気付きました。
腕や足は痩せ細っているのに、お腹のあたりだけ緩やかに膨らんでいるのです。
男爵もうすうす気付いていました。
しかしそれでも男爵はヤり続けました。
そして、もうごまかしようが無い程にまでエルフのお腹が膨らんだ頃に、男爵はエルフを捨てました。
「妊娠した性欲処理道具なんかいらない!」
そう言って、エルフを窓から雨の降る街のはずれに投げ捨てたのです。
朦朧とする意識の中、エルフは友達や家族や森の事を想いながら、静かに目を閉じました。
そのとき、エルフの膨らんだお腹がドクンと波打ちました。




「ぇ… ね…ぇ… ねぇ!」
どれくらいたったのでしょうか。
男の子の声が聞こえてきました。
「だ…れ?」
目を開けようとしたのですがうっすらしか開かず、よく見えませんでした。
「ボクはテッド!
ね、きみ妖精?」
「……うん…」
エルフの目がやっと開きました。
ぱちりとエルフの目が見開かれたとき、その男の子は目を細めてにっこりと笑いました。
澄んだブルーの瞳に、ふわっとした金色の髪。
真っ白な肌に、そばかすが少し。
とても可愛い男の子でした。
しかし、着ている服や履いている靴は汚れていました。
「きみの名前は?」
「…エルフ…
…10才」
もっとスラスラと話したいのですが、言葉が詰まってなかなか喋れません。
それでもテッドは、さも気にしていないかのように話し続けました。
「わぁ!ボクと一緒だね!
傷、痛いでしょ?ボクん家おいでよ!」
テッドはそう言って、できるだけエルフの傷に触れないように優しく持ち上げました。
ちょうど手の平に収まりました。
その手の平は暖かくて、まるで自分の家に居るかのように安心できました。
テッドの家はすぐそこにあり、周りの家より少し離れたーー倉庫のような所でした。
しかしエルフにとっては、あの牢獄と比べたらどこでも全然大丈夫でした。
「えへへ、ここボクん家。
パパとママが前に死んじゃってね、ここに住んでるの。
1人で寂しかったけど、エルフが来てくれたから今は楽しいよ!」
そう言ってテッドはエルフの体の至る所に細く切った包帯を巻きつけました。
そのときにテッドはエルフのお腹に触れたのですが、2人とも何も気付きませんでした。
手当てがひとしきり終わり、テッドはちょっと待ってて、と言って外に出ていってしまいました。
そのとたん急に不安が込み上げてきました。
しかしテッドは、本当にすぐに戻ってきました。
手には真っ赤な林檎が2つ握られていました。
「家の外にりんごの木があるんだ~」
と言って、机の上に座っていたエルフの前にぽんっと置きました。
エルフは小さなベリーや蜜しか食べたことがなかったのではじめはおそるおそるでしたが、
すぐにシャクシャクと頬張りはじめました。
「ね、ね、」
食べおわった頃に、セッドが身を乗り出して聞きました。
「エルフはあそこで寝てたってコトは、お家がなくてひとりぼっちだったってことなの?」
エルフはその質問に、固まってしまいました。
これまでの事が頭に流れ、ポロポロと知らず知らずのうちに涙が溢れ出てきていました。
「あ、ご、ごめんね!
そういうつもりじゃなかったんだ…」
エルフはコクコクと頭を縦にふりました。
テッドは何も悪くないと分かっていたのです。
「あのね…だから…ボクん家…ここ…住む?
なんにもないんだけど…1人よりはいいよね?」
エルフはその言葉に、さっきよりももっと涙が出てきました。
「嫌だった?ゴメンね?
えと、じゃあ…」
エルフは急いで涙を拭き、テッドの口を抑えました。
そして、
「ここに住んでも…いいです…か?」
そう一言。
テッドは少しだけ目を開き、それからすぐに笑顔になって、大きく頷きました。
そのときにまた、エルフお腹がドクンと動きました。




それからエルフは、ずっとテッドと一緒にいました。
テッドの仕事の新聞配達の時にはポケットに。
遊ぶ時にはその暖かい手の中に。
眠る時には隣に。
エルフにとってテッドは、家族のように大切で、友達のように仲の良い、
だけど、何か別の感情も抱いていることにエルフは気付いていませんでした。
テッドとの暮らしはとても楽しくて、半月後には普通に話せるように、1ヶ月後には笑えるようになりました。
怪我もほとんど治りましたが、足だけはなかなか思うように動きませんでした。
そのころにはエルフのお腹は、もう誰が見ても大きい事が分かるほどになっていました。
ある日テッドは問いかけました。
「ねぇエルフ、なんでエルフのおなかはそんなにおっきいの?」
「えっ?!」
エルフは言葉に詰まりました。
暇さえあればエルフの手はお腹にのっていて、愛おしげに撫でているのをたびたびテッドは見かけていました。
エルフ自身も、そこが暖かく愛おしく感じていました。
しかし学校に行っていない、ましてや、妊娠した人を見た事のない2人には何も分かりませんでした。
「…分かんない。
でも病気とかじゃないと思うんだ…なんとなくだけど。
それに時々動くの!そしたらなんか…嬉しくてね…でも大丈夫だよ!」
「そうなんだ。
なんだろうね?」
「うん…」
エルフは大丈夫と言いましたが、不安も少しは感じていました。




それからまた数ヶ月がたちました。
エルフのお腹は前に突き出るように大きく、重くなっていて、羽が役にたたないほどでした。
そしてテッドのポケットの中で新聞配達に着いていっている時です。
「ーッやぁあ!!」
「エルフ!!」
ポケットから顔を出したエルフが、ふとした拍子に外に落ちてしまったのです。
「ぁ…ーーッ」
「エルフ!大丈夫?
怪我は?エルフ!?」
テッドはすっかり動揺してしまっています。
「だいじょ…ーーっ
おなか…痛ーーッ」
テッドがそっとエルフを掬いあげると、少し湿っていました。
それでもテッドは動揺していて、気づきませんでしたが。
「エルフ、エルフ!
家帰るから我慢してて!」
「う…んーッ」
テッドは倒れた自転車も散らばった新聞も置いて、家に走りました。
家につくと、テッドは素早くクッションやタオルを机の上にしき、そこにエルフをそっと降ろしました。
「ゴメンね、エルフ…
ボクがもっとゆっくり歩いてたら…」
「ううん…テッド…悪くないから…んッぅーッ」
「おなかを打ったの?
痛い?
とにかく水持ってくるから!」
「あ…うぅ…」
エルフはおなかに激痛が走っていながらも、アソコにも違和感を覚えました。
男爵がしたあの行為にも似ているような感じです。
エルフは嫌な予感がしてなりませんでした。




「ぅうッッん…
いぃ…いぃー………」
痛みはどんどん酷くなっていきます。
時々治ることもありましたが、エルフにとっては気休めにもならない程度。
落ちた衝撃で、陣痛が進むのが早くなったのです。
そんなことは何も知らないエルフは、ひたすら痛みに耐えました。
そんな痛みも、赤ちゃんが降りてきたので少しずつ変化していきました。
おなかの中が渦を巻き、腟のあたりに火が灯り
、何かが出てきてしまいそうな衝動に襲われました。
「テッ…ドッーー!!!
ぅ…ーーーッッ」
エルフは怖くて、怖くて、怖くて。
何かを出そうとする衝動を必死に抑えました。
テッドの手にしがみつき、なんとかやりすごすのです。
「エルフ…ボク…ボク…」
「うぅ…ーッ
アツいぃ…よぉ…
あンン…ッ
ア…ソコがぁ…ーーーッッ!!」
テッドは何も知らない子供。コドモ。
エルフの着ている短くなったワンピースを少しめくり、唖然としました。
確かに小さいですが、大きい。
ピンクに染まった小さく大きな穴があいていました。
「……」
それでもテッドは女の人の腟を見たことがなかったので、普通はこうなのかも。と、思いはじめました。
すぐに自分のその考えに納得してしまい、結局エルフには何も言いませんでした。




それから半日ほど、エルフは眠ることもできないほどの痛みに苦しみました。
外はもう真っ暗。月明かりだけが明るく輝いています。
ロウソクの炎が揺らめくなか、エルフは何かの切れるような音を聞きました。
次の瞬間、じわじわとエルフの周りに血の混じった液体が広がりました。
すっかりエルフの看病でつかれて、軽くうとうとしていたテッドはぱっと目をさまし、エルフを見ました。
現状を理解するのには、時間がかかりました。
それでも、漏らしてしまったのではないということはテッドにも明らかに分かりました。
「テッ…ドぉ…ぅ…んー…!!!」
エルフは知らず知らずのうちに、本能にまかせていきんでいました。
「エルフ!エルフ!
もう一回見るからね!」
テッドは震えるエルフのスカートをそっとめくりました。
「っわぁあ…」
テッドはソコに釘付けになりました。
エルフのあの穴の中で、黒っぽい「何か」がうごめいていたのです。
「テッーっ………!!!!」
エルフが力をこめるたびに、その何かはミリミリと動きました。
もちろんそれは、紛れもなく男爵とエルフの間に出来た子供でした。
テッドはまた状況が理解できずにいます。
「エルフ!
エルフの、お、おなかの奥の方で、何かが動いてる!」
「ッッーーーーーー…!!!!!」
エルフにはその声は届きません。
ただこの世の終わりのような痛みと戦っていました。
エルフは妖精で、男爵は人間。
妖精と人間の混血なので、普通の妖精の子供よりもずいぶん大きめなのです。
それでもエルフはいきみました。
テッドは目に涙を溜め、そんなエルフを見守りました。




「痛…やぁ…っー……!!!!!
んん…ぁあ″ッ!」
頭が一番大きい所にさしかかりました。
頭が出ていそうとするたびに、ピリピリとエルフの膣も少し裂けました。
真っ赤な血がにじみ出てあきらかに痛そうなんですが、エルフはソコが裂けたことにさえ気がつきませんでした。
「あ、ん……はァンッ…くぅ…」
エルフは頭の中で、森にいる家族や友達のことを考えました。
しかしテッドがエルフの頭を撫でると、たちまちエルフの頭はテッドのことでいっぱいになりました。
「テッ、ド…ぁあ…っーー!!!!!!」
テッドのことを考えて、エルフはこれまでで一番強くいきみました。
すると、ズルっとエルフの腟から赤ちゃんの頭が滑り降りてきました。
テッドはそれを見て、初めてエルフが赤ちゃんを産んでいることに気がついたのです。
「エ、エルフ!赤ちゃんだよ!
エルフは今、赤ちゃんをうんでるんだ!」
「赤…ちゃん?」




「うん!赤ちゃん!!」
テッドはすっかり興奮してしまいました。
「赤ちゃん…が…いたんだ…おなか…
…出たいん、だね…?…私の…赤ちゃ…ーッ」
出産という、絶望的な痛みの中で、エルフは初めて光を見つけました。
「待っ…赤ちゃ…今…出して…あげる…から…
ぅ…ッーーー!!!!」
エルフは再び力強くいきみ続けました。
「赤ちゃ…んん″…ッーーーー!!!!」
ミリミリミリ…
着実にエルフから赤ちゃんは押し出されていきます。
「エルフ!首まで出てきた!」
「手が片方出たよ!」
「んん″…う″ぅンッーーーーーーー!!!!
ぁ、ァンんっ!!」
「うまれた!!!」
「フギャ…ンギャ…」
「はぁ…あ…赤ちゃん…」
テッドから見るととても小さい。しかし、エルフから見るととても大きな赤ちゃんが誕生しました。
薄い茶色の髪に、深い緑の瞳。
薄い綺麗な羽は少し小さめですが、男爵に似ているところは少しもありませんでした。
「エルフ、女の子だよ
かわいいね」
テッドはエルフの胸に抱かれた赤ちゃんに夢中です。
「あ…でも…この紐…どうするの?」
テッドがまだ2人を繋ぐへその緒を指さして言いました。
「え…ほんとだ…ぁ…痛ッ」
そのとき、エルフがまた痛みをうったえました。
「ぅ…んん…?」
ツルンと滑るように出てきたのは、胎盤でした。
もちろん2人には、これがなんなのかさっぱり分かりません。
「何…コレ…?」
テッドは不思議そうにまじまじと見つめます。
「赤ちゃんと繋がってる…
…切っちゃおう」
2人は胎盤を外に捨て、赤ちゃんを綺麗にお湯に入れました。
「ね、エルフ、この子の名前はなんなの?
考えた?」
「ううん、まだ…どうしよ…」
「エテル…ってどう?
ボクたちの名前を混ぜたんだよ」
「いい名前…エテル、私のところに来てくれてありがとう。
私がお母さんだよ
そしてこの人がーお父さん」
END



                    -完-




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