Wバースデー

一部、読みやすさを考慮し、改行を入れさせて頂いた部分がございます。(熊猫)
一部、明らかなミスタイプがございますが、そのままにしてあります。(熊猫)


「ただいま!」
「お邪魔しますー」

あたしの名前はサク、ピカピカの一年生!
今日は新しくできた友達のマユちゃんの家に遊びに来た!

「いらっしゃい、ゆっくりしていってね~」

玄関にあたしたちを迎えるのは、マユちゃんのママ。
髪が長くて、優しそうで、そしてーー

「わぁー マユちゃんのママって、おなか大きいー!」

なんとなんとなんと!
マユちゃんのママのおなかの中に、なんと!
あかちゃんが入っているの!

「ふふん、すごいでしょ? マユはもうすぐお姉ちゃんになっちゃうもん♪」
「はいはい、とりあえずあがってきてね」

じまんしてるマユちゃんのランドセルをうけとって、
笑ってるマユちゃんのママは、すっごくしあわせそうなの。

お姉ちゃん、かぁ……

いいなー かえったらあたしもお母さんに願おうかな……


<10分後・マユの部屋で>


「それでね、あの人が滑ってね、噴水の中に、ドボン!」
「アハハハハ!!」

マユの部屋でたのしいはなしをした途中、

(コン、コン)
「おやつ持ってきたよ~」

マユちゃんのママが入ってきて、ケーキをごちそうしてくれた。
ブルベリーが甘酸っぱくて、とてもおいしかったの。

でも、それより気になるのはーー





「あ、あのぉ……」
「ん? どうしたのサクちゃん?」

だめ、もうがまんできない、言っちゃおう!

「あの……おなかの、あかちゃんが、その……げんき?」
「あらあら、サクちゃんはこの子に興味あるの?」

マユちゃんのママがほほえんであたしのとなりに座って、
おなかをなんかいもなでたあと、あたしの手をとった。

「うん、今はとても元気だそうよ、触ってみる?」
「いいの!?」

あたしはゆっくりと、手のひらを、マユちゃんのママが言ってた、
あかちゃんのいるばしょに、ピタッと、とめた。

(ビクンッ!)
「わわっ!?」
「っ……あらまあ、この子ったら、恥ずかしがり屋さんだから~」

あたし、あかちゃんに、けられ、た……? きらわれ、た……?
でも、なんかさっき、マユちゃんのママの顔が、なんかへん……?


<1時間後・マユの部屋で>


「でね、お母さんへの誕生日プレゼントはね……」

ーーあれから、マユちゃんのママは二度と来ていない。

「サクは何がいいと思う? サク? おーい」
「ん? あ、そうね、あしたマユちゃんのママの誕生日なんだよね」

ムネがざわざわするの……集中できない……
やはり、確かめなくちゃ!

「あたし、ちょっとトイレいってくる!」
「ちょ、ちょっと、サクってば!」

あわてて部屋からでて、マユちゃんのママがいるはずのキッチンへ。

「マユちゃんのママー!」
「っ……サ、サクちゃん……なの?」

そこで見たのは、かべにもたれていて、くるしそうに
おなかをさすっている、マユちゃんのママの姿ーー




「マユちゃんのママ!どうしたの?」
「な、んでも、ない、わ……ごめんね、こんな姿見せちゃって」

ムリしてる。マユちゃんのママ、ゼッタイムリしてる。

「はぁ、はぁ、……ほら、もう平気よ」

だって、あんなにつらそうなかおしているんだもん。

ーーママから聞いたことがあるの。
あたしが生まれたとき、ママがすっごくすっごく痛かったの。
もしかして、マユちゃんのママは……

「予定日、まだなんだから……ソファーで休めば、すぐ治るわ……」
「あっ、あたし手伝う!」

うまくあるけるように、あたしはフラフラしてる
マユちゃんのママをせなかからささえーー

(ドクッン)
「えっ!?」

また、きた……
なに、この、ヘンな、感じ……
あかちゃん、なの? 
……あたし、なにか、感じる……

「っん!……ぅ、ぐっ……!」
「マユちゃんのママ!?」

気がとおくなったあたしを、よびもどした。
マユちゃんのママが、またくるしみだしている。
しかも、おなかが痛そうに……

「あたし、やはり救急車よんでくる!」

たぶん、さっきの感じも、この前マユちゃんのへやで
おなかをさわったときのも……

きっと、この感じはーー




<10分後・リビングで>

「だから、あかちゃんが、うまれそうなんだってヴぁ!」

いまマユちゃんが、マユちゃんのパパと電話してるの。
マユちゃんのパパはおえらい会社のおえらいさんで、
いつもいっぱいいっぱいおかねかせいでいるの。

「もういいよ! パパなんか、大キライ!!!」

ガチャッ!
マユちゃんは、ムカムカになって、電話をきっちゃった。

「ねぇサク……パパ、ママのことキライ? ……あかちゃんのこと、キライ?」

きんちょうのあまりに、うるるんになったマユちゃん。
きんちょうするのは、あたしも一緒なのにーー

「き、きっと、マユちゃんのパパは大丈夫だと信じていたからだよ!」
「……ホントに?」

マユちゃんごめんね、あたし、うそ、ついちゃったかも。
でも、こういわないと、マユちゃん、きっと泣いちゃう……

「本当よ」
「ママ!?」
「マユちゃんのママ!?」

きゅうに、あたしたちのうしろのソファーで横になっている
マユちゃんのママが、あたしたちにはなしかけた。

「パパはね、赤ちゃんがまだまだ生まれないと分かっていたから、
平然としているのよ。だからマユも落ち着いて、ね?」

あかちゃんが、まだまだうまれない……?
そうか、よかった……マユちゃんのママも、そんなに痛くなく
なっちゃったみたいだし、ちょっと、ほっとした。

「でも、この子が産まれそうなのも、たぶん本当の事よ」
「「えっ!?」」

おなかをなでなでして、マユちゃんのママはゆっくりと、
なにも知らないあたしたちに、『しゅっさん』のことをおしえたーー




<20分後、マユちゃんの家の玄関で>


「はい、お着替え。これで全部ね」

かばんにマユちゃんのパジャマとあたしのお母さんへの手紙を入れて、
マユちゃんのママはあたしたちを玄関までおくってくれた。

「ごめんねサクちゃん、晩ごはんご馳走にするつもりなのに」
「そんなのないもん、あかちゃんの方が大事なんだもん!」
「うふふ、サクちゃんはいい子ね~」

マユちゃんのママはあたしをいい子いい子してくれたあと、
今度はマユちゃんの顔に向けてーー

「マユもいい子なんだから、今晩はサクちゃんのお家に泊まっていてね」
「……うん。ママ、あかちゃん、いつ産まれるの?」

あたしも知りたいの。

「そうね……は、っう……マユ、い、今の時間、っは?」
「えっ? えと、4時半、ぐらい……?」

マユちゃんのママ、また『じんつう』が来ていたらしいの。
あう~ なんど見ても、痛そうなの……

「ありがと……間隔、30分ぐらい、ね……」

さっきね、マユちゃんのママが言ったの。
このおなかのイタイイタイはね、きまった時間でくるようになってるの。
マユちゃんのママはね、この『かんかく』が短くなるまでがまんして、
『かんかく』が短くなったら、タクシーで病院にいくんだって。

「この子もマユみたいに素直な子なんだから、明日ぐらい、かな?」
「あした! ママ、あしたはママのお誕生日と同じだよ!」

あ、ホントだ……いろいろあって、ぜんぜん忘れちゃった!
そうか、これはきっと、あかちゃんからの誕生日プレゼントだよ!
いいなー あたしもママになったら、こんなプレゼント欲しいなー


<30分後、公園で>

「マユちゃんのママ、また痛くなっているのかなぁ……」

5時をさしている、公園の大きな時計。
ちょっとしんぱいだな……ううん、きっとうまくいくもん!

「サクー、早くこないとマユかってにサクんち入っちゃうよ!」

公園の向こうの大きな神社が、あたしの家なの。

「うん、今いくー」

ずいぶん前にいったマユちゃんを追いかけて、
いつものように鳥居の下をとおりぬけーー

(ズキュッ)
「!」

また、あのへんな感じが……  ムネが、くるしい、の……
いきが、でき、ない……  マユちゃん、た、すけ、て……




<7:10pm、サクの部屋で>


「……うー」
「サク! おばさんー サク気がついたよ!」

あ、れ……あたし、なんで、寝てたの?

「まったく、そう簡単に霊に取り付かれた巫女あるか」

あっ、お母さん。 あたし、またお母さんに助けてもらったの?

「れいにとりつかれた?」
「サクは霊媒体質なんだから、まぁ、話せば長くなる」

状況をよくわからないマユちゃんをそっちのけて、
お母さんはそでの中からいちまいの紙を取りだした。

「よりにもよってこれとはね……サク、最近お腹の大きい女の人と出会った?」

おなかの大きい? それって、マユちゃんのママのこと?

「そうか、この子の母親か……マユちゃん、だっけ?」
「はい、そんなんだけど……?」

それを聞いていきなり気まずそうな顔になったお母さん。
わかるの、お母さんのこんな表情は、『よくない』ということ。
もしかしてサク、何かわるいことをした……?

「信じてもらえないかもしれないが、よく聞いて」

ひと呼吸して、お母さんはしんけんな顔でマユちゃんを見つめた。

「あなたの母親は、このままだと、明日が来る前に死んでしまうかもしれん」
「へ?」

お母さんが何を言っているのが、あたしたちはわからなかったーー


<20分後、坂道で>

「この坂道をぬければすぐうちだよ!」
「うむ、霊場は乱れているが、どうやらまだ間に合いそうだ」

あたしとマユちゃんの見えない『れいき』が見えるお母さん。
お母さんの話によると、『しゅっさん』がこわいあかちゃんのれいは、
ときどき今回のように、じぶんのママのお腹から逃げだすの。

「ここだよ! ママ! ママ! マユだよ、開けて!!」
「無駄だ、もう外の声は聞こえなくなったはず……少々乱暴だが、御免!」

ドカーンっと、いつもの仕事のようにドアをけり開けるお母さん。
もうお日さまが休んでいたのに、マユちゃんちの玄関に電気がついていない……
ううん、玄関だけではないの。全部、ついていないの……
いやな感じが、家の中に、満ちているの……

「んっあぁああ!! いたい、痛い、いたい、イタイ!!!」
「ママ!?」

家の中から、マユちゃんのママの声が聞こえる!
すごく、痛そうな、ガラスが割れそうな声ーー




<マユの家・両親の寝室の前>


「イタイ、いたい、痛い、いひゃ、ぃ、イ、いヤあぁアーーー」
「どうやら、ここのようだな」

あたまがおかしくなるようなひめいは、とびらの向こうから聞こえてくる……
マユちゃんのママが、きっと、この部屋の中にいるーー

「おばさん、おねがい、ママを、助けて……おねがい……」
「ああ、心配するな。そうだ、これを持つがいい」

お母さんはおふだをにまいとって、いちまいはあたし、もういちまいは
もうぽろぽろと泣きだしているマユちゃんの手に、わたした。

「あたしたちの、なまえ?」
「名前は存在を示すもの、それをしっかり持て。この向こうの
 狂気の中でも、正気を失わないために。……では、ゆくそ」

お母さんがゆっくりとノブをまわし、すーととびらが開いた。

「!」
「ママッ!?」

大きなベットの上に、マユちゃんのママがたおれてる。
それだけじゃないの……あたしにも見えるの、マユちゃんのママの
おなかのまわりに、くろいもやもやが、もこもこしてるの……

「サク、よく見ておくれ、これが逝けなかった者たちの成れの果てだ」

マユちゃんは見えないらしいけど、あたし、ちゃんと見えるの……
くろいもやもやから、人のかおみないなのが、見える……
ひい、ふう、みい……たくさん、たくさん……

『オォォォォ…』
『コウフく…ミライ…』
『イノチ…カラダ…』
『クレ…クレェ…』

この人たちは、みんな死んでたの。 お化けに、なったの。

あかちゃんが逃げちゃったから、マユちゃんのママのおなかの中
の『もうすぐ生まれそうなあかちゃん』は、からっぽになったの。

急にからっぽになったから、この人たちが集まってきたの。

もういちど、うまれるために。

死にタくない

シんじャいや

もウいちドうマれたイーー


あ れ ?

なんで  あたし

こんなこと  かんがえてる


の?




『ガッ!』
「ふぇ…… わ、わわわ!?」

ふと気がついたら、さっきお母さんがくれたおふだが、
ふわわんと、ちかちかしていて、目のまえに浮いていたの。
あたしの『なまえ』が、あたしを、まもってくれた。

そうか、あたし、また『たいしつ』のせいで……

「自分を責めるな。サク、あなたはよくやった」

え? あたし、お母さんにほめられてた?

『オンナ…ナニヲ…』
「いるべき魂を元の場所に戻した、それだけ」

くろいもやもやがおびえている……
マユちゃんのママのおなかからふわっと出てくる、あたたかい光に……

「残念だが、この体は元々この子の物だ、潔く諦めろ」

あ、ホントだ! いつのまにマユちゃんのママがおちついている!
なるほど、くろいもやもやがあたしに気をとられたすきに、お母さんが……

『オォォ…ナゼ…タスケル…』
『アイツ…ニゲタノニ…』
『…ステタ…ノニ…』

なげいているような、くやしそうにしているような、
くろいもやもやが、部屋のかべからまどからちりぢり消えていった……
なんか、かわいそうなの……

「ママ! ママッ! おばさん、ママ、しんじゃったの……?」
「今は気を失っているだけだ。そうだ、サク、お湯の用意を」

お湯……? お母さん、おふろに入りたいの?
でも、マユちゃんちのおふろはあたしんちのとは違うよ?

「魂が器に定着するまで、産婦を動かさない方がいいからな」

えっと、つまり、とすると、……え、えええーー!?

「うむ、ここで産ませるしかない。サク、手伝えるな?」
「は、はい!」




<7:50pm・マユの家の風呂場で>


「使いおわったらじゃぐちをしっかり止めて、っと。」

お母さんにいわれたとおり、おふろにお湯をいっぱいためた。
でも、どうしてこんなにお湯がひつようなのかな……

「ねぇサク、サクはなにがいいと思う?」
「ん?」

ママが無事になって笑顔がもどったマユちゃんが、
ワクワクしてあたしに話しかけてくれた。

「だからさ、あかちゃんの『なまえ』だよ!」
「お誕生日プレゼント?」
「うん! ママと、あかちゃんへの、りょうほう!」

そんなのいきなり聞かれても……ん~何にしようかなーー

「ーーンンンッ!!!」
「……じゃダメだ! ……でしょう!」

上から、マユちゃんのママのこえが聞こえる!
お母さんのこえも、ちょっと怒ってるように聞こえるの……

プレゼントはあとにしよう、はやくお湯をとどけないと。

「「よいしょ、よいしょっ」」

大きなたらいに、ポカポカのお湯いっぱい入れた。
あとは、部屋まで、はこべ……お、重い、なの……


<マユの家・両親の寝室>

「お母、さん……お湯、もってきた、の!」
「大変だったみたいだな。お前達は少しそこら辺で休んでいいぞ」
「は、ひゃい……」

マユちゃんもあたしも、もうへろへろきゅーなの……
そういえば、晩ご飯まだだっけ。 おなかペコペコだよ……

「確かここに来る途中にコンビニがあったな。二人で何か
 食べやすいもの買ってきてくれ。少々長引きそうだ。」




<10:00pm・マユの両親の寝室>


「ごめんね……この子が迷惑かけちゃって……」
「そんな事言うな、一番辛いのは母親である貴女だろ?」

マユちゃんのママは痛くなったり痛くなくなったりしてるけど、
どうしてなのか、あかちゃんはずっと生まれてこないの。

「ありがとう……うっ、また、来た……  ん、んんっ……」
「ママ、がんばって!」

痛くなくなって、すこしみんなとお話をして、また痛くなるーー
『しゅっさん』って、ほんとうにほんとうにたいへんなの。

お母さんも、こんな痛いおもいをして、あたしのお母さんになったのかな……
あたしもお母さんになったら、こんな痛いおもいをしなくてはならないのかな……?

「……はぁ、ううう…… はぁ、はぁ、うぐっんっんんーー」

(ぷちっ)

ふぇ? いま、マユちゃんのママのこえとは違う音が、した?

「やっと来たか」
「ええ、そうね……やっと、ですね……」

その音を聞いて、きゅうに笑いあってたお母さんとマユちゃんのママ。
『やっと来た』って、もしかしてーー

「おばさん、来たって、もしかしてコウノトリのこと!?
 ねぇねぇどこにいるの? まどの外? やねの上?」

言おうとしたのに、マユちゃんも同じことかんがえてたみたい。
でも、コウノトリはさすがに無いとおもうよ、マユちゃん……

「ふむ、詳しく教えていないのか、まあ当然だが」
「お恥ずかしいながら……っう、っーー」

(ぱちっ)   (どぐっどぐっ)

わわっ? 
なにこれ……ベッドが、じわじわとしめっていく……
マユちゃんのママが、おもらし、したの……?

ーーちがう、これはおもらしじゃないの。
だって、おもらしは血のにおいなんかしないもんーー




<11:10pm>


あれからの一時間、マユちゃんのママの『じんつう』のあいまに、
お母さんがあたしとマユちゃんにいろいろおしえてくれたの。

「っ、はぁ……ぐっ、うっ、うぅぅーー」

おなかの大きいママたちのおなかは、でかい水風船みたいになってるとか、
『ようすい』という水がいっぱいあって、あかちゃんは中におよいでいるとかーー

「ーーう、あぁ……あ、ぁ、んっ、ん!」

(ごぶっごぶっ)

それと、あかちゃんが生まれようとすると、水風船がわって、
マユちゃんのママのように、おもらしみたいな水が出てくるとか。

「っあ、く、来る、赤ちゃん、が、あっ、あああーー!!」

(ぐにょろっ)

「! ……サク、今の、見た……?」
「うん、見た……」

いま、マユちゃんのママのおなかが……うねった、よね?

「落ち着け、赤ちゃんが産道に降りて来ただけだ、異常ではない」

えっ!? あれ、あかちゃんがやったの?
あかちゃん、どうなっちゃうの? ちょっと、こわいよぉ……

「おばさん、『さんどう』ってなに?」
「赤ちゃんがお腹から出てくるのだろう? その出口の事だ。
 ほら、貴女も恥ずかしがらないで、もっと足開いて!」

お母さんは、てきぱきと『はすい』でジメジメになっちゃった
マユちゃんのママのスカートをこしのあたりまでまくりあげ、
ビジョビジョになってた足を、カエルみたいに左と右にーー

「わぁぁ……マユ、こんなのはじめてみた……」
「これが、あかちゃんの出てくる『さんどう』……」

マユちゃんのママのおまたは、もっこりとはれていたの。
おしっこするところのちょっと下から、血のにおいがする
ちょっとネバネバな水が、どぶどぶっとあふれてくる!!




「ここまでよく耐えた、もう息んでいいぞ」

マユちゃんのママのおまたを見て、お母さんはもういいっていったの。

「うん……はぁ、ハァ……」

それを聞いて、マユちゃんのママがシーツを力いっぱいつかまって、
なんかいも息をすったら、こんどはトイレをするときのようにーー

「ふ、ふううぅうんんっんーー!!」

(ぐにゅっ)(ズブッ)

もっこりが……うごいてるの……やだ、きもちわるい……

「もう一回!」
「ふあっ、はぁん、はあっんんんんんーー!!!」

(ズブッ ズブブッ)

なに、これ……ボールみたいな、なにかが、出てきて……
マユちゃんのママのおまたから……もしかして、これってーー

「そうだサク、それは赤ちゃんの頭だ」
「これがあかちゃん……」
「マユの、いもうと……」

あたまの中が、まっしろになってた。
『しゅつさん』

『じんつう』

『かんかく』

『ようすい』

『さんどう』

きょうはね、あたし、しらないことたくさん教われたの。

そしていまは、マユちゃんのママのあかちゃんが、
マユちゃんのいもうとが、うまれちゃうのーー




<11:55pm>


あかちゃんの頭ぜんぶ出てきて、かおがはっきりと見えた。
……おまたからかお……『しゅっさん』ってこわいよ……

ダメ、いまはこんなことかんがえちゃだめ。

「多分次のが最後だ! 全力で来るぞ!」
「ママ、がんばって、まけないで!!」

マユちゃんのママを、せいいっぱいおうえんしなきゃ!

「ぅあ、ひぁ、あっ、ああああぁぁぁーー!!!!!」

(にゅるっ) (ポトッ)

「おぎゃー んぎゃー」

あかちゃんが、マユちゃんのママのおまたからでてきたーー

「うまれた!! ママ! あかちゃんが生まれたよ!!!」
「とりあえず一件落着だな。次は……そうだ、ハサミハサミ」

うれしそうにへやの中でとびまわってるマユちゃん。
いつもしんけんなお母さんも、久しぶりに笑ってた。

『……オネエチャン、キョウハゴメンネ』

どうしてなのか、あたしはあかちゃんの声が聞こえたきがするの。

「ううん、いいの」

あの時とりつかれたから、かな? まあいいや。

<ゴーン ゴーン>

かべのはしら時計がなった。
たいへんだった『きのう』は、もうおわったの。
『きょう』は、これから、はじまるの。

「おたんじょうび、おめでとう、マユちゃんのいもうとちゃん」

『アリガトウ、コレカラモヨロシクネ、サクノオネエチャン』

うん、あなたも、マユちゃんとなかよくしていってね。
そうだ、そういえばまだマユちゃんからおしえていなかったよね。

あなたのおなまえは、なんていうの?


「ママ! この子のなまえはね、マユはねーー」



Wバースデー・完



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